「ビル再生100の物語」エリアの変化に対応する。
ビル再生100の物語 第42話
テナワンでは、これまで多くのビルの空室対策や賃貸運営を行ってきました。
それぞれの問題を解決してきたビル再生の事例を「100の物語」としてこれから公開していきます。
街は生き物です。数十年単位で起こる変化に対応しなければ生き残れません。
千代田区にある岩本町駅からほど近い8階建てのオフィスビル。
以前は建設関係の会社が多く入っていたビルでしたが、現オーナーが購入してから、既存テナントが次々に退去。空室に困っていました。
前オーナーの関係で入居していた旧テナント
1991年に新築されたこのビルは新築したのが建設関係のオーナーだったこともあり、建設関連のテナントで満室になっていました。
しかし、数年前に投資用に購入した現オーナーが所有してからは、旧テナントは次々に退去。旧オーナーとの関係から入居していたと思われるテナントが多いことが原因でした。
業務エリアとしてのニーズが低下
近隣は馬喰横山の繊維問屋街など、歴史的に問屋街が形成されていましたが、ユニクロに代表されるSPAが台頭して以来、衰退がつづいて、この数年人通りも少なくなっていました。
近隣のオフィスは空室が目立ち、募集賃料低下の競争が激しく、当ビル以外の築古ビルは投げ売り状態となっています。
オフィスからマンションへ、エリアの変化。
街に変化が起きてきたのは2000年ごろ。不動産ファンドなどが、日本橋界隈に投資用のワンルームマンションを新築しはじめたのです。
オフィス不況でビルを手放すオーナーが出てきたことと、都心でアクセスが良いことから、都心居住のニーズがあったのです。あまりに乱立したことから、ワンルームマンションの新築に行政が規制をかけたほどです。
現在では、ファミリータイプのマンションが多くできた上、以前は見られなかったスーパーマーやファミレスなどの生活利便施設もできてきました。実際、このエリアでは当ビルが新築された1991年当時から2012年までに2,000世帯増と人口が増加しています。
新業態の進出と保育園の入居
業務エリアとしてのニーズは減少したとはいっても、都心のため利便性は高いことと、以前に比べ賃料が下がったこともあり、新たな業態が進出しはじめました。とくに最近、秋葉原を中心にIT関連のベンチャー企業が育っています。
当ビルでは、インターネット配信の動画サイトを製作する会社が入居し、たった1年で約70坪を倍に増床するほど成長しています。
また、2015年に100名の待機児童を見込んでいた千代田区では、各保育園の事業者が血眼になって場所を探していましたが、オフィスビルのオーナーは、事務所ではないことから嫌う傾向にあり、場所探しは難航していました。
2方向避難などの条件を満たした当ビルに申込みがあり、70名収容(約140坪)の認可保育園が入居しました。都の方針で10年以上の入居が条件になっており、オーナーからすると長期安定のテナントとなりました。
こうして退去続出の危機から、時代の変化に対応して再び満室となりました。