文化財データリポジトリの公開

2024-01-25 09:00

1、文化財データリポジトリの概要

(1)システムの概要と背景
日本には、遺跡、建造物や有形文化財など豊かな文化財があります。それらは丁寧に調査研究され、膨大な調査研究報告書が発行されています。インターネットや図書館で報告書を閲覧でき、文化財の発信あるいは、次なる調査研究の基礎資料として貴重なものです。報告書には、多数の画像や図面が掲載されており、近年はボーンデジタルデータが多くなっています。しかし、アナログ媒体での流通が前提となるため、各画像や図面は、再利用性が低い状態でした。PDF形式においても画像などのデジタルコンテンツと本文が癒着しているため、機械可読性が低く非構造化データであることが課題でした(図1)。そこで、デジタルデータはデジタルとして流通できるようデータリポジトリを構築しました。

文化財データリポジトリ(2024年1月25日公開)
※データリポジトリ(Data Repository):研究データを保存・共有するための情報基盤

2、データと機能

(1)データ
下記のデータを登録可能です。調査時の成果を基本単位となるデータセットとして扱い、データセットの下位に画像などの個別データを登録します。各データは、ダウンロード可能で、利用ライセンスに基づき活用できます(図2~4)。

【主な登録可能なデータ】
・画像(jpg)
・図面類
 PDF(ベクター情報が残った状態)
・3Dデータ(文化財データリポジトリへのデータ登録、Sketcfabの埋め込み表示)
・その他ファイル(CSV等)

(2)検索機能
各データセットは、文化財所在地、文化財種別、主な時代、ファイルの種別、フリーワードで検索可能です。

3、期待される効果

(1)アクセス性の向上:検索機能とデータセットのID付与
データセットに調査地についての情報を付加しています。文化財所在地や時代等によって検索でき、多数のデータから必要なデータを探すことができます。また、データセットごとにIDを付与しました。IDを付与することで、今後のコンピュータ処理の際に、様々な展開や応用が可能となります。

(2)再利用性の向上:ダウンロード機能・3次元データを3次元として扱う
従来、報告書の掲載図面については、利用者が必要に応じて再トレースをしていましたが、データをダウンロード可能にすることで、再トレース作業を軽減できます。3次元データについて、従来はすべて2次元図面化していましたが、場合によっては3次元のまま扱った方が理解に容易なケースもあります。3次元データを3次元としてそのまま扱うことで、貴重な調査成果にて情報を欠落させることなく、新たな研究観点で再利用することが可能となります。

(3)業務効率の向上:ライセンス明示によるオープンデータ化
報告書の元データを入手するには、画像利用許諾申請、情報公開請求等によって利用者が機関に照会する必要がありました。発行機関においても照会対応等の事務手続きが発生し、相当な事務量となっています。利用者自らがデータを入手し、各データに明示されたライセンスに基づいた利用をすることによって双方の手間がなくなります。業務効率の向上によって文化財の活用を促進します。

4、今後の展開

(1)データ登録
現時点では管理者のみのデータ登録となっています。今後、全国遺跡報告総覧の発行機関ユーザーでも登録可能にする予定です。

(2)データ連携
全国遺跡報告総覧内の書誌データとの紐づけをすることで、書誌と研究データを簡単に辿れるようにします。また、開発予定のオンラインジャーナルのデータプラットフォームとなります。さらに、他のプラットフォームとのデータ連携に取り組んでいく予定です。

図1 現在の課題:文化財データの流れ (スムーズにデジタルデータが流通していない)
図2 データセットの調査対象地情報
図3 Sketcfab登録の3Dデータは埋め込み表示可能
図4 報告書画像の表示例

お問い合わせ先 奈良文化財研究所企画調整部 高田 Mail soran_nabunken@nich.go.jp

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