5月17日は高血圧の日 10人に1人は高血圧が治る可能性あり! 名医に聞く高血圧治療の最新情報
治る可能性のある高血圧は10人に1人、 高血圧専門医がいる病院への受診がお勧め
体中の時限爆弾、脳梗塞や心筋梗塞リスクが高まる
高血圧治療は、血圧を下げること自体が目的ではなく、動脈硬化を抑え、将来の脳梗塞や心筋梗塞を防ぐためです。高血圧の状態が長く続いても特に不快な自覚症状がない場合、放置したままという人も多いでしょう。しかし、体の中の時限爆弾のように、将来の脳梗塞や心筋梗塞のリスクが徐々に高まっていくので、自分自身のため、家族のためにも大事にならないうちの対応が必要です。
治療開始前にホルモン検査や動脈硬化をチェック
高血圧治療を始める前には、ホルモン検査を受けるとよいでしょう。高血圧の患者さんの10 人に1 人くらいは、原因がホルモン異常によるもので、これは治る可能性があるということです。
近年、ガイドラインでの血圧目標値は厳しくなりましたが、皆が同じように下げた方が良いのではなく、動脈硬化の度合いで個別に治療を行うべきだと考えます。
動脈硬化の検査には、CAVI(心臓足首血管指数)、FMD(血流介在血管拡張反応)、AI(中心血圧)、頸動脈エコーなどがあります。年1 回の頻度で動脈硬化の度合いを測り治療の評価指針とすると、運動、食事などの生活習慣改善努力の成果を知ることができて励みになります。
高血圧専門医がいる病院への受診がお勧め
高血圧は、様々なホルモン異常が重積した結果起きる内分泌の病気としての側面があります。したがって、原因からアプローチして診療を受けるのであれば、内分泌代謝科(内科)専門医のいる「内分泌内科」を受診することをお勧めします。ホルモンの専門医ならではの視点で、血圧が上昇した原因をひも解いてもらえるでしょう。他の選択肢として、「循環器内科」や「腎臓内科」が対応している病院もありますが、中でも日本高血圧学会が認定する高血圧専門医がいる病院への受診がお勧めです。https://www.jpnsh.jp/general_specialties.html
医者・病院選びがあなたや家族の人生を決める
2016年版、2018年版に続き、2021~2023年版『国民のための名医ランキング』では、内科分野を充実させました。その中で、「高血圧」分野にも力を入れました。なぜなら、高血圧は、人生を台無しにするような大きな疾患につながるのに、軽視している患者さんが多いからです。
名医にインタビュー 市原淳弘教授 東京女子医科大学病院 高血圧・内分泌内科
東京女子医科大学病院 高血圧・内分泌内科の市原淳弘教授に、高血圧治療についてインタビューしました。
編集部―高血圧の患者さんに動脈硬化の検査をすると伺いました。
【市原教授】―CAVI(心臓足首血管指数)、FMD(血流介在血管拡張反応)、AI(中心血圧)、頸動脈エコーですね。これを初診の時に検査します。高血圧も糖尿病も高脂血症も、その結果として動脈硬化が起きて、最終的に脳卒中、心筋梗塞を発症します。
ですので、重要視すべき問題は、コレステロール値が高いことや血圧値が高いことではありません。
それらによって将来、脳卒中、心筋梗塞が起きることが最も肝心な問題なのです。
つまり、現在自分の血管がどこまで脳卒中や心筋梗塞になるような危険な状態に近づいているのかということを調査し、そこを出発点としていかに血管の状態を良くしていくかが大切なのです。これ以上動脈硬化が進まないことを目的として、そのための血圧コントロールをどうするかが重要なのです。何のために治療するのかという目標を明確に意識してください。血管を見てまだ何の動脈硬化も起きていない場合には、私は降圧薬を処方せず生活習慣の改善を徹底する方針にしています。
編集部―10人に1人くらいは、治る高血圧かもしれないというのは驚きです。
【市原教授】―二次性の高血圧の患者さんで意外に多いのが、内分泌の病気によって起きるホルモン異常が原因の高血圧です。ですので、治療を始める前にはホルモン検査を行なって頂きたいと思います。大体10人に1人の割合で、検査で異常が見つかります。このような高血圧は、治療によって完治できる可能性があるのです。
血圧を上昇させるホルモンはいろいろありますが、最も頻度が多いのが副腎という臓器から分泌されるアルドステロンというホルモンで、病気の名前は原発性アルドステロン症です。他に、カテコラミン、コルチゾール、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモンの異常によって血圧が上昇する人もいます。
原発性アルドステロン症では、ホルモン異常の原因部位はどこかを突き止めます。例えば右の副腎の外側脚から多く出ているということがわかったら、腹腔鏡手術でその部分を切除します。約1週間の入院で終わります。比較的早期ならば、完全に薬が要らなくなります。
大きな病院でなくクリニックでも、ホルモン検査を行なってくれる病院はあります。
編集部―課題は?
【市原教授】―日本には約4000万人の高血圧の患者さんがいて、約2000万人がどこにも受診せず放置しているといわれています。実際にはこの中から、脳卒中や心筋梗塞の患者さんがたくさん出ています。この2000万人をどうやって救うかというのが今後の課題で、その対策の一つとして「オンライン診療」の推進が検討されています。
確かな指針となる『国民のための名医ランキング2021~2023』
医師選びが、あなたの人生を決めると言っても過言ではありません。治療に注ぐエネルギーのごく一部を医師選びに使うだけで、治療効率は画期的に良くなります。
書籍『国民のための名医ランキング 2021~2023―いざという時の頼れる医師ガイド 全国1045人厳選』
編集:桜の花出版編集部
定価:2,530円
ページ数:589ページ
ISBN-10: 4434275992
ISBN-13: 978-4434275999
発売日:2020年8月16日
サイズ:A5判並製本 21 x 14.8 x 2.5 cm
発行:桜の花出版/発売:星雲社