【名城大学】人間学部の髙橋香苗助教が初の著書「ギャルであり、ママであるー自分らしさと母親らしさをめぐって」を出版
「ギャルママ」への社会のイメージと内面の姿とのギャップを浮き彫りに
本学人間学部の髙橋香苗助教(家族社会学・文化社会学)が、ファッションや子育てへの意識を手がかりに「ギャルママ」たちの自分らしさと母親らしさの両立と葛藤の様子などを描き出した著書「ギャルであり、ママである――自分らしさと母親らしさをめぐって」を出版しました。「ギャルママ」への社会のイメージと彼女たちの内面の姿とのギャップを浮き彫りにした著書を通して、髙橋助教は「私たちが外見のイメージにいかに縛られているかが分かってもらえれば」と話しています。
2000年代から派手なファッションやメイクで注目を集め、メディアにも登場するようになった「ギャルママ」に髙橋助教が関心を抱いたのは大学院生の時。人間関係に関する研究を進めていた際、一般に子育て期の母親は母親同士のネットワークをつくることで互いに助け合っているといわれていた一方で、「ギャルママ」たちはそうした母親同士のネットワークに入るのではなく、「ギャルママ」同士で独自のネットワークを形成していることを知ったのがきっかけでした。なぜ異なるネットワークをつくるのか、母親たちと「ギャルママ」たちを分断しているものを探ろうと研究に着手しました。
ギャルママ向けファッション誌と他の母親向け雑誌3誌を比較して分析、データ化
まず、2009年~2014年に発売されていたギャルママ向けのファッション誌「I LOVE mama」と、「VERY」や「LEE」「nina’s」などほかの母親向けファッション誌4誌を比較し、卒園式や入学式などのセレモニーでのファッションについてスカートの丈や色遣いなどを分析してデータ化。加えて、家事や育児に関する記事にも着目した分析にも取り組みました。さらに、ギャルママ11人に直接インタビューしてファッションのこだわりをはじめ、親子や夫婦の関係、家事、子育て意識などを聞き取りました。
その結果、ファッションについては「ギャル文化」の根っこにある「とにかく目立ちたい」との意識が強い一方で、「ふさわしくないと思われているのはよく分かっている」との思いがあることも分かりました。また、子育てでは「学歴には固執しないが、子どもがやりたいことをやらせたい」という思いが強いことも判明。これらの研究をもとに髙橋助教は博士論文にまとめて2022年3月に提出しました。
髙橋助教「私たちが外見のイメージにいかに縛られているかが分かってもらえれば」
著書「ギャルであり、ママである――自分らしさと母親らしさをめぐって」は、この博士論文をもとに執筆しました。ファッションや子育てについて、ファッション誌4誌の比較から「ギャルママ」は何が違うのかを解き明かし、その違いがどういう意識の中で生まれたのか、「ギャルママ」たちは他の母親との違いをどう受け止め、どう対応しているかをインタビューから探り、一見自由に生きているように見える彼女たちの本当の姿を描き出しています。
「『ギャルママ』たちは『自分たちに焦点を当ててくれてうれしい』と快くインタビューに応じてくれました」と振り返る髙橋助教。「常識外れで自由に生きているとみられがちですが、すごく考えて生きています」と力を込めます。そして「外見が重視され、合わないものへの嫌悪感が強いのが現代の社会。そんな社会が少しでも変われば」と語り、著書の帯にはメッセージとして担当の編集者とともに考えた「見た目だけで決めつけないでほしい。」との一文を添えました。
髙橋助教はまた、学生の読者に向けて「私が『ギャルママ』を研究のテーマに選んだように、『これって研究になるの?』というテーマでも、やり方さえ考えれば立派なテーマになります。どんどんチャレンジしてほしい」と呼び掛けています。
「ギャルであり、ママである――自分らしさと母親らしさをめぐって」は「晃洋書房」(京都市右京区)から出版。四六判、240ページ、税込2,420円。