言葉には言葉を。SNSで傷ついたあなたの心を救う「日本人の名言」とは?
心に染み込む日本人の言葉
SNSの普及によって、今ほど言葉があふれる時代はない
多くの著名人をも巻き込み、政権に異議をとなえた「#検察庁法改正案に抗議します」など、ひと昔前では考えられないほど、私たちは言葉を武器にすることができるようになりました。
しかしその一方で、SNSなどで自分に向けられた言葉に傷つき、自ら命を絶ってしまう悲しい事件も起きています。
かつてないほど私たちを揺さぶり、追いつめる言葉の洪水。
そんな時代に、私たちの心を保たせてくれるものは、何でしょうか?
明治大学文学部教授の齋藤孝氏は、それは普遍的な価値を持つ「名言」だ、と言います。
今、昨年7月に発売した齋藤孝氏の著者『100年後まで残したい 日本人のすごい名言』で、日本人の言葉の持つ力を認識できる、とSNS世代で話題になっています。
同書のなかから、とくに話題になっている名言を紹介しましょう。
中原中也が別れた恋人に送った「自分自身でおありなさい。」
詩人・中原中也が残したこの言葉を、齋藤孝氏は「SNS時代を見越した中也からのアドバイスと受け止めましょう」と評しています。
「自分自身でおありなさい。」は、中原中也が、かつての恋人である泰子に宛てた手紙の中に記されています。
表現を志す者同士として惹かれ合いながら、別の男性の元へと去ってしまった泰子。その別離から4年後に、中也はこんな手紙を泰子に送りました。
自分自身でおありなさい。弱気のために喋舌(しゃべ)つたり動いたりすることを断じてやめなさい。断じてやめようと願ひなさい。そしてそれをほんの一時間でもつづけて御覧なさい。すればそのうちきつと何か自分のアプリオリといふか何かが働きだして、歌ふことが出来ます。 『中原中也全集 第五巻 日記・書簡』角川書店
齋藤孝氏は、同書の中でこの言葉を「自分の表現をしたいと思っている泰子に、自分を見失わず、周囲に流されることなく、自分自身でいることこそが表現のコツなのだと伝えている」と読み解きます。
「フェイスブックなどSNSで自分を発信するとき、『いいね!』やフォロワーの数を増やしたくてあれこれ写真を撮って載せるなどというのは、これの正反対です」とも。
そして、「『人がいいと言うからやっている』という発想から離れろよということですね」とその真意を汲み、前述の「SNS時代を見越した中也からのアドバイスと受け止めましょう」という結びへとつなげるのです。
この中也からのアドバイスは、言葉によって傷つけられ、自分を保てなくなったときにも使えるのではないでしょうか。
もしあなたがSNSで誰かに攻撃されたり、落ち込むようなことを言われたりしたときは、「自分自身でおありなさい。」とつぶやいてみてください。
それは、あなた自身を取り戻す力を与えてくれるはずです。
憎しみに愛で応える、ドラえもんの「いじわるされるたびに、しんせつにしてやったらどうだろう」
この言葉は、いつものようにジャイアンにいじめられて泣きついてきたのび太くんに、ドラえもんが言った言葉です(『ドラえもん』第11巻[藤子・F・不二雄・著 小学館]所収)。
そこでのび太くんは、歌手になるのが夢だったジャイアンに、レコードを作る秘密道具を貸してあげました。
ジャイアンは大感激し、涙を流しながら、のび太くんを「心の友だ!」と言ったのです。
齋藤孝氏は、こう書いています。
「暴力に対して暴力で返す、仕返しするというのではなく、逆に優しくすると相手は『あれっ』となる。」
「『相手が感じが悪いならこっちだって』というような考えをやめること。そして、相手が楽しくなったり嬉しくなったりする話を、雑談の中ですることです。」
まさにのび太くんは、ジャイアンが楽しくなり、嬉しくなるようなことをしてあげました。
齋藤孝氏は、このドラえもんの言葉をキング牧師やガンジーに共通する考え方だと書き、「憎しみをもって応じれば、さらに大きな憎しみ、争いを生むのが世の常です。『いじわるされるたびに、しんせつにしてやったらどうだろう』は、意地悪にも愛をもって応じるという発想に気づかせてくれます」と結論づけています。
もしあなたがSNSで心ない言葉を投げかけられたときは、憎しみで返すのではなく、愛をもって応じてみてはいかがでしょうか。
きっと、相手の態度が変わるはずです。