【藤井聡】「新・空気の研究」是非ご一読下さい 〜不条理な「空気」を打ち払い、コロナ禍との戦いに専念するために〜
From 藤井 聡(表現者クライテリオン編集長・京都大学教授)
こんにちは、表現者クライテリオン編集長、京都大学の藤井聡です。
今日は、この度出版した表現者クライテリオンの最新刊
「新・空気の研究 ~TV・知事・専門家たちのコロナ脳」
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B08D4SJWR3/
について、「なぜ、この特集を組むことにしたのか」を中心にお話ししたいと思います。
ご案内の通り・・・「おまえ、空気読めよ」というタイプの批判は、日本において濃密に機能する批判です。要するに、空気に従うのが善で、従わないのが悪だ、というコトを前提に、空気を読めない奴(いわゆるKY)をとがめる、というのが、日本において多いわけです。
いわば、善悪判断の基準(クライテリオン)が空気になってる、という次第。
でも、これってよくよく考えるとメチャクチャな話で、その場で空気を支配する奴が善悪を決めてるってことですが、そいつが自分勝手に自己都合で空気を作ってることだって頻繁にあるわけです。
つまり、空気が決める善悪と、ホントの善悪とが全然関係無いことなんてザラにあるわけです。
・・・という視点から、戦前戦中戦後の日本を縦横に分析・批評したのが、山本七平氏の「空気の研究」という書籍。
戦後の日本の言論界・論壇に大きな影響を与えた一冊で、様々な日本の現象を分析する際に山本七平氏が言う「空気」が活用されてきました。
表現者クライテリオンでは、これまで8月号や別冊で「コロナ禍」の問題を様々に論じてきました。その毒性や医療現場の実態を踏まえつつ、思想的、実践的に様々に論じて参ったわけですが、今回はこの問題をさらに「包括的」「本質的」に捉えることを企図して、今日本を覆っている「空気」の問題を取り扱うことにしました。
私の友人達が口をそろえて言うのが、
「はっきりいって、コロナなんか別に何にも怖くないけど、もし罹ったら、内の会社が世間からえらいバッシングされて、会社にもの凄い迷惑かけてしまうから、それ考えたら、コロナに罹ったってことになれへんよなぁ」
という話。
つまり、私の周りの組織人達が一様に怯えているのは、「新型コロナウイルス」というよりむしろ、「コロナに罹ることは悪いことだ」という「空気」なのです。
中にはもちろん、同居している高齢者に移したくないとコロナに怯えている方もおられますが、高齢者と同居していない方も多数いるわけで、そういう方々が怯えているのはやはり、「ウイルス」なのではなく「空気」なのです。
何とも理不尽な話です。
万一、そういう空気のおかげで感染拡大が抑止されているならまだ納得も出来る部分もありますが、むしろ感染を助長している傾向があります。
何といっても、空気にだけ怯えている人々は、「コロナに罹る」ことに怯えているのではなく、「コロナに罹ったコトがバレること」を怯えているのです。
だから、彼等は大なる可能性で、「自分はコロナかも・・・」と思った時、何としてでもPCR検査を受けようとはしなくなるのです。
もしPCR検査を受けて陽性にでもなってしまったら、会社に甚大な被害が及ぶわけです。だから、仮に感染しててもPCR検査さえ受けなければそれでいいだろう、と思ってしまうわけです。折りしもほとんどの若年者は罹っても、単なる風邪症状で済んでしまうことが圧倒的多数なわけですから、PCR検査さえ受けなければ、やり過ごせるわけです。
・・・そうなると、保健所はますますコロナ感染者を拿捕することが難しくなり、保健所の知らない間に、感染が拡大していくリスクを高めてしまうのです。
だから、特に合理性も無く、「とにかくコロナに感染することは悪だ!」という空気が濃密で有れば、その空気のせいでかえって感染を拡大させてしまうのです。
いわば、「自粛警察」は諸刃の剣であって、表面的には自粛を強要する傾向はあるのでしょうが、逆に水面下での感染拡大を誘発してしまうわけです。
しかも、「自粛」それ自身が実は、感染抑止の視点から必ずしも必要でなかった可能性も十分に考えられています。
(例えば最新データだと・・・
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/2793419930758932)
あるいはむしろ、家庭内感染を拡大する可能性すらあるとも指摘されています。
https://www.acpjournals.org/doi/full/10.7326/M20-2671?fbclid=IwAR3-FVnTtCZPKRGwNNqyxASQOOugvNK4GoI2G-P4r34300de1ILMVIcQpRw&
したがって、いま日本を覆っている、
「コロナを抑え込むためには、自粛しろ」
「自粛しない奴は感染を拡げる悪い奴だ」
「コロナに罹った奴は、自粛がぬるかった悪い奴だ」
という空気が、過剰な自粛を誘発し、経済を破壊し、様々な社会活動を抑圧し、子供達の教育環境を破壊し続けている疑義が濃密にあるわけですが(そうした社会的教育的破壊は、財政政策で完全補償は極めて困難です)、それのみならず、感染抑止にさして有効でない可能性があるばかりか、かえって、感染を拡大している可能性もある―――という次第です。
何とも理不尽な話ですが―――そういう理不尽を産み出すのが、「空気の本質」です。
繰り返しますが、空気は善悪の基準を人々に強要するのですが、その善悪の基準は確かな根拠があるわけではないからです。
ですから空気の暴走は容易に社会を根底から破壊し尽くす恐ろしい力を持っているのです。
実際、山本七平がかの「空気の研究」を出版したのは、「日本が自滅するのは、空気が暴走した時だ」と彼が確信していたが故なのです。
まさにこのままでは、科学的検証の全てを軽視、ないしは無視する「コロナ自粛=善」という独善的な「空気」によって、日本は根底から破壊されてしまうことになります。
・・・というようなコトは、実は既に多くの国民も気づき始めていると思います。
ですが、その空気は「実際の感染拡大期」は、恐ろしく強力なモンスターに成長してしまいますから、なかなかその空気に「水を差す」ことが難しくなります。
一方で、今、いわゆる「第二波」は徐々に収束しつつあり、その「コロナコワイ空気モンスター」はその力を幾分弱体化させつつあります。
そしてこの秋冬には、再びコロナ感染症の「第三波」が、これまでよりもさらに強力な感染力と毒性でもって我が国に襲いかかってくるかも―ーーしれません。その時、その第三波に乗っかる形で、そのモンスターはさらに凶暴化することは必至です。
ですから、我々は、我々が持つ国家的エネルギーを、可能な限り「空気モンスター」との戦いではなく「コロナ第三波」との戦いに差し向けることが必要なのです。さもなければ、コロナ第三波による被害を、我々はもろに受けてしまい、その被害を激甚化させてしまうことになるでしょう。
そういう最悪の事態を避けるためにも、可能な限り「空気モンスター」の方を、感染症が一時休止しつつあるこのタイミングで、しっかりと撃退しておくことが必要なのです。そしてその上で我々は「空気」でなく、コロナについての科学的実証的な諸知見に基づいたコロナ対策論を、しっかりと考えねばならないのです。
そのために出版したのが、今回の表現者クライテリオンの
です。
是非とも、「コロナとの戦い」にしっかりと打ち克つためにも、「コロナ空気モンスター」を撃退するために、本誌「新・空気の研究」をしっかりをお読みいただきたいと思います。
追申1:
この機会に是非、定期購読をご検討下さい(10%割引きで提供さし上げています)。
https://the-criterion.jp/subscription/
追申2:
「自粛が如何に不要だったか」について、下記にて包括的にとりまとめました。是非、ご一読ください!
『【再検証】第一波・第二波の双方に「8割自粛」は不要だった。以後、過剰自粛をしない/させないように賢く、注意深く振る舞うべし。』
https://foomii.com/00178/2020090515152170523