ジーンクエスト、ポリジェニックスコアを用いて 日本人集団の遺伝的な多因子疾患高リスク群を 精度よく予測できたことを学会で発表

株式会社ジーンクエスト(本社:東京都港区、代表取締役:高橋 祥子)は、日本人集団においてポリジェニックスコア(※1)で多因子疾患の遺伝的な高リスク群を精度よく予測できたことを、第45回日本分子生物学会年会(開催地:千葉、開催期間:11月30日-12月2日)で発表しました。

◆研究の概要
本研究の結果、多数の遺伝子型を用いた遺伝的な疾患リスク(ポリジェニックスコア)を様々な疾患に対して網羅的に計算したところ、多くの多因子疾患で精度よくリスク(疾患の発症リスク)を予測できていることが示されました。特に予測精度の高かった2型糖尿病では、上位10%の高リスク群は中間タイプの2.77のオッズ比(※2)、下位10%の低リスク群は中間タイプの0.19のオッズ比となり、高リスク群、低リスク群を特定できることが示されました。本研究成果は個人遺伝情報を用いた疾患リスク予測の有効性・重要性を示すとともに、その活用によって個々人のリスクに応じた予防行動や個別化医療へつながることが期待されます。また、株式会社ジーンクエストでは、本研究で得られたような遺伝的な疾患リスクを、遺伝子検査サービスを通じて個人のお客様へ提供するだけではなく、企業や研究者等とも有効活用できるように進めてまいります。

◆研究の背景
ここ数十年で様々な疾患や体質と遺伝子の関係を調べる研究が積極的に行われています。そのような研究結果を利用することにより、個人の遺伝子型を調べることで、どのような疾患リスクや体質なのかの傾向を予測することができるようになってきています。一方で、様々な生活習慣や遺伝子が関わる多因子疾患は、少数の遺伝子型を用いただけではリスクの評価が十分でない可能性があります。近年の研究により開発されたポリジェニックスコアでは、数万か所以上の遺伝子型を用いることでより精度よく個々人の遺伝的な疾患リスクを推定することができるようになってきています。しかしながら、遺伝的なバックグラウンドが異なる他人種の結果では正しく予測できないことが知られており、日本人を用いた大規模な研究が必要であるため、日本人のための予測モデルが確立されている疾患は限られています。そこで本研究では、過去の日本人の大規模ゲノム研究成果を基に、がんや糖尿病などの生活習慣病を含む様々な疾患に対して網羅的にポリジェニックスコアを計算して、どの程度リスクを予測できるのかを解析しました。

◆研究結果の詳細
本研究では、過去の大規模ゲノム研究成果を基に35種類の疾患について、3万人以上の日本人集団(※3)を対象に、ポリジェニックスコアを用いて遺伝的な疾患リスクをどの程度評価できているのかを調べました。
その結果、35の疾患のうち29の疾患でp値<0.05(※4)でリスクを予測できていることが示されました。特に予測精度の高かった2型糖尿病では、6,000以上の遺伝子型を用いて上位10%の高リスク群は中間タイプの2.77のオッズ比、下位10%の低リスク群は中間タイプの0.19のオッズ比となり、高リスク群、低リスク群を特定できることが示されました。この高リスク群では、男性では7.3%、女性では2.3%の方が2型糖尿病の既往歴を持っていることが分かり、個人遺伝情報を用いた疾患リスク予測の有効性・重要性が示唆されました。2型糖尿病以外で予測精度の高かった疾患としては、アトピー性皮膚炎、前立腺がん、バセドウ病などがありました。
今回リスクを予測できた疾患の中には既に遺伝的な疾患のなりやすさの予測モデルが報告されている疾患も存在しますが、まだ予測モデルが確立できていない疾患も多く含まれています。今回の研究により、多くの疾患の遺伝的なリスク予測モデルを構築し、高リスク群を特定できることが示唆されました。

2型糖尿病の遺伝的な予測リスクスコアと既往歴を持つ人の割合

◆本研究結果を用いた今後の展望
本研究手法は様々な疾患へも応用可能な方法であり、より多くの疾患の遺伝的なリスクを予測できるようにすることで、リスクが高い疾患をより高精度に予測し自身で認識することが可能となり、適切な予防行動へ繋げ、健康寿命延伸の一助となることが期待されます。また、健康診断や医療機関へ導入することで個々人のリスクに応じた予防アドバイスなどにも活用することが可能となります。
また、遺伝的な高リスク者は特定の薬剤への効果が変わることがあるという研究報告もあります。遺伝的に高リスクな疾患患者の疾患症状や遺伝子動態、薬剤応答などを詳細に調べることで、疾患メカニズムの解明や創薬、個々人に適した治療方法の提案に繋がる可能性があります。
当社では、本研究で得られたような遺伝的な疾患リスクを、遺伝子検査サービスを通じて個人のお客様へ提供するだけではなく、企業や研究者等とも有効活用できるように進めてまいります。今後も、研究によって生み出される成果を活かして、より信頼できる遺伝子解析サービスを提供し、遺伝子事業の発展に貢献できるよう取り組んでまいります。

◆研究表題:様々な多因子疾患に対する遺伝的高リスク群予測モデルの構築 - polygenic risk scoreを用いて-

用語解説

※1 ポリジェニックスコア(polygenic score)とは、発症リスクに複数の遺伝子が関わる疾患や体質において、数十~数万の遺伝子の違いに様々な重みづけを行い総合したスコアのことを言います。特に疾患に対するポリジェニックスコアについてはポリジェニックリスクスコア(polygenic risk score)とも呼ばれています。アルコールに対する強さなど数個程度の遺伝子が関わる疾患や体質ではなく、生活習慣病など多くの遺伝子が関与する疾患や体質においてはポリジェニックスコアを使用した方がより精度よく評価できることが近年の研究により示されて、各疾患に対してのポリジェニックスコアの予測モデルが開発されてきています。

※2 オッズとは、ある事象が起こる確率を分子、その事象が起こらない確率を分母とした値を意味し、オッズ比とは2つのオッズの比を意味します。ここでのオッズ比は、数値が大きいほど相対的なリスクが高いことを示し、例えば遺伝的なリスクの中間タイプでは100人中3人が2型糖尿病の既往歴を持っていたとするとオッズ=3/97、遺伝的な高リスクタイプでは100人中7人が2型糖尿病の既往歴を持っていたとするとオッズ=7/93となり、中間タイプに対する高リスクタイプのオッズ比は7/93÷3/97≒約2.4となります。

※3 本研究は株式会社ジーンクエストが展開している遺伝子解析サービス ジーンクエストALLと株式会社ジーンクエストと株式会社ユーグレナが共同で展開している遺伝子解析サービス ユーグレナ・マイヘルスのデータを活用しています。

※4 ここでのp値とは、統計検定により算出される予測モデルが全く疾患リスクを予測できていないとした場合に偶然同じスコアが算出される確率のことを言います。p値が小さいほど、偶然では起こりえない、つまり正しく疾患リスクを予測できていることを意味しています。具体的には、p値<0.05では結果が全くの偶然であるという可能性は5%未満であることを示しています。

◆企業情報
社名  : 株式会社ジーンクエスト
所在地 : 東京都港区芝五丁目29番11号 G-BASE田町
設立  : 2013年6月20日
資本金 : 110,000千円(資本準備金含む)
代表者 : 代表取締役 高橋 祥子
事業内容: 個人向け遺伝子解析事業
URL   : https://genequest.jp/

◆ジーンクエストリサーチについて
「ジーンクエストリサーチ」は、国内外の企業、研究者等と連携し、主に遺伝子解析キットを通じて蓄積されたゲノムデータを活用し、遺伝子多型と体質、疾患に関する幅広い研究に取り組んでおります。研究活用に関して同意が得られたユーザーのデータを匿名化し、倫理審査委員会により情報の取扱い、提携先における利用目的等の承認を受けた上で、研究活用します。今後も、共同研究パートナー企業、研究者とともに、サービスと研究のシナジーを創出し、新たな価値の創出を目指し実現してまいります。当社では、共同研究の研究者、パートナー企業様を広く募集しております。

ジーンクエストリサーチURL: https://genequest.jp/forbiz/

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