【冬の体調不良「冬バテ」】原因は鼻の奥の炎症にあり?!

2022-12-15 17:00
【冬の体調不良「冬バテ」】原因は鼻の奥の炎症にあり?!

寒くなると生じるさまざまな体調不良「冬バテ」。

具体的には、頭痛、肩こり、倦怠感などが代表的な症状ですが、その原因の一つとして考えられるのが、鼻の奥の上咽頭で起こる慢性的な炎症「慢性上咽頭炎」です。

なぜ、慢性上咽頭炎が「冬バテ」の症状を引き起こすのか。

「寒冷が慢性上咽頭炎を悪化させる」と指摘する医学博士・堀田修医師の『つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい』http://www.asa21.com/book/b352944.html、そのメカニズムを紹介します。から

なぜ、鼻の奥の炎症がさまざまな不調を引き起こすのか

慢性上咽頭炎がどのようにして、体の不調を引き起こすのか、見ていくことにいたしましょう。

諺に「風邪は万病のもと」とあるように、腎臓病、関節炎、膠原病(こうげんびょう)、皮膚疾患など様々な疾患が風邪をきっかけに発症することは古くから知られています。

実はこの「風邪」と「万病」を結ぶ重要な役割を果たしている可能性があるのが、慢性上咽頭炎です。

病的炎症によりリンパ球などの免疫担当細胞が活性化されると、活性化されたリンパ球や単球に加え、これらの細胞が産生した炎症物質(サイトカインなど)が血流に乗って全身を駆け巡り、遠くはなれた腎臓、関節、皮膚などに炎症を引き起こすしくみが存在します。

この場合、上咽頭炎を「病巣炎症(びょうそうえんしょう)」(原病巣)と呼び、病巣炎症によって引き起こされた腎炎、関節炎、皮膚炎などを「二次疾患」と呼びます。

そして、この現象は本来であれば外敵から自己を守るはずの白血球が、免疫システムに狂いが生じることにより、自らの組織を攻撃する「自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)」といわれる病態とみなすことができます。

扁桃炎(扁桃病巣炎症)、虫歯、歯周囲炎(歯性病巣炎症)は代表的な「病巣炎症」として知られていますが、慢性上咽頭炎もこれに加わると私は考えています。

免疫の異常によって引き起こされる二次疾患には「炎症」という共通点があり、ステロイド剤をはじめとする炎症を抑える薬剤が使用されますが、二次疾患のみに着目した対症治療では症状を軽くできても疾患の治癒にはつながらず、しばしば、生涯にわたる対症治療の継続が必要となります。

二次疾患の治癒を目指すには対症療法のみでなく病巣炎症の治療を含めた根本治療が必要であることは、このような病気のメカニズムを理解すると非常にわかりやすいと思います。

なぜ、鼻の奥の炎症がさまざまな不調を引き起こすのか

自律神経障害も引き起こす

また、上咽頭炎は神経内分泌系、なかでも自律神経の調節異常を介して、めまい、嘔気、胃部不快、便通の異常、全身倦怠感、うつなどの不快に感じる様々な症状も引き起こします。

実際、めまい、偏頭痛などの自律神経系の乱れが関与すると考えられる症状を持つ患者さんには、しばしば激しい上咽頭炎が認められ、慢性上咽頭炎の治療であるEAT(上咽頭擦過療法)を行うと症状が軽快します。

そして、自律神経障害に対する上咽頭炎治療の効果は、炎症が関与する二次疾患とは異なり、効く場合には即効性があります。

それではなぜ、慢性上咽頭炎が自律神経障害を引き起こすのでしょうか? 

上咽頭は神経線維が豊富な部位で、迷走神経の末端が分布しているため、上咽頭の慢性炎症は、迷走神経を刺激して自律神経系に少なからぬ影響を与えます。

自律神経の中枢または末梢(咽頭のような知覚神経線維の豊富な粘膜)に強い刺激、または弱くても持続的な刺激が作用すると、病的な自律神経反射をおこして全身の様々な臓器の障害が生じますが、これは「自律神経過剰刺激症候群(レイリー現象)」として古くから知られています。

レイリー現象は、視床下部にも影響を及ぼし、神経内分泌系の中心的役割を果たす視床下部―脳下垂体―副腎(HPA)系の障害につながります。

つまり、慢性上咽頭炎が関与する全身症状の多くはこのレイリー現象の類似病態とみなすことができます。

例えば、熊本大学の研究グループによると、黄砂飛来の翌日は黄砂飛来のない翌日にくらべ心筋梗塞発症が1・46倍上昇するというデータがあります。

黄砂の粒子はPM2・5よりも大きく、直径3〜4μm 程度のものが多くを占め、吸い込まれた黄砂粒子は鼻腔ならびに上咽頭で捕捉され、その結果として上咽頭粘膜を刺激すると考えられます。

すなわち、一つの可能性として黄砂による上咽頭粘膜刺激が「レイリー現象」を誘発して心筋梗塞を発生させたという機序が推察されます。

そして、さらに興味深いのは、この調査によると慢性腎臓病の患者で発症リスクが2・07倍と特に高値であったことがわかりました(糖尿病1・79倍、75歳以上の高齢者1・71倍)。

私は10年以上にわたり後述するIgA腎症をはじめとする多数の慢性腎臓病の患者さんの上咽頭を診察してきましたが、免疫機序が関与するタイプの慢性腎臓病患者さんでは、ご本人にその自覚がないことがほとんどですが、激しい慢性上咽頭炎をお持ちの方が実に多いということを実感しています。

自律神経障害による諸症状を訴える患者さんは、検査データ上に異常がなく、多くの場合、不定愁訴とみなされ、なかには軽いうつ病と診断されて抗うつ薬が投与されることもありますが、慢性上咽頭炎は擦過による診断・治療が容易であり、そのうえ即効性もあるので、まずは疑ってみるとよいでしょう。

以上をまとめると慢性上咽頭炎に関連する症状は、次の三つに大別されます。

①慢性上咽頭炎そのもの、あるいは炎症の放散による症状

②神経内分泌系(特に自律神経系)の乱れを介した症状

③免疫機序を介した二次疾患

慢性上咽頭炎に関連する症状3つ

そして、このようにいくつかのメカニズムを介して異なる病態を引き起こすため、結果としてその症状は驚くほど多彩となります。

慢性上咽頭炎に関連する全身症状が多彩であるということは、別の見方をすると慢性上咽頭炎に対して有効な治療を行えば様々な症状や疾患に効果が見込めるとも言えるわけです。

慢性上咽頭炎が頭痛をつくる

慢性上咽頭炎と、代表的な症状との関連を見てみましょう。

頭痛の中でも最も頻度が高いのが「緊張型頭痛」、二番目が「偏頭痛」。

この二つで頭痛の9割以上を占めるほど、メジャーな病気です。

「偏頭痛」は頭部の血管の拡張が、一方、「緊張型頭痛」首筋から肩にかけての筋肉の収縮が頭痛の原因とされ、その二つは一般的には全く異なった疾患と考えられています。

そのため有効な薬も「偏頭痛」と「緊張型頭痛」では異なります。

風邪をひいた時の頭痛の主な原因は上咽頭炎の炎症の放散による関連痛です。

また、上咽頭炎の放散により首や肩の筋肉が緊張すると首こり、肩こりが生じます。急にひどい肩こりを感じたら実は風邪のひき始めだったという経験をお持ちの方は多いと思います。

そして、首こり、肩こりは緊張型頭痛を引き起こし、これもまた頭痛の原因となるわけです。つまり、EATで上咽頭の炎症が治まれば上咽頭炎の放散による頭痛と首こりに伴う頭痛の両方が改善されることになります。

上咽頭には偏頭痛のトリガーポイント(関連痛を起こす部位)があります。

鼻綿棒でこの部位に触れると患者さんは痛みを感じます。

EATで特に鼻綿棒を用いてしっかり擦過すると、トリガーとなる刺激が軽減し、頭痛が改善します。

現在、EATを行っていることをホームページなどで公表している医療機関は全国で350超。

決して多くはありませんが、気になる方は、電話などで近隣の耳鼻咽喉科に問い合わせてみるとよいでしょう。

著者プロフィール

堀田 修(ほった・おさむ)

著者:堀田修

1957年、愛知県生まれ。1983年、防衛医科大学校卒業。医学博士。
日本病巣疾患研究会理事長。日本腎臓学会評議員。IgA 腎症根治治療ネットワーク代表。
2001年にIgA 腎症の根治治療である扁摘パルス療法を米国医学雑誌『Am J Kidney Disease』に発表。日本のIgA 腎症診療が激変するきっかけとなった。
2011年9月に「木を見て森も見る医療」の拠点として仙台市内に医療法人モクシン堀田修クリニック-HOC-を開設。
現在、堀田修クリニック(宮城)、大久保病院(東京)、成田記念病院(愛知)でIgA 腎症専門外来を行う。著書に『病気が治る鼻うがい健康法』(KADOKAWA)、『道なき道の先を診る』(医薬経済社)など。

■医療法人モクシン堀田修クリニック-HOC- http://hoc.ne.jp/
■日本病巣疾患研究会 http://jfir.jp/
■IgA 腎症根治治療ネットワーク http://www.iga.gr.jp/

書籍情報

表紙

タイトル:つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい
著者:堀田修
ページ数:208ページ 
価格:1,320円(10%税込) 
発行日:2018年2月15日
ISBN:978-4-86667-026-3
書籍紹介ページ:http://www.asa21.com/book/b352944.html

amazon:https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4866670266/asapublcoltd-22/
楽天:https://books.rakuten.co.jp/rb/15299840/?l-id=search-c-item-text-01

目次

「慢性上咽頭炎」関連症状一覧
「慢性上咽頭炎」セルフチェック
第1章 慢性上咽頭炎を治したら、つらい不調がなくなった
第2章 自分でもできる慢性上咽頭炎の治し方
第3章 なぜ、上咽頭をこすると慢性上咽頭炎が治るのか
第4章 慢性上咽頭炎は「万病のもと」

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