企業の確かな成長で社員と顧客の未来を支える ベース株式会社 代表取締役社長・中山克成のインタビュー記事を 「人民日報海外版日本月刊」にて公開
ベース株式会社 代表取締役社長・中山克成氏のインタビュー記事を「人民日報海外版日本月刊」にて公開します。
中国が生んだ「詩聖」杜甫の詩句に、「焉(いずく)んぞ知らん二十載、重ねて君子の堂に上らんとは」がある。わずか二句ではあるが、そこに込められた波瀾に満ちた歳月と移ろいゆく人生を思うとき、しみじみとその素晴らしさが感じられる。4月18日、筆者は再び大手IT企業が集中する東京の秋葉原に足を運んだ。そしてベース株式会社を訪れたとき、詩聖の句を借用した二句がふと頭に浮かんだのである。「焉んぞ知らん一載半、重ねて君子の堂に上らんとは」。
これも縁というものか。それは少し前のことだった。東京で在日華人華僑が中国駐日大使として着任された呉江浩氏のレセプションをおこなっていたとき、ベース株式会社の中山克成社長が筆者とばったり会い、微笑みながら声をかけてきたのである。「ちょうど今日、当社は時価総額1,000億円に到達しました。一年半前、当社が上場したばかりのころインタビューに来てくださいましたよね。久しぶりにもう一度来ていただけませんか?」。
IT企業が時価総額1,000億円?――そう、この数字に間違いはない。IT業界に通じた方なら、それが経済界とビジネス界においていかなる重要性を示しているかすぐにご理解いただけるであろう。業界通でなくとも、創業26年のIT企業が築き上げた輝かしい業績に大きな感動を覚えるに違いない。しかし、筆者の脳裏に浮かんだのは好奇心であった。ー人の華僑によって起ち上げられたIT企業が、新型コロナが猛威を振るっていた一年半のあいだに、なぜ逆風をものともせず飛翔できたのか。風雲急を告げる近年かつてない緊迫した国際情勢のもと、その生存と発展の道はいったいどこにあったのか。
厳しい環境の中での成長
中山克成社長は会社を取り巻く事業環境について語り始めた。「この一年半における経済は新型コロナの感染者増加と減少の波の繰り返しやウクライナ問題、原料高騰等の影響により、事業環境としては厳しい環境でした。そうした中で、IT業界はDX機運の高まり等によって企業のIT投資意欲は増加傾向となり、その結果、案件は活況だったものの、日本では少子高齢化で労働者不足が問題になっており、IT業界のSE不足が深刻化しています」。中山社長はさらに続ける。「SE不足で案件が受注できないという同業他社もたくさんあります。このような人材不足が成長のネックになる恐れがある中で、当社は日本(新卒、中途)、中国(新卒、中途)の2つの採用ルートを持っており、他社の2倍の採用力があることが当社の大きな強みとなっています。当社は日中50:50という考え方の下、社員の半数は中国の優秀な技術者から採用していますが、日本と中国からの2ルートの採用は他社には容易に真似することはできません。当社は厳しい採用市場の中で、昨年は純増100人を目標とした結果、124人の純増となり、社員数は1,000人を達成しました。今年は150人の純増を計画しています」。
中山社長は、逆境をチャンスに変える仕組みは会社のコアコンピタンスにあるという。「日中50:50というのは当社のコアコンピタンスとなるポリシーで、日本人、中国人のどちらも主役という考えの下に成り立っています。これにより、国籍に関係なく誰でも努力して結果を出せば昇進、キャリアアップのチャンスが平等にあり、きちんと評価されるという風土を作っています。また、当社の経営理念『相互尊重、誠心誠意、ベストを尽くす』の下で、お互いがそれぞれ認め合い尊重しあうことも、国籍に関係なく一つのチームとして力を出し合う環境を作っています。そして、やりたい人にやってもらう風土によって、誰にでもやりがいとチャンスがある環境を作っています」。
中国からの採用
中山社長に、コロナ禍で採用計画に大きなダメージを受けたのかと尋ねると、彼は微笑みながら語った。「一昨年までは新型コロナの影響で入国制限があり、中国からの採用に影響が出ていましたが、昨年から入国制限が大幅に緩和されたため、現在は計画通りに採用できています。中国の中途採用は、日本企業への就業経験やオフショア開発経験があり、日本語が話せて日本の商習慣を熟知した人を主に採用しています。このような経験者は中国にたくさんいますので、主要地域ごとにエージェント等を使って募集をしているところです。中国の新卒採用は、設立当初から採用している大学とのパイプが太く、大学OBが当社の幹部社員や役員になっているので、自分のキャリアパスが想像できます。また、社員の約半分の400人以上の中国人がいますので、慣れない日本に来ても同僚がたくさんいるので安心感に繋がります。また、日本採用/中国採用、新卒/中途に関係なく共通して言えることですが、上場して、かつ、東証1部やプライム市場という最上位市場に上場したことにより、優秀な人をたくさん採用できるようになりました。上場企業として公表した情報は、正確な情報であることが一目瞭然なので、当社の成長もその数字を見て納得し会社を信頼し、その結果、優秀な人たちが当社に応募してきてくれるようになりました」。
さらに、中山社長の話は中国人SEの活躍の話題に及んだ。「中国人SEは、もともと大学で高度な技術を習得しているので総じて技術力は高く、また、新技術への好奇心も旺盛なため、新しい技術に対して即座に勉強し習得しています。また、彼らはお客様とのコミュニケーションを図るために日本語の勉強や案件マネジメントに対しても探求心を持ち貪欲に学んでいます。その結果、彼らはチームの中心的な存在となって活躍しており、お客様からはとても高い評価をいただいています」。
中山社長はパートナー企業の調達についても次のように語った。「パートナー企業(以下、「BP(ビジネス・パートナーの略))の調達も、日中50:50の考え方が活きています。当社は日本国内でBP調達を行っていますが、日本人経営のソフトハウスと中国人経営のソフトハウスの2ルートから調達が可能で、これも他社の2倍の調達力があります。BP調達も採用と同じように日中50:50という社員構成だからこそ2ルート調達が可能となっており、これも当社だからこその強みです。昨年のBP調達は2022年当初から比べて約230人増加し、月700人を超えるまでに拡大しています。」
入社後の教育
入社後の社員育成に話題を変えると、中山社長の語り口は熱を帯び始めた。「当社は、先ほどお話した通り毎年多くの人が入社してきますので、社員の育成は非常に大事だと認識しています。そのため、社員教育やエンゲージメントに注力しています。社内ではベースアカデミーを昨年6月に開講し、受講人数は延べ1,000人以上となっており、積極的に受講してもらっています。部長以上には、定期的に社長勉強会、部長勉強会を開催していますし、新技術ということで言えば、最近ChatGPTの社内勉強会を実施しました。また、社外研修ということでいえば、今年から希望者全員に社外のUdemyを受講させ、社員のスキルアップをサポートしています。なお、エンゲージメントについては、部長と社員との定期的な1on1、部門の垣根をなくした社内SNS等で社員とのコミュニケーションの充実を図っています。」
高いパフォーマンスを維持できる理由
会社のリソースを集中して一度や二度優秀な業績を収めることはできても、毎年高いパフォーマンスで成長し続けることは至難の業である。それについて、中山社長は確信をもった口調で語り始めた。「当社が高いパフォーマンスを維持できている原因は、組織の作り方にあります。高い成長率で業績を成長させるためには、組織も同じように規模を拡大させなければなりません。当社の場合、システム部の数を昨年28部門から今年は34部門に増設しました。同時に部長も増やすことになります。やる気があれば国籍、年齢、性別に関係なく、自ら手を挙げてもらった人には、部長補佐や予備軍等と称して部長に必要な教育をOJT含めて実施する等、新しい部長を輩出する仕組みを構築しています。また、高いパフォーマンスを維持することについても日中50:50の考え方が活きています。中国人は新技術への好奇心やスピーディな仕事、または高い成長意欲を持っています。日本人には品質へのこだわりや高い調和力、日本商習慣の熟知等があります。このように日本人と中国人がそれぞれ異なる強みや特徴を出し合うことによってお互いが刺激し切磋琢磨してシナジー効果を生み、その結果、チームとして高いパフォーマンスを出せるのだと思います。その他、他社との違いは社員の意識の持ち方だと思います。部長は年間の部門予算に対して100%達成するのは当たり前と考えており、部長の目線は常に予算の120%、130%のところにあります。部長はそれを達成するために常に考えて行動しています。そのため、当社は部長にほとんどの権限を委譲し、部長が素早く決断し実行に移せる環境を整えています。」
今後の成長
アフターコロナになったものの、経済環境はこの先も不透明な状況が続くことが予想されるが、ベースの成長に不安はないのかと問いかけると、中山社長はなんの迷いもなく次のように語った。「当社はこれからも同じペースで成長できます。当社は、昨年11月に営業利益100億円の達成目標を公表しました。また、それを達成するまで配当性向50%目安も併せて公表しています。営業利益100億円の達成時期は公表していませんが、社内では達成時期を含めて目標を共有しており、これまでの成長率(30%)を継続して早期に達成させていきたいと考えています。但し、営業利益100億円というのは単なる通過点であり、当社はそれ以降もサステナブルに成長していけるように、現在、常務や執行役員が中心となって『NEXTSTAGE』という仕組みを構築中です。『NEXTSTAGE』という仕組みができれば、それ以降はこの仕組みを改善し続けていくことにより、人に依存することなく自律的なサステナブル成長ができると確信しています。そして、『モノづくり』を強みとする日中混成技術者集団をさらに極めていきたいと考えています」。
取材後記
そういえば、前に中山社長のもとを訪れたのは寒さ厳しいある冬の日のことであった。折しも新型コロナが猛威を振るい、世界経済が冷え込んでいた時期である。そして今回はアフターコロナである。グローバル経済は復興の兆しを見せ、IT企業は新たなスタート地点に立ちはじめた。ならば、次に中山社長とお会いするときはどんな時代が幕を開けているのだろうか、筆者の胸にそんな思いがこみ上げた。
中山社長の落ち着いた声がよみがえる。「大きなことは言えません。ただコツコツと己のすべきことをするのみです。一つ希望を言うならば、そう遠くない将来、当社の利益が100億円に達し、配当性向が50%を上回ることを願っています。私の願いが叶えられたそのときは、どうぞもう一度取材に来てください」。