新日本検定協会 会長 阿久根泰一氏のインタビュー記事を 『人民日報海外版日本月刊』にて公開
企業の海外進出と経済貿易交流を支援
『人民日報海外版日本月刊』は、新日本検定協会 会長 阿久根泰一氏のインタビュー記事を公開いたしました。
最近、日本市場で中国の国民的スナック「衛龍辣条(ウェイロン・ラーティアオ)」が深刻な問題に直面した。日本で使用が禁じられている食品添加物TBHQ(ターシャリーブチルヒドロキノン)が含まれていたため、43キログラム以上の「親嘴焼(チンツイシャオ、びり辛スナック)」が緊急回収される事態となった。この問題は経済的損失を招いただけでなく、企業のブランドイメージにも打撃を与え、その後の世論の批判によって海外市場での競争力にも深刻な影響を及ぼした。では、中国企業が日本市場に進出する際に、このような問題を事前に回避する方法はないのだろうか。
この疑問を解消するため、本誌は新日本検定協会(SK)の阿久根泰一会長に特別インタビューを行った。同協会は日本政府から委託を受けた検査・認証機関として、輸入品の検査や行政業務を担うだけでなく、輸出企業に技術サポートを提供している。
日本政府指定の第三者検査機関
―― 新日本検定協会は設立から76年を迎え、日本国民の健康と環境安全の保護、貿易規範と政策実施の支援、国際貿易の発展推進など、多岐にわたる分野で貢献されてきました。そこで、協会設立の背景や国際検査・分析・鑑定分野での主な役割についてご紹介いただけますか。
阿久根 新日本検定協会は1948年2月に設立されました。その背景は、1947年に制定された「独占禁止法」にまで遡ります。当時、日本国内には唯一の検査機関しか存在せず、経済復興の需要を十分に満たすことができませんでした。そこで、当時の日本郵船社長であった浅尾新甫氏の提案のもと、多方面からの協力を得て協会を設立し、取引の安全と信頼を確保しつつ、国際経済の健全な発展を目指しました。
当協会は創設以来70年以上にわたり「社会への価値貢献」を核心理念として掲げ、横浜、川崎、九州、名古屋、神戸の5つの分析センターと全国42カ所に事業所を有しています。また、日本の厚生労働省、海上保安庁、国土交通省、経済産業省の登録検査機関であり、日本税関の指定分析機関でもあります。
具体的には、当協会は「食品安全法」「海洋汚染防止法」「船舶安全法」などに基づき、貿易検査、分析、鑑定といった多分野の業務を積極的に展開しています。加えて、中国大陸には上海華日商品検定有限公司と南京華和検測技術服務有限公司の2社を構えており、それぞれのパートナーであるCCICグループおよび南京海関とは長い協力関係にあります。これらの業務は事故の防止に寄与するだけでなく、国際貿易、特に日中貿易の円滑化にも大きく貢献しています。
製品の円滑なグローバル展開を目指す
―― クロスボーダー貿易や製品輸出において、各国の税関検査や分析方法の違いは、企業にとって最大の難関となることが少なくありません。例えば、最近日本市場で緊急回収された「衛龍辣条」の事例は、企業に大きな経済的損失と信頼の喪失をもたらしました。新日本検定協会は、輸出企業が検査基準の違いに対応し、製品のコンプライアンスを向上させるために、どのような具体的な支援を提供していますか。
阿久根 当協会は、食品分析、危険物検査、国際条約に基づく各種検査を通じて、事故の防止と商取引の円滑化に努めています。例えば、食品安全分野では、農薬や動物用薬剤の残留基準が厳格化する中、南京海関動植物及び食品検測センターと協力し、分析方法の共有化を進め、輸出前検査と中国企業への啓蒙活動を強化しています。これにより、日本に輸入される食品の安全性が確保されるだけでなく、中国企業の経済的利益も保護されています。
また、危険物輸送検査や容器・包装の基準遵守に関してもさまざまな措置を講じています。例えば、寧波海関技術センターと協力して現地で定期的にセミナーを開催し、日本の「食品衛生法」に関する基準を広めることで、中国企業が国際市場の安全要件をより深く理解できるよう支援しています。これにより製品の品質が向上し、不適合による返品やリコールのリスクが低減され、余分なコストや貿易摩擦の回避にもつながっています。
当協会の3つの主要事業では、化学エネルギーが約45%、物流安全が約34%、食品分析が約21%を占めています。食品分野以外にも化学エネルギーや物流安全分野でも中国で多くの協力事業を展開しています。例えば、中国企業が日本向けに液体化学品や関連製品を輸出する際、通常は中国のGB(国家標準)基準で検査されますが、日本や東南アジア、米国市場では異なる基準が使用されています。当協会はまず、輸入前に危険物輸送の容器、包装、ラベルの適合性に関するガイダンスを提供し、次にサンプルを日本に運び、GB、ASTM(米国試験材料協会基準)、JIS規格に準拠した検査を実施します。そして最終的に第三者認証を提供し、製品が目標市場の要求に適合していることを確認します。このようなサービスは、中国企業が輸送制限や基準の違いを克服するのに役立っています。
当協会が提供する第三者認証は、輸入国における中国製品に対する信頼を高めるだけでなく、中国企業がより広範な輸出市場を開拓するうえで大きく貢献しています。
また当協会は、国際標準化機構(ISO)や米国石油協会(API)などの団体とも積極的に連携し、測定方法や分析基準の統一化を推進しています。これらの取り組みにより、クロスボーダー貿易における不確実性が減少し、製品の品質や検査結果の透明性が高まります。これにより、重複検査の時間やコストが削減され、グローバルサプライチェーンの効率化が進むだけでなく、環境保護や資源管理の分野で国際的な合意形成に寄与し、持続可能な発展を後押ししています。
日本国内唯一の中国CNAS認定食品分析機関
―― 中国の関連機関との協力や中国市場支援において、貴協会が取り組んだ具体的な成功事例を教えてください。また、今後、中国での協力分野やサービスをさらに拡大する計画はありますか。
阿久根 当協会は、中国のCCICグループ各社及び南京海関動植物及び食品検測センター、寧波海関技術センターなどの中国海関の技術センターと長年にわたり緊密な協力関係を築いてきました。2009年以来、寧波において器具や容器の検査を行い、製品が日本市場へ円滑に輸出されるよう支援しています。
また、山東省濰坊市は、国家農業開放発展総合試験区に指定されており、日本は濰坊の農産物にとって最大の輸出市場です。当協会は山東匠造検測有限公司と連携し、食品、農産物原材料の輸出前検査プロジェクトを推進しています。これにより、食品の安全と品質を守る体制が整備され、日中両国の市場間で信頼関係が一層強まることが期待されています。現在、検査技術協力提携契約書を締結し、11月から技術指導の提供を開始しています。
当協会は日本市場への進出を目指す中国企業に対し、法的要件の解説や検査プロセスの最適化、さらには農薬残留や包装材料の安全性テストなどのサービスも提供しています。特筆すべきは、当協会がCCIC上海の協力のもと、中国の合格評定国家認可委員会(CNAS)から認証を受けた日本で唯一の食品分析機関であるということです。
信頼の基盤を築きグローバルな協力を促進
―― 近年、中国政府は企業の「海外進出」を支援する政策を数多く打ち出し、その動きはさらに加速しています。このような背景の中で、貴協会と中国のパートナーとの連携は、中国企業が国際市場での競争力を高め、ブランド価値を向上させる大きな助けとなると考えられます。今後、中日間の経済貿易協力や地域経済の一体化に向けて、どのような取り組みを進めていかれますか。
阿久根 当協会としては、中国の優れたパートナーとの連携を一層強化し、サービスを中国全土に拡大する計画です。特に食品分析などの分野において積極的に取り組んでいきます。しかし、この過程でいくつかの課題にも直面しています。検査や分析の分野では専門性を有していますが、中国の関連法規に関しては十分な理解が不足しているのが現状です。そのため、12月9日に京師法律事務所東京協力オフィスを運営するJSL総合事務所の尤婧代表と協力協定を締結し、サービスの一層の向上を図ることとしました。
今後は、日中間のコンサルティングサービスをさらに拡充し、法規の遵守指導や技術支援を含む総合的なサービスを多くの企業に提供することで、日中の経済貿易交流と協力を促進していきます。また、検査方法や分析基準の統一化を進めるため、国際標準化会議や日本工業規格(JIS)委員会などの活動に参加し、地域経済の円滑な発展にも寄与していきます。
新日本検定協会は「国際市場をつなぎ、グローバルな協力を推進する」を使命とし、今後も橋渡し役として専門技術を活用し、国際経済の繁栄に貢献していく所存です。
取材後記
今回の取材を通し、企業が海外進出や製品輸出を行う際に、権威ある第三者認証を取得することで、不慮なトラブルやリスクを効果的に軽減できることを再認識した。グローバル市場での競争が激しさを増す中、企業には自社の実力を継続的に強化するとともに、利便性の高いチャネルや専門的なリソースを十分に活用すべきだと思う。