心の水位が下がっているあなたへ【元サラリーマンの精神科医が教えるメンタルヘルス術】

2022-03-25 17:00
心の水位が下がっているあなたへ【元サラリーマンの精神科医が教えるメンタルヘルス術】 イラスト:フクイサチヨ

「最近何だか元気が出ない……」「気持ちが沈んで、何にも興味が持てない……」といった状態で悩んでいる皆さんへ。

元サラリーマンの精神科医として、自分の経験を活かしながら、最もいい回復をするために知っておきたいことをお話しします。

メンタル不調のメカニズム

メンタル不調には、うつ、抑うつ状態などいろいろな呼び方があります。

精神的・肉体的ストレスで、脳がうまく働かなくなっている状態が「うつ」といわれるもので、セロトニンなど神経伝達物質の枯渇によって、心の水位が下がってしまっているということです。

多くの場合は、心の不調の前に、体が悲鳴を上げているはずです。
忙しい毎日、その悲鳴や訴えに目をつぶって頑張り続け、ある限界値を超えてしまうと心のほうに症状が出てくるのです。

メンタル不調かどうかを判断するチェック項目

僕がクリニックにいらっしゃった患者さんに最初にお聞きしている4項目をご紹介します。

1)なんだかうつうつとしていませんか?
2)大好きなことを楽しめていますか?
3)三大欲求(睡眠、食欲、性欲)が弱くなっていませんか?
4)何ごともおっくうになっていませんか?

これらが2週間以上続いているのなら、メンタル不調の状態といえます。

たまたまその日が雨で、買い物に行くのが面倒だから、一食抜いた……というのは当てはまりません。

メンタル不調を自覚したら、どんなアクションが必要か

メンタル不調を自覚したら、仕事をしている方の場合は、以下の対応を検討してみましょう。

【仕事の量】多すぎるなら減らせるか?
【仕事の質】やりがいを持てるようにできるか?
【人間関係】スムーズにできるか?

本人が工夫する、周囲のサポートを受けることで改善できる見通しがあれば、状況は好転する可能性があります。
それが難しい場合は、ほかの方法を探っていきましょう。

メンタル不調を自覚したら、誰に相談する?

まずは、友人、同僚、家族。
相談のハードルは低いのですが、助言をもらうというよりは、話を聞いてもらえたという安心感ぐらいの期待値でいてください。

次に、上司。業務量や業務時間の調整など、相談せざるを得ない存在です。
ただし、その上司こそがあなたのストレスの原因ということもあるでしょうから、その場合は社内の担当部署に相談にいきましょう。

人事労務、保健センター、コンプライアンス部など、部署の名前はさまざまですが、ともかく、当該窓口に相談するということですね。
通常は、そこから産業医面談が設定されることになるでしょう。

人事労務に相談すると、今後に悪影響が出るのではないかと、本音が伝えにくいということもよく言われますが、自分一人で抱え込むことが最も望ましくない状態ですので、上記のどこかにたどり着いてほしいと思います。

それが難しければ、どうぞクリニックを訪ねてください。

クリニックをうまく活用して

「メンタル関連でクリニックに行っても、精神安定剤を出されるだけらしい」といった誤解が横行していますが、そもそも〈精神安定剤〉という薬は存在しないのです。
気分に働きかける薬の総称として使われているのだろうと思いますが、精神科への理解がなされていない表れと言えるでしょう。

そして、通院するのは、薬の処方を受けるためだけではありません。
診察によって、現状と経過を把握していき、医師に自分を支えてくれる伴走者になってもらうことで、回復への確実な道をたどっていけるのです。

クリニックをうまく活用して イラスト:フクイサチヨ

受診の前に知っておきたい、クリニックでの診察の流れ

初めてクリニックで受診される場合、わからないことが多いと思いますので、どのような流れになるのかご説明します。

1)問診票を書く(15分ぐらい)
2)予診を受ける(約30分)
3)本診を受ける(約30~60分)

クリニックによって、所要時間はまちまちかも知れませんが、僕は初診ならばこれぐらいの時間が必要と考えていますので、患者さんにも予約段階でそのようにお伝えしています。

現在の症状だけではなく、家族関係なども含めて、じっくりとお話をお聞きすることが不可欠なのです。

精神科医は、ほかのどんな診療科のドクターより、コミュニケーション能力が必要とされるというのが僕の持論です。
「口下手だけど手術がうまい外科医」は成立しても、「コミュニケーションができない精神科医」は成立しません。

前よりもいい状態になります

僕は大学卒業後、5年間サラリーマンとして働いていました。

「コミュニケーション能力は抜群だけれど契約が取れない営業マン」というありがたくない称号を与えられ、しんどい日々を過ごしていたのです。心の水位はぐんと下がっていた自覚があります。

前よりもいい状態になります イラスト:フクイサチヨ

そのときに知った産業医の現状などに危機感を覚え、「そんなら、自分がやればいい」と、会社を辞め、医学部編入のため、必死で勉強し、精神科医になりました。

心の水位が低い状態からまた高めていく作業は、その人にとっての成熟であったり、生き方の再定義だったり、より充実した自分を探すことだったりします。

じたばたして、悩んだ分、より良い自分になることができるのです。

書籍情報

表紙

タイトル:元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術
著者:尾林 誉史
ページ数:240ページ 
価格:1,650円(10%税込) 
発行日:2022年3月11日
ISBN:978-4-86667-362-2
http://www.asa21.com/book/b600524.html

amazon:https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4866673621/asapublcoltd-22/
楽天:https://books.rakuten.co.jp/rb/17035961/?l-id=search-c-item-text-01

目次

第1章 心の水位が下がってどうしようかと思ったら
第2章 クリニック・ドクターの選び方
第3章 どうやって治っていくか
第4章 治療・薬などで知っておいたほうがいいこと

著者プロフィール

尾林 誉史(おばやし・たかふみ)

著者:尾林 誉史

精神科医・産業医 VISION PARTNERメンタルクリニック四谷院長
1975年、東京生まれ。東京大学理学部化学科卒業後、株式会社リクルートに入社。リクルート時代、社内外や年次を問わず発生するメンタル問題に多数遭遇、解決に向けて付き添う中で目にした産業医の現状に落胆するも、とあるクリニックの精神科医の働き方に感銘を受ける。2006年、産業医を志し退職。退職後、弘前大学医学部に学士編入。東京都立松沢病院にて臨床初期研修修了後、東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。
現在、note、面白法人カヤック、ジモティーなど20社弱の企業にて産業医およびカウンセリング業務を務めるほか、メディアでも積極的に発信を行っている。

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