平成30年度全国発明表彰「経済産業大臣賞」を受賞

人工股関節の表面処理技術「Aquala(R)」(アクアラ)の発明

 京セラ株式会社(社長:谷本 秀夫)は、東京大学と共同開発した人工股関節の長寿命化が期待される表面処理技術「Aquala」(アクアラ)の発明(特許第4963838号)について、公益社団法人発明協会が主催する「平成30年度全国発明表彰」の「経済産業大臣賞」を受賞しましたのでお知らせいたします。本表彰は、日本の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に、1919年(大正8年)から始まり、独創性に富む優れた発明や、今後大きな功績を挙げることが期待される発明などを表彰しています。
 
 「Aquala」は、変形性股関節症などの疾患や骨折などによって機能を失った関節部分を置き換えるための人工股関節を構成する製品(寛骨臼(かんこつきゅう)ライナー)に用いる表面処理技術のことです。本技術は、人体の細胞や組織との馴染みの良い生体親和性ポリマー※1(MPCポリマー)を使用し、関節軟骨と類似の表面構造にする京セラ独自の日本発のコーティング技術です。
 「Aquala」を用いることによって、これまで人工股関節置換手術の課題とされていた人工股関節のゆるみや周囲の炎症を抑制し、生体内における人工股関節の耐用年数の延伸が期待できます。本技術を採用した人工股関節は、2011年4月28日に厚生労働省より製造販売承認を取得し、これまでに国内で4万5千症例以上の手術に使用されています。

イメージ図1
イメージ図1

 「Aquala(R)」でコーティングした
  部位を青色で示したイメージ図

「Aquala(R)」のこれまでの受賞履歴

 平成23年度 日本人工臓器学会 技術賞 
 平成23年度 独創性を拓く 先端技術大賞 経済産業大臣賞
 平成24年度 日本バイオマテリアル学会賞 技術賞
 平成24年度 日本ファインセラミックス協会 産業振興賞

開発背景

 関節は、運動機能を支える重要な器官であり、疾患や外傷による関節機能障害がおこると日常動作に大きな支障をきたします。人工股関節手術は、関節機能障害がおこった股の関節を人工関節に置き換える手術です。患部の痛みを取り除き、歩行能力を回復させる優れた方法として、現在、国内で年間約13万件が施術されており、高齢化が進むとともに、近年では置換手術の件数は年率約3~4%で増加を続けています。
 しかし、人工股関節の生体内における耐用年数は一般的に約20年といわれており、何らかの不具合により人工股関節の入れ替えの手術が必要となる可能性がありました。耐用年数を制限する主因は、関節面から生じる摩耗粉が引き起こす人工股関節のゆるみなどの合併症であり、大きな課題となっていました。

「Aquala(R)」の発明技術について

 京セラは、2001年より東京大学と共同で、関節面からの摩耗粉の発生を抑制し、人工股関節のゆるみなどの合併症が起きにくい「長寿命型」の人工股関節の開発を開始しました。
 人工股関節の関節面を生体親和性ポリマーでナノ表面処理※2することで、生体関節軟骨表面の構造や機能を模倣するというバイオミメティック(生体模倣)技術※3を創出し、合併症の原因となる「摩耗粉の発生」と「摩耗粉に対する過剰な生体免疫反応」を同時に抑制することに成功しました。歩行運動において、股関節は体重の数倍におよぶ負荷を受けますが、本技術を用いた人工股関節は15年分以上に相当する模擬歩行負荷試験において、摩耗粉の発生が従来の一般製品と比べて約99%低減されることが確認されています。また、継続研究では、生体の70年分以上に相当する長期間の試験後も安定して摩耗耐久性を維持するという結果も得られています※4。

人工股関節置換手術の仕組み

イメージ図2
イメージ図2

      技術。
※4 参考元「Moro T, Takatori Y, Kyomoto M, Ishihara K, Hashimoto M, Ito H,
      Tanaka T, Oshima H, Tanaka S, Kawaguchi H: Long-term hip 
      simulator testing of the artificial hip joint bearing surface grafted with 
      biocompatible phospholipid polymer.
      J Orthop Res32(3): 369-376, 2014」.

「Aquala」は、京セラ株式会社の登録商標です。


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