アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向 2020年7月~9月

世界11ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2020年第3四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
(※1)自社調べ(アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)

※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください。
https://www.atpress.ne.jp/releases/232101/att_232101_1.pdf

English version of the press release is also available. Please see below.
https://www.atpress.ne.jp/releases/232101/att_232101_2.pdf

サマリー

・アジア各国で新型コロナウイルスの影響はまだ残るも、徐々に規制緩和や入国制限解除等の動きなどが見え始め2020年第3四半期は、全てのアジアの国々で求人数が回復
・ベトナムは対前年同期比、前期比共に求人数が増加。日本の海外事業関連求人も前年並みまで回復
・一方で、シンガポールのビザ取得の厳格化、香港の大企業が大規模リストラ予定など回復への懸念は残る

■マレーシア■■

求人数は前四半期比48%の増加。より高年収へのシフトが顕著に

求人数

対前年四半期比 82%
対前四半期比 148%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰

9月2日にマレーシア日本人商工会議所(JACTIM)が発表した20年下期景気動向調査(178社回答)によれば、景況判断DIは57.9pt減と過去最低水準を記録、来期予測も41.6pt減と引き続き鈍い状況です。従業員DIも23.0pt増と初めての二桁台となり、人員の過剰状態が続きます。2018年上期が12.6pt減でしたが、過剰感はそこから一貫して上昇している状況です。6月2日以降二桁台に抑えていた新型コロナウイルスの新規感染者数は9月8日に100人を記録し、10月1日以降は200-600人代で推移。10月9日から一部地域で条件付き活動制限令が出され、工場の操業停止や域内外移動禁止など、経済面への影響は免れない見通しです。

企業の採用動向

前四半期比の求人数は48%、特に日系企業では68%増加しました。3月の移動制限令発令後、採用の保留、もしくは凍結をしていた企業も6月の制限緩和を境に採用活動を徐々に再開していますが、前年同四半期比では18%減の状況です。業界別の求人状況は製造業では前四半期比微増に留まり前年同期比では60%減。一方、ICT業界については昨年同期比で16%増加しており、コロナ禍でもIoTやFA(ファクトリーオートメーション)、デジタルマーケティングなどデジタル化の推進・生産性向上・効率的な市場へのアクセス等、IT人材ニーズが高い。給与別では、RM7,000以上(マネジャー以上の職種) の求人数割合は、前年同期比8.7%増加の49.9%とほぼ半数です。この傾向は2015年以降続いています(2015年は23.4%)。コロナ禍によるコスト削減の必要性、買い手市場へのシフトに伴い、ジュニアからミドル層の求人に関しては、内部昇格やリファーラルで対応する一方、マネージャー以上のコア人材の採用は一部争奪戦となっています。特に市場閉塞感やSCM(サプライチェーンマネジメント)の機能不全から、新たなビジネスや市場の開発・開拓に関わるスタッフの採用ニーズが増加しており、従来の給与相場以上を提示して確保しようとする企業も多い。この結果RM9,000(シニアマネジャー・GMクラス)以上への求人割合が特に増加(10.3%増加)したと考えられます。

求職者の動向

9月に当社が実施した「マレーシア人転職意識調査」(回答者1,538人)では、回答者の24%が活動制限令が敷かれた4月以降に転職を検討し始めています。転職理由としてはこれまでにあまりなかった「現職企業の経営状況の変化」が18%で3番目に多く、求職者の転職意識にも1位はキャリアアップ、2位は報酬水準アップ目的と、コロナ禍の影響が色濃く出ている結果となりました。日本人求職者の転職意識に大きな変化は見られませんが、日本在住の求職者の場合、海外への渡航制限やビザ発給の遅滞もあり、採用が決まっても勤務開始は大幅に遅れている状況です。

■シンガポール■■

長引く新型コロナウイルスと外国人就労ビザ厳格化の影響が出始める

求人数

対前年四半期比 67%
対前四半期比 120%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 イルマス 純

シンガポール国内経済は、段階的な各種規制緩和により少しずつ回復基調にあります。シンガポール資材購買管理協会(SIPMM)が発表した9月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は、業績の拡大・縮小のベンチマークである50を3ヵ月連続で上回り、個別指数の新規受注や新規輸出、生産も向上しました。
7月の国民総選挙の結果、野党の当選者数が過去最大議席数を獲得。与党のアクションとして選挙中に争点となっていたシンガポール人の貧困と収入格差、雇用の確保を解決すべく、外国人に対して2度の就労ビザ発給基準引き締めを実施しました。経済回復と雇用問題は、同国の喫緊の課題として継続して取り組む見通しです。

企業の採用動向

企業の採用活動は緩やかに回復傾向にあるものの、これまで数年に1度のみ実施された就労ビザ取得基準の厳格化が今年は2度実施されたことから、採用方針の変更や人事計画を見直す企業が増加しています。特にシンガポール国外から外国人の登用が難しくなったことから、就労ビザの不要なシンガポール人、PR(Permanent Resident、永住権)保持者、DP(Dependent’s Pass、配偶者ビザ)保持者、LTVP(Long Term Visit Pass、シンガポール人もしくはPR保持者の配偶者ビザ)保持者のニーズが今後さらに高まることが予想されます。

求職者の動向

シンガポール人候補者の登録数は前期とほぼ同等の状態が続き、コロナ禍の企業の採用動向を鑑み慎重に動いている傾向です。シンガポール国内の日本人候補者による新規登録者数は横ばい、国外からはやや減少傾向となりました。主な登録理由は、新型コロナウイルスの影響による整理解雇や事業所の閉鎖、雇用主による就労ビザの更新を停止などの理由です。DP保持者による積極的な転職・就職活動も顕著でした。また、ニーズが高いPR保持者、DP保持者やLTVP保持者の登録も増加傾向にあります。

■タイ■■

コロナ禍の中でも、採用市場は徐々に回復の兆し

求人数

対前年四半期比 82%
対前四半期比 149%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘

経済を犠牲にして新型コロナウイルスを抑え込んだタイ王国ですが、依然として世界で収束しない状況に大きく影響を受けています。観光のインバウンドを含む輸出が経済を支えているタイは、世界経済との連動性が強く、まだコロナ前の状態に戻るには時間がかかる見込みです。大方の専門家は、2022年にコロナ前の水準に戻ると予測しています。一方、政治面では民衆の大規模なデモが頻発するなど王室を巻き込み、混迷の色を強めつつあります。

企業の採用動向

市中感染が抑えられている事から、テレワークを導入した多くの企業は通常の出勤形態業務に戻り、それにより停止していた採用活動が7月から再開し求人数は前期比で149%と大幅に回復しました。その後、企業の採用意欲は最悪期から回復したものの、一部の企業では様子見の状態が続いています。世界各国の経済がコロナと共存しながら動き始めている事により、タイ国内の経済及び採用活動も今後徐々に活発化していくと考えられます。

求職者の動向

経済が不安定な状態であることから、活発に活動を行うタイ人は減少傾向です。通常より転職の意欲は低いものの、求職者側の売り手市場である状況は変わっていません。また、事実上不可能に近かった外国人(例えば日本在住の日本人など)の採用の難易度が、航空便の増加により徐々に緩和されてきています。
ただし、隔離施設使用料、PCR検査、保険にかかる費用が高額なため、採用企業もしくは転職者の負担になっている事実は変わらず、隔離期間の短縮に関する議論がタイ政府内でも行われています(10月上旬時点)。まもなく、日本からタイへの、国をまたぐ転職も活性化してくることが予想されます。

■インドネシア■■

新型コロナウイルス対応に求められる人事労務、
IT関連人材の採用が増え、求人が対前期比で50%増加

求人数

対前年四半期比 45%
対前四半期比 150%
JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵

インドネシアでは7月から新型コロナウイルスの感染が収束に向かい、従業員の50%まで出社が可能となるものの、再度の感染者拡大により9月に規制が強化され一部の業界をのぞき従業員の25%までの出社となるなど、完全収束の見通しが立たない状態が続いた第3四半期となりました。外食はテイクアウト以外不可の状態で、国民の行動にも制限が求められています。消費者物価指数は目標を2~4%とするものの、6月より3ヵ月連続で目標を下回りました。2020年のムルヤニ財省によるGDP成長率予想も9月にマイナス成長に引き下げられました。ただし、10月上旬時点、2021年の成長率予想は4.5~5.5%成長と予想されています。

企業の採用動向

第3四半期になり新型コロナウイルスに対する社会的規制が緩和され、社員の出社が認められるようになるも、感染者が発覚することでオフィスや・工場の閉鎖を強いられ、予定していた事業活動ができない企業が出るなど、各企業では翻弄させられる状況も見受けられました。加えて、さまざまな規制にともない企業はコロナ対策による出費、国内外の需要減など、業績で苦戦を強いられ採用を停止する状態が続きました。駐在員が国外退去のままインドネシアの医療状況の悪化より母国からインドネシアに戻る許可が下りず、採用決定者の不在による採用の延期も多くありました。一方で、コロナ対応で多忙になった人事労務、IT分野に加え、会計や営業ポジションなどの採用が増え、第3四半期の求人は前期比で50%増となりました。

求職者の動向

新型コロナウイルスの影響で小売り、レストラン、ホテル業界の失業者が増加したことにより、求人の問合せや登録が増加しました。転職に慎重になる転職希望者は一定数いるものの、転職への意欲は全体的に高いです。日本からインドネシアでの就業を希望する日本人の候補者は、到着ビザや一次訪問ビザの発給ができず面接目的のインドネシアへの入国ができない状況が続いています。新規のビザ発行の遅れで、転職が決まっても渡航予定に遅れるなど、影響が見られます。

■ベトナム■■

入国緩和の動きが進み、経済の復調も徐々に見られる
景気も回復基調となり、求人は前年同期比・対全四半期比で増加

求人数

対前年四半期比 116%
対前四半期比 132%
JAC Recruitment ベトナム法人ディレクター 桑田 聡

7月下旬、ダナンで再度コロナウイルスの感染が確認されて以降、ハノイとホーチミンの大都市でも感染者が出たことで国内に緊張が走りました。しかし社会的な隔離の再実施は発令されることはなく、ベトナム経済への影響は第2四半期と比べて限定的でした。2020年のベトナムのGDP成長率は2%前後と予想する機関が多く、S&Pは2021年のGDP成長率を11.2%と予想しています。今年の第3四半期から、昨年同様に経済が回復することが予想されています。

企業の採用動向

他国に比べ新型コロナウイルスの影響を大きく受けていないベトナムでは経済の回復に伴い、主に外資系企業からの求人数が大幅に増加したことで、全体の求人数は対前年四半期比、対前期比共に増加しました。しかし、求人が出る業界・業種と出ない業界・業種の差が大きくなっています。求人が堅調なのは製造業・専門商社・IT・物流である一方、縫製業界、ホテル・旅行・飲食を中心とするサービス業の求人は鈍化が続いています。自動車及び電子製品の需要回復にともない、特に専門商社の電子部品関連の求人が増加しました。

求職者の動向

ベトナム人の求職者の動向には、やや慎重さが見えます。例年ほど求人が多くないため、今が転職に絶好の時期だと考えている求職者が少ないことが要因です。また年末が近づくにつれて、例年ではテト賞与(旧正月前後に支給されるボーナス)を意識するため、支給されるまでは転職の意欲が下がります。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響を受けている企業ではテト賞与の支給や年末年始の昇給が見込めない会社もあるため、第4四半期は転職活動をする求職者の動きが例年より多くなる可能性もあります。
日本人の転職希望者については、引き続きベトナム現地在住者が増えています。一方で日本在住の日本人でベトナムでの就業を希望する方々は、ベトナムのみならず海外転職を控える動きが目立ちます。入国緩和の状況次第で、第4四半期は動向が大きく変わることが予想されます。

■中国■■

入国規制緩和後も、新規ビザ申請・隔離で規制が続く

求人数

対前年四半期比 57%
対前四半期比 107%
JAC Recruitment 上海法人総経理 小梁川 舞香

中国本土では新型コロナウイルス感染拡大の抑制が出来ており、国慶節(8連休)ではおよそ6億人が旅行し、消費活動回復の兆しが見えています。7月半ば、中国国家統計局は、実質GDP成長率は上半期では前年同期比-1.6%と発表しましたが、通年では2.5%とみる識者も多いです。工作機械などの業界や、ECを活用した小売り業では伸びていますが、米中対立など経済回復に向けての懸念が残り、完全な正常化まではまだ時間を要する状況です。6月の大専(専門学校)・本科(4年生大学)卒業以上の20~24歳の失業率は19.3%と、雇用状況は改善には至っていません。

企業の採用動向

欠員補充目的の求人が大半を占めている状況ですが、来期に向け採用活動を開始する日系企業も増加傾向です。中でも、中国市場で成長領域である医薬業界での専門職や、物流や商社、コンサルティングなどの領域で医療業界向けのサービスを担当する求人が増えています。その他、新型コロナウイルスの感染拡大以降、オンライン化の加速が進んだことを背景に、ITやDX(デジタルトランスフォーメーション)人材の求人が増加しています。これらの求人は日本語人材に限定すると候補者が少なく採用が難しくなるため、言語要求なし(中国語と専門能力)で募集をする企業が多いです。日本人向けの求人については、新規ビザ取得の難易度・対面での面接不可を理由に、既に中国の就労ビザがある事を応募条件とする企業が散見されます。

求職者の動向

毎年旧正月に近づくとボーナスが支給されてから転職を希望する転職希望者が増えることから、転職活動をする方々が減る傾向にありますが、今年は通年で経済状況の回復が見えるまで転職に慎重な中国人候補者が多いです。日本在住の日本人の中国への転職希望者については、中国への入国管理政策の緩和され、日本と中国間の航空便数の増加するなど、渡航出来ずに日本に留まっていた駐在員やご家族が次々と入国しています。一方、新規ビザ申請については依然招聘状の取得が必要となり、出張者であっても2週間の隔離が必須のため、面接のための短期での入国が容易ではない状況が続いています。

■香港 (中国香港特別行政区)■■

第3四半期の後半にかけて求人数が回復の兆し

求人数

対前年四半期比 62%
対前四半期比 117%
JAC Recruitment 香港法人社長 渥美 賢吾

7月に、3度目となる新型コロナウイルスの感染状況が深刻化しました。香港経済がポジティブな方向に向くことが期待されたものの再び視界不良となり、景気悪化傾向の長期化、更なる雇用環境の悪化などが改めて懸念される事態となっています。8月後半、感染第3波が収まり始めると社会は少しずつ落ち着きを取り戻し、9月には感染抑制のための入境規制、社会規制は残っているものの平常化が徐々に進んでいます。しかし、香港系航空会社の大規模リストラが確実視されており、実施した際に香港社会に与えるインパクトの大きさが懸念されています。

企業の採用動向

求人数は、香港における抗議活動が徐々に激しくなっていった前年同四半期と比較しても、38%減と依然厳しい求人マーケット環境ではありますが、今年の第3四半期比の求人数は17%増と改善の兆しが見え始めています。特に、8月中旬以降においては一旦止めていた求人の再開や、新規求人の依頼も受けています。
新型コロナウイルスの問題が自社事業に与える影響度が見えてきた事で、様子見をしていた企業が採用方針を決めはじめ、採用するポジションとしないポジションが明確化したことが理由です。ただし、内定時に提示されるオファー内容(給与、待遇等)については抑制傾向で、全体的な情勢は買い手市場です。

求職者の動向

前述した変化が、当然ながら求職者にも影響を与え始めています。各企業におけるさまざまな意思決定(縮小や移転、撤退等)が進んだ事でやむを得ず退職して就職活動を始めたり、自社の先行きの不透明さから転職活動を開始したりする求職者も一定数います。一方、失業率の高まりもあり、買い手市場への移行が始まる中で、現状維持か、場合によっては前年収からダウンのオファー内容でも受諾したいと考える候補者が増加しています。これは、以前の香港マーケットには見られなかったトレンドです。新型コロナウイルス問題が落ち着くまで様子を見たいと考え、積極的な活動を行わない転職希望者も存在します。

■韓国■■

輸出額増加や日韓往来の一部再開から、企業活動に反転の兆し

求人数

対前年四半期比 82%
対前四半期比 117%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎

8月に感染が再拡大した新型コロナウイルスは、秋を迎え収束の兆しが見られています。韓国産業通商資源部が10月に発表した「2020年9月輸出入動向(速報値)」によると、9月の輸出額は前年同月比で感染拡大以降で初めてプラスに転じた模様です。輸出上位3品目である半導体、一般機械、自動車に加え、バイオヘルス(前年同月比79%増)、コンピュータ(66%増)が大幅に増加しました。また、日韓のビジネス往来が10月8日から再開されており、2ヵ国間の経済活動に追い風になる見通しです。韓国銀行は8月に発表した『2020年経済展望報告書』で、2020年の実質GDP成長率見通しを前年比マイナス1.3%としています。

企業の採用動向

第3四半期の求人状況は対前期比で17%増となり、直近では緩やかに回復しています。新型コロナウイルスにより採用を凍結していた会社もほぼなくなり、急募の求人案件も増加しています。特に半導体や二次電池の設備や部材を扱う会社が採用に積極的です。日系企業では、面接官の韓国出張が難しいことや応募者への配慮、会社方針等から、非対面によるオンライン面接を実施する会社が増えており、柔軟な採用活動を行う傾向となっています。

求職者の動向

例年であれば秋夕(チュソク)休暇後に求職者の動きが活発になり、転職マーケットが活性化しますが、本年度は昨年以上に鈍化しています。但し、新型コロナウイルスの影響で、会社都合で転職活動をせざるを得ない方は一定数存在します。また、本年度は財閥大手企業により秋の公開採用は募集人数を縮小することが考えられるため、新卒採用を計画する企業にとっては、語学スキルや会話スキルの高い優秀人材を採用するチャンスと言えます。既に来年2月卒業の大学生も就職活動を始めており、迅速に採用活動を開始することが有利になる可能性があります。

■インド■■

ロックダウンの緩和後、徐々に採用活動の再開の兆し

求人数

対前年四半期比 74%
対前四半期比 115%
JAC Recruitment インド法人社長 小牧 一雄

新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンにより生活必需品の関連以外の多くの企業活動が制限されたことで、企業の経済活動が大きく停滞しました。さらに厳格な外出自粛規制が行われたことで、消費活動も大きく停滞しました。インド政府によると、同年4~6月期の実質GDP成長率が、前年同期比でマイナス23.9%と発表。これまでインドが経験したことのない、過去最低水準のGDP成長率となりました。
インドでは9月に入り連日約9万人ペースでの新規感染が続いていましたが、9月中旬よりピークアウトした状況です。10月時点でのインドの新型コロナ感染者数は676万人となっており、世界で2番目に多い感染者数となっています。しかし、8月からインド南部など依然として感染拡大が深刻な地域を省き、ロックダウンの緩和に踏み切っています。大型ショッピングセンターの再開、メトロの運航などこれ以上の経済の停滞を避けるため、ウィズコロナとして経済活動を優先とした方針へと転換しています。

企業の採用動向

新型コロナウイルスの影響により今後の経済の見通しがつかないため、一時は8割近くの企業が採用を保留としましたが、ロックダウンの緩和により徐々に経済活動が戻りつつあります。中でも二輪車などの需要が急速に回復しつつあり、需要に対応すべく採用活動を再開し始めた企業も少なくありません。特に製造管理や品質管理に関連するポジション、経営層と現場とのコミュニケーションギャップを軽減するためのインド人日本語話者や労働者の採用強化に伴い、企業の採用活動が戻りつつあります。
一方で、日本人の採用についてはビザの発給時期の見通しが未だ立たない状況ですが、候補者とオンラインで面接を重ねながら入社のタイミングを調整するケースが見受けられます。特に管理部門に関してはリモートでの業務であったも支障をきたさないため、渡航前に入社し新型コロナウイルスの状況を見て渡印するなど、柔軟にに対応をする動きが見られます。

求職者の動向

新型コロナウイルにより、インドの企業に頼らないキャリア形成を考え海外での就業を希望される方が昨年と比較して増加傾向にあります。しかし、直ちに海外就業するわけではなく、現職と海外での仕事内容を比較しながら、長期スパンで自身のキャリア形成を考える傾向にあります。インドでの就業を希望する日本人の傾向として、経済成長の著しい環境に身を置き希少価値の高い人材になりたいと考える候補者が増えてきています。一方で新型コロナウイルスの感染状況もあり、「状況をみて転職時期を判断する」と慎重に構える人材も少なくありません。インド人については新型コロナウイルスの影響により給与カットやリストラが実施されていることもあり、現職に対する不安もあり、好待遇な環境・条件を求め転職活動を行う人材も少なくありません。

■日本■■

新規求人数は昨年並みに回復 各社は厳選採用の姿勢

【求人数】(日本企業の海外事業関連求人)
対前年四半期比 95%
対前四半期比 153%
JAC Recruitment(日本)海外進出支援室 室長 佐原 賢治

7月に入り、都道府県境をまたぐ移動や飲食店営業、大規模イベントの開催などに対する制限が徐々に緩和され、わが国における新型コロナウイルス対応は、経済活動と感染防止の両立のフェーズへと移行しました。しかし、お盆期間中の東海道新幹線の乗車率は最大でも50%と極めて低い水準で、また全国の飲食店の約80%が月の売上は前年から2割以上下落したとする調査結果もあるなど、国内消費市場は厳しい状況が続いています。
一方、内閣府が 9月11日に発表した法人企業景気予測調査では、7~9月期の景況判断指数が+2.0と、4四半期ぶりにプラスに転じました。また、輸出も中国向けが牽引する格好でコロナ前の9割の水準に戻っており、国内生産は多くの企業でほぼ平常運転に戻っています。また企業におけるオンラインコミュニケーションはますます定着し、海外拠点のマネジメントや商談、面接などでもオンラインが一層多用されている実感があります。

企業の採用動向

2020年8月の有効求人倍率は1.04倍と6年ぶりの低水準でした。2020年2月(1.45倍)と比較すると、実に半年で0.4ポイント以上急落したことになります。
一方、当社に寄せられる新規求人申込(日系企業の海外事業要員)は前年比63%と大きく落ち込んだ4-6月から大幅に回復、ほぼ前年並みとなりました。管理職や各分野の専門職を主な対象とする当社の統計は、労働市場全体を表す有効求人倍率とはやや趣を異にするものではありますが、主に製造業において、海外現地法人の「自立化」のための支援体制の充実や、サプライチェーンや法務・税務といったアフターコロナに見込まれる新たなリスクに対応するための要員、またCASEやIoTなど先端分野における国際連携を促進するR&D要員(デジタル系人材)などの求人が目立ちます。
但し、これらの求人募集を行う多くの企業は、「焦らず本当に優秀な人材を採用したい」という「緊急性」よりも「重要性」を重視する姿勢を示しており、採用決定数ベースでの回復はもう少し先になることが予想されます。

求職者の動向

7-9月の新規求職者(海外事業経験者の登録者)数は、前四半期比109%、前年同時期比でも120%と増加しました。在宅勤務やオンラインコミュニケーションツールの普及により転職相談の時間と機会が増えたことが要因のひとつと考えられますが、各求職者の動きは慎重で、転職は状況次第という姿勢が目立ちます。また先述の高度専門分野や海外ビジネスなどの知見・経験を有する人材には選択肢も多いことから獲得の難易度も高いままで、採用企業においては募集から入社までのリードタイムを長めに想定しておく必要があります。

各国の求人数の増減については、その国々の景況感による変動や各国が講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化など)により、意図的に減る場合もあります。そのため、求人数の増減は直接各国の業績に結び付くものではありません。

株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて

1988年設立。スペシャリストや管理職の人材紹介に特化し、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」のビジネスモデルとして国内最大規模の東証一部上場企業です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介も強みの一つで、日本国内では外資系企業や日系企業の海外事業などのグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。外資系企業の人材紹介に特化した JAC International、ジョブサイトの「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング、英国、ドイツおよびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC RecruitmentAsia Ltdのグループ会社を傘下に、世界11ヵ国、24拠点で事業を展開するグローバル企業です。

日本 : http://corp.jac-recruitment.jp(コーポレートサイト)
     http://www.jac-recruitment.jp(転職サイト)
アジア: http://www.jac-recruitmentasia.com/

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