サンクトと高橋 潤一名誉教授(帯広畜産大学)、 L-システインを用い 家畜由来メタンガスを大幅削減する技術の実用化を目指し契約を締結
株式会社サンクト(本社:東京都江東区、以下サンクト)は、L-システインを用いて反芻動物のげっぷに含まれるメタンガスを減少させる技術の実用化を目指し、帯広畜産大学(北海道帯広市)の高橋 潤一名誉教授と共同研究開発を目的とした契約を締結しました。メタンガスは温室効果ガス(GHG)のひとつで、地球温暖化効果は二酸化炭素の約25倍です。2021年11月に英国で開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、2030年までにメタンガスの30%削減(2020年比)目標が示され、日本をはじめ多くの国が同意しました。
高橋名誉教授の研究チームは牛の硝酸塩中毒について研究する過程で、中毒を起こした牛のげっぷにはメタンガスが含まれず、飼料に硝酸塩とL-システインというアミノ酸を添加することで中毒を防ぐことができるだけでなく、胃内におけるメタンガスの産生が抑制されることを見いだしました。L-システインは食品添加物や化粧品・医薬品の原料と幅広く使用されており、羊毛や鳥の羽毛、ヒトの毛髪にも存在しています。
人為起源によるGHG排出量全体の約16%をメタンガスが占めており、その約25%が家畜由来とされています。高橋名誉教授らの技術によるメタンガス抑制効果は約90%と見込まれ、この技術が実用化されればGHG排出量削減につながることが期待されます。
サンクトは世界を代表するアミノ酸メーカー新生源社(中国湖北省)の日本総代理店という強みを活かし、L-システイン塩酸塩の原料を安定供給することが可能です。しかしL-システイン塩酸塩を飼料添加物として使用する上で、酪農家・畜産家への負担増加が懸念されます。一般的な飼料の価格が100円/kg以下であるのに対して、L-システイン塩酸塩の原料価格は2,000円/kg以上であり、飼料に添加した際のコスト上昇が見込まれます。酪農家・畜産家にとってコスト上昇は受け入れがたく、L-システイン強化飼料を普及する上での課題となっています。
この課題を解決するためにサンクトは再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)と同様な国の助成制度の導入を視野に入れ、関係省庁へ働きかけを行います。L-システイン塩酸塩が飼料添加物として指定されるためには、有効性・安全性・安定性などの膨大なデータを取得する必要があります。そのために必要となる費用は最大10億円程度と見込まれており、GHG排出量削減に関心を持つ企業を募って資金調達を行い、異業種間での連携を図る予定です。
サンクトは家畜由来のメタンガス排出削減を通じて、日本全体で地球温暖化防止・COP26の目標達成に貢献していきます。
参考文献
・環境省.「IPCC第5次評価報告書の概要」. 2015年3月版, 2015.
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_syr_overview_presentation.pdf
・Takahashi, J. et al. Animal Feed Science and Technology. 1991, vol.35, p.105-113
・Takahashi, J. et al. The Science of the Total Environment. 1997, 204, p.117-123