抗老化新規機能性食品素材として注目! ザクロ抽出物の腸内代謝物「ウロリチンA」による サーチュイン遺伝子発現増強効果を確認 ―国際ポリフェノール学会(ICP2020)にて発表―
株式会社ダイセル(本社:大阪市北区)は、当社が世界で初めて発酵法による工業生産に成功したザクロ果皮由来エラグ酸の腸内代謝物「ウロリチンA」を用いて、九州大学(福岡県福岡市)と共同研究を行いました。その研究成果として、「ウロリチンA」のサーチュイン遺伝子の発現増強効果を確認いたしました。
また、新たな機能性が期待されているウロリチンA類縁体のイソウロリチンA及びウロリチンBについても発酵法による製法開発に成功しました。
これらの研究成果は、2021年7月15日に開催された「ICP2020 XXX International Conference on Polyphenols」にて発表いたしました。
研究の背景・目的
ザクロは古くから様々な健康効果が期待できるスーパーフルーツとして重宝され、現代でも食品や飲料に使用されています。この健康効果は、ザクロに含まれるプニカラジンなどのエラジタンニンやその加水分解物であるエラグ酸などの主要ポリフェノールによるものと考えられ、抗ウイルス、抗酸化活性などが報告されています。しかし、エラグ酸などはそのまま摂取しても、特定の腸内細菌の有無によっては健康効果を発揮しないこともあるため、当社はこれらポリフェノールの腸内代謝物であるウロリチン類に注目してきました。
これまでに当社は、エラグ酸を摂取したヒトの尿中ウロリチン類濃度を分析し、ウロリチン類を体内で生成できる被験者は約55%であり、約45%は、エラグ酸をウロリチン類へ代謝できる腸内細菌を保有していないことを報告してきました。
本研究では、これまでの研究成果を発展させ、エラグ酸から特定のウロリチン類を選択的に発酵生産する方法を見出すことおよびウロリチンAの機能性を明らかにすることを目的としました。
研究内容と結果
(1) ウロリチンA及び類縁体の生産
これまでの研究において、ヒト糞便からウロリチン生産菌の分離を試み、ウロリチン類を生産可能なヒトの糞便とエラグ酸を共に培養し、その代謝物を解析しました。その結果、ウロリチン類が培地中に検出されたことから、ヒト糞便中にウロリチン生産に関与する腸内細菌が存在すると考え、ウロリチン生産に関与する腸内細菌のスクリーニングを行いました。その結果、エラグ酸を出発物質としてウロリチンA生産に関与する2種類の腸内細菌を分離することができました。
さらに、この2種の腸内細菌を利用した共培養システムにより、世界初の発酵法によるウロリチンAの製造に成功いたしました。
さらなる研究により、これら2種の腸内細菌とは異なる反応特異性をもつ腸内細菌を分離することに成功しました。この腸内細菌を含めたエラグ酸代謝に関わる腸内細菌3種類を利用し、ウロリチンA以外のウロリチン類の生産を試したところ、2種又は3種の腸内細菌の共培養システムによって、エラグ酸を出発物質としてそれぞれイソウロリチンA、ウロリチンBを生産することにも成功しました。
(2) サーチュイン遺伝子発現増強
現在、ウロリチン類の新たな効果として、サーチュイン遺伝子に対する効果を評価しています。
サーチュイン遺伝子は長寿遺伝子とも言われ、DNA修復や抗炎症などに関連する抗老化作用を有しています。サーチュイン遺伝子はSIRT1からSIRT7の7種類が知られていますが、当研究グループはそのうち、DNA二本鎖切断の修復や毛包幹細胞老化抑制など、抗老化作用に関わるSIRT6に着目し、ヒトの腸由来の細胞試験により、ウロリチンAの効果を評価しました。その結果、ウロリチンAはSIRT6に対して発現増強する効果を有することを確認いたしました。ウロリチンAはSIRT1やSIRT3にも効果があることが知られており、これらの結果から、ウロリチンAが抗老化効果を有する新しい機能性食品素材として有望であることがわかりました。
今後の研究開発について
今後、さらなる研究を進め、ウロリチンAのヒトへの健康効果に関するエビデンス取得を推進、安全性、信頼性の高い製品製造を継続的かつ安定的に供給することによって、ウロリチンAが人々の健康維持、増進に貢献できるよう努めていきます。また、新たな健康効果が期待できるウロリチンB及びイソウロリチンAについても機能性の研究と生産の検討を進め、人々の健康課題の解決策を提供できるよう努めていきます。
ウロリチンAについて
当社が世界で初めて発酵法による製法の開発に成功した「ウロリチンA」は、機能性食品素材(製品名「ウロリッチ(TM)」)として、2021年5月より、主にサプリメントメーカーなどに販売しています。