アジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向  2019年1月~3月

世界11ヵ国で人材紹介事業を展開し、東南アジアでは最大級の規模(※1)を誇る株式会社ジェイ エイ シー リクルートメント(代表取締役社長:松園 健)は、この度、2019年第1四半期のアジア各国のホワイトカラー人材紹介市場の動向を纏めましたので、お知らせいたします。
(※1) 自社調べ(アジアで人材紹介事業を展開する同業他社の売上規模を比較)

※以下リンクより、より読みやすいPDF版のプレスリリースをご参照ください。
https://www.atpress.ne.jp/releases/182838/att_182838_1.pdf

サマリー

・2019年第1四半期は、ベトナム、香港、日本が昨年同期比で求人増
・旧正月以降求人数は増加するのが例年の傾向の中、2019年第1四半期は米中貿易摩擦やEU離脱問題等の外的要因により、アジア全体で求人の伸びが鈍化傾向に

■マレーシア■■

市場心理が弱く、求人数は減少傾向

求人数

対前年四半期比 86%
対前四半期比 128%
JAC Recruitment マレーシア法人社長 大西 信彰

3月にVistage-MIER(マレーシア経済研究所)が発表したCEO Confidence Index(経済動向信頼感指数:DI指数に100を加えた指数、CEO回答数は650)によると、第1四半期は93.1ポイントとなり、2018年第4四半期に続き100ポイントを下回りました。市況が悪化していると答えたCEOも2018年第1四半期の23%、同第4四半期の34%より更に増え37%となっています。今後の人員増加を計画しているCEOの比率も、同様に48%、41%、40%と下降気味であり、設備投資を計画していると答えた比率が50%、44%、42%となっているのと同様、慎重な姿勢が見て取れます。

企業の採用動向

・求人数は前四半期比28%増加したものの、前年同期比では14%減となりました。日系で12%減であったのに対し、欧米を中心とする外資(除く地場企業)では20%減と減少率が大きくなりました。この背景として、ペナン州やケダ州での工場閉鎖や人員削減(米系Johnson & Johnsonや独系Osramなど)が実施された事、日系半導体大手Renesasによる操業一部停止などに加え、米中貿易摩擦の影響によるEMS(電子機器受託製造)における生産調整などの影響もあり、市場心理が弱い状態で推移している事が挙げられます。これを受け一部企業で新規採用を一定期間保留したり、マネージャー職以上のポジションで外部採用を控え現存社員の内転などで対応する企業も見られます。
・これをポジション別で見てみると、マネージャー職の給与レンジである月額RM5000からRM8000の求人は当社全体で前年同四半期比33%減。一方で、それ以下のジュニア層である月額RM5000以下の求人は3%減と減少率は低くなっています。また、月額RM8000以上の高額ポジション(シニアマネージャーやGMクラス)に関しての求人数は前年同四半期対比で変化はなく、引き続き企業側の採用意欲は高い状態で安定しています。
・MIDFリサーチ(マレーシア産業開発金融系のシンクタンク)によると、「第2四半期から国際的なコモディティー価格の上昇や、高い国内需要、また貿易摩擦の影響が薄れることなどにより、安定した回復が見込まれる」としています。また医療機器業界では、増産やそれに伴う工場新設も進んでいることや、同業界へのサプライヤー(電子機器やハーネス部品)でも増産を計画していることから、下半期に向け求人は再び活発になっていくことが予想されます。

求職者の動向

・特にペナン地区でマネージャー層を中心に、より安定した企業への転職意欲が高まっており、2018年第4四半期に比べ、当社への問い合わせが3割ほど増加しています。
・マレーシア中央銀行の発表によると、マレーシア人大卒の2018年初任給は2010年を下回っています。従来、在マレーシアの企業は日系・非日系を問わず新卒採用はほとんど行わず、高度技術人材や管理職の中途採用に重点を置いていることから、新卒社員において需要のミスマッチが生じていることが要因です。また当社が2017年に実施した求職者向けアンケートでは、特に新卒から2-3年までの層で、「最初に入社する企業はトライアルであり、キャリアを積んでいく意識は低い」という結果が出ているため、このようなトレンドが企業側の採用意欲を削いでいる要因でもあります。

■シンガポール■■

実質GDPの減少や外部要因の影響により求人数は減少したが、スペシャリスト・マネジメント層の需要は高まる

求人数

対前年四半期比 82%
対前四半期比 97%
JAC Recruitment シンガポール法人社長 早瀬 恭

シンガポール貿易産業省が発表した2018年のシンガポールの実質GDPは、2017年の3.9%から減少し3.2%となりました。2019年は2.5%と予想されています。その背景は外部要因である米中貿易摩擦や英国のEU離脱問題等による、外需関連業界の減速によるものです。シンガポール経済開発庁(EDB)発表の1月の製造業生産は前年同月比3.1%減となり、2017年12月以来のマイナスとなりました。2月はプラスに回復し、前年同月比0.7%増となりました。全体の3割を占めるエレクトロニクス部門が1.1%減となりましたが、生物医学部門は13.3%増と大幅な伸び率となり、その他のマイナスの部分を補っています。失業率は2.1%で、前年と同水準です。

企業の採用動向

毎年1月末から2月にかけてシンガポール人が転職活動をする時期のため、欠員補充の求人が増加しました。元々増員を予定していた企業から、欠員補充の求人も併せ複数の求人依頼を受けています。日本人の採用を希望する企業からは、PR(Permanent Resident、永住権)保持者、DP(Dependant's Pass、配偶者ビザ)保持者の要望が引き続き高く、就労ビザの取得を必要とする主な求人はスペシャリストやマネジメント層の人材が対象です。求人数は昨年同期比で18%減となり、背景として製造業を中心に景気や米中貿易摩擦の影響を考慮し、採用を控える企業が目立ちました。

求職者の動向

例年同様、旧正月前後よりシンガポール人の転職希望者が活発に活動をしました。スキルが高く豊富な経験を持つ方などは引く手あまたのため、登録から転職が決定するまでの期間が短くなっています。日本の景気が良いにも関わらずシンガポールでの就業を希望をする日本人の登録者も多い状態で、海外勤務経験者・希望者やスペシャリスト、マネジメント人材の登録が増加しました。第1四半期は年度初めの4月の転職を目指す方々の登録が目立ちました。

■タイ■■

8年ぶりの総選挙が実施されたが、波乱が続くことが予想される

求人数

対前年四半期比 87%
対前四半期比 122%
JAC Recruitment タイランド法人社長 山下 勝弘

政治面では軍政派と反軍政派に分かれた連立工作が続く状態の中、現時点は「プラユット首相(軍政)の続投予定ですが、ねじれ国会になる」公算が高いです。そうなることで様々な政策の決定がなされず、経済の停滞を生む可能性が懸念されています。特に、日系製造業の集積地であるチョンブリ県とラヨーン県では現政権と同様に次期政権が投資を続投するか否かなど、日系企業が受ける影響は計り知れず、企業の今後の採用戦略にも大きく影響する事が予想されます。

企業の採用動向

各党が公約に掲げる最低賃金の引き上げが実行に移されると、人件費の上昇にともないタイの製造拠点としての優位性がさらに失われ、周辺各国に移転する可能性があります。そのような事情もあり、一部の製造業系企業は採用をストップ、またはスピードを緩める傾向が強くなっています。5月初旬には大方の方向性が出ることが考えられますが、4月末時点ではタイの企業全体で様子見の状態です。一方で2019年の賃上げも例年通り平均5%であったため、タイの消費マーケットとしての魅力はますます高まっています。このため、非製造業は積極的な進出が続き、採用意欲も堅調に推移していることもあり、求人数は対前期比で増加となりました。

求職者の動向

転職希望者の方々も今回の選挙結果への関心はかなり高いものの、実際の転職活動についてはそこまで選挙結果を気にせず、例年通りに活動をしている様子です。失業率は依然として1%前後と周辺国と比較して売り手市場であり、現在の海外からの投資が維持できる限りは人口動態を見ても、この傾向は変わらないことが考えられます。

■インドネシア■■

インフラ、不動産などの日系企業の採用意欲により、前期比で求人増

求人数

対前年四半期比 90%
対前四半期比 121%
JAC Recruitment インドネシア法人社長 小林 千絵

円借款支援事業により、日本の官民が全面協力し完成したインドネシア初の大量高速交通システム(MRT)が開業。4月1日より商業運転を開始しました。4月17日には今後5年間の任期を担う大統領選挙が行われ、調査会社のクイックカウントによると再選を目指していたジョコ大統領の当選がほぼ確実と言われています。多くの投資家は、どちらが当選しても消費を中心とする経済成長は続くと考えているようです。
2018年のGDPは5.17%と政府目標の5.4%には届きませんでしたが、2017年の5.17%よりも上回りました。2019年は5.2%となることが予測されています。靴やアパレルなどの消費財業、農業、サービス業の成長が期待されていますが、2月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比2.57%となり、2009年11月以降最低となりました。一方、貿易収支は2月に5か月ぶりに黒字となりました。

企業の採用動向

第1四半期に当社が依頼を受けた求人数は前四半期比で日系が19%、非日系が22%増加し、全体で21%増となりました。引き続きインフラ、不動産関連、製造業からの求人が伸びています。昨年同期比では日系企業からの求人は32%増となりましたが、日系以外では23%減となり、全体で10%減となりました。最近の業界の動向は、一部の不動産業ではアパートなどの販売不振により低迷しましたが、消費財関連は堅調です。eコマースやFinTech関連企業からの人材ニーズは増えているものの、インドネシア人の人材不足により紹介が追い付かない状況がしばらく続く見込みです。日系企業の市場では、日本で4月に施行された改正入管法により、人材を送り出す機関による求人が増加傾向にあります。

求職者の動向

インドネシアでは日本人現地採用のニーズは高いものの、東南アジアで就業を希望する方々はシンガポールやベトナムを選ぶ傾向が強くインドネシアは希望者が少ないため、人材不足が続いています。特にニーズの高い30~40代の人材が不足しています。昨今、ムスリムのインドネシア人もクリスマスの祝日から年始まで長期休暇を取る人が増えてきたことや年末のボーナス支給待ちで前期は候補者数が減少しましたが、第1四半期は再び増加しました。若手層からシニア層まで、転職後の給与増を期待する転職希望者が多い状況です。

■ベトナム■■

米中貿易摩擦の影響により、中国からベトナムへ移転する
企業が増加傾向。内需拡大に伴い労働市場も変化

求人数

対前年四半期比 119%
対前四半期比 99%
JAC Recruitment ベトナム法人 ディレクター
Le Thuy Dieu Uyen(レー・トゥイ・ユー・ウィン)

統計総局(GSO、General Statistics Office)の発表によると、2019年第1四半期の国内総生産(GDP)の成長率推定値は前年同期比で+6.79%となり、前年同期の成長率の+7.38%は下回ったものの、2011年から2017年の同期よりも高い数値を示しました。この成長率に貢献したセクターは、工業・建設業(+8.95%)、サービス業(+6.50%)、飲食業・ホテル業(+6.22%)、金融・保険業(+7.71%)、不動産業(+4.75%)で、内需型産業が経済成長を牽引しています。

企業の採用動向

中国に生産・販売拠点を構えていた、縫製業を中心とする企業がベトナムに移転する動きにともない、日系を含む外資企業による採用が活発な状況です。特に、生産拠点の中核人材である工場長、技術部長、購買部長、財務部課長や、全国に販売網を展開する統括拠点責任者等のハイスキル人材の求人が増加しています。さらに、企業買収・合併(M&A)後の組織再編にともなう人員の再配置に関連する求人も増えています。過去にベトナムに進出した多くの企業は安い人件費が目的でしたが、最近では経済や企業環境の変化により、人材採用の際は高い能力や経験を重視する傾向が強くなっています。

求職者の動向

以前はベンチャー企業などの新規立上げの求人に興味を示す転職希望者が多かった傾向がありましたが、最近では企業規模、財務状況、福利厚生等を基準に企業を選択するという安定志向の方が増えています。
アシスタントや秘書業務の人材採用の際は高い日本語能力を求められますが、内需型企業を中心に、語学力よりも豊富な実務経験や専門的知見を持つ人材を積極的に採用しています。ビジネスレベルの日本語力がなくても日系企業への就職や転職が可能な状況になっており、それが転職希望者の選択肢を広げることに繋がっています。

■中国(上海・広州)■■

設備投資による人員増、ホワイトカラー人材が一級都市離れ

求人数

対前年四半期比 88%
対前四半期比 112%
JAC Recruitment 上海法人総経理 小梁川 舞香

中国自動車業界団体が9日に発表した情報によると、3月も前年同月比12.1%減となり、9か月連続で自動車販売台数が低迷。一方、一部の地域(中国西部地区)では、新エネルギー車(NEV)の販売台数が前年の2.8倍に増加し、地域により大きな差が出ました。この低迷を受け、中国政府は製造業などに対する付加価値税率を16%から13%に、運輸業や建設業などは10%から9%にする減税措置を講じました。また、5月1日に実施される社会保険料の引き下げ分と合わせ、2兆元(約33兆円)近い企業負担コストの軽減を予測しています。

企業の採用動向

求人数は旧正月明けで対前四半期比で12%増となりましたが、対前年同期比では12%減となりました。対前年同期比で見ると離職が少なく、欠員補充目的の求人が全体的に減少傾向です。一方、製造業では工場の増設などの積極的な設備投資が見られ、関連の求人が増加傾向です。例として産業用ロボットの需要増加などを背景に、海外・日系大手企業共に、上海や広東省でのロボットの現地生産を拡大しています。新工場設立に伴い、ワーカー系の人材や、ホワイトカラー人材、特に幹部人材は日本人・中国人問わず工場系の幹部職人材の採用が活発な状況です。

求職者の動向

日本語履修人口の減少に伴い日本語能力を有する人材が減少しているだけでなく、それに追い打ちをかけるように不景気の影響を受けホワイトカラー人材は心理的に転職に慎重な状況です。また、外地出身のホワイトカラー人材による、上海などの「一級都市離れ」が顕在化。中国江蘇網によると蘇州市民の18年住民1人当たり可処分所得が前年比8.3%増の5.5万元を突破したと発表しました。一級都市の著しい物価・住宅価格の上昇に伴い、二級都市での就業を希望する候補者が増加傾向にあります。専門職種・即戦力人材などは、人材ニーズに対し紹介が追い付いていない背景を受け、高額で採用されるケースも散見されます。

■香港■■

求人数は堅調に推移するも、マーケットの見通しは抑制傾向

求人数

対前年四半期比 110%
対前四半期比 119%
JAC Recruitment 香港法人社長 渥美 賢吾

昨年末から今年の第1四半期にかけて、電子部品業界の他、米中貿易摩擦の影響を受けやすい企業を中心に景気の先行きに対して慎重な動きが見られます。悲観までには至っていませんが、本来であればビジネスを後押しするであろう昨年10月に開通した港珠澳大橋や、中国の支援を受けた「大湾区構想」プロジェクトが進行しているにもかかわらず、景気の先行きについては楽観できない状況です。

企業の採用動向

例年であれば、求人は旧正月明けから急激な伸びを見せていましたが、今年の第1四半期はそこまでの勢いはありませんでした。一部、BtoC業態の企業において、香港マーケットへの更なる展開を目的とした増員前提の求人依頼もありましたが、日系企業からのニーズの多くは依然として欠員補充が中心です。職種としては、営業系、カスタマーサービス、バックオフィス系が継続して高い比率となりました。
一方、外資系企業・香港系企業においては、好調な日本市場の新規開拓、現状事業の更なる拡大を目的とした営業やマーケティング系職種の採用ニーズが増加しました。また、香港で採用したうえで、当地市場拡大の役割に加え、出張ベースで日本市場の開拓も兼務させる求人依頼も受けています。

求職者の動向

香港人の転職希望者の動きは例年の傾向どおり、春節のダブルペイ(ボーナス支給)の時期以後、現在就業中の人材を中心に活発でした。この動きは、春先にボーナス支給の時期を控える金融機関も多いことから、夏に向けて一定水準で続いていく事が予想されます。
日本人の転職希望者の登録状況においては、大きな季節的変動はなく横ばいの状態です。直近の登録者の職種や経験は様々で、年齢層も20代の若手から50代のシニア・エグゼクティブ層まで幅広く、就業希望地域として「香港のみ」よりも「香港を含めたアジア各国」を見据えて希望する方が多いです。

■韓国■■

財閥系企業の不振や労働法の改正の影響で、求人数が減少

求人数

対前年四半期比 69%
対前四半期比 68%
JAC Recruitment 韓国法人社長 土山 雄一郎

韓国銀行(中央銀行)は2019年のGDP成長率予測を昨年の2.7%(速報値)より0.1ポイント低い2.6%と発表しました。また、韓国統計庁は1月の失業率を4.5%と発表し、昨年同月3.7%より大幅な悪化となりました。背景には最低賃金が今年1月より前年比10.9%上昇し、時給8,350ウォン(約820円)となったことが影響したと考えられています。経済面では、サムスン電子の業績がメモリーチップの価格下落により営業利益の大幅悪化が予想される一方で、韓国で世界初となる5Gの商用化が始まったことで、次世代通信半導体市場への期待は明るいニュースと言えます。

企業の採用動向

2019年第1四半期の企業求人状況は対前期比で32%減、対前年四半期比で31%減といずれも大幅に減少しました。背景は様々な要因がありますが、特に韓国大手半導体メーカーであるサムスン電子やSKハイニックスを始めとする韓国財閥企業の業績不振や、最低賃金上昇や週52時間労働制など各種労働政策の変更が企業経営者の採用姿勢が影響していることが考えられます。また、今年1月~3月期の外国人直接投資(FDI)が前年比35.7%減(日本からの投資は31.0%減)と大幅に縮小したこともあり、企業の採用意欲の低下状態はしばらく継続することが予想されます。

求職者の動向

4月は韓国財閥企業や大手企業の新卒採用の時期となるため、今年大学を卒業した新卒者を中心に求職者や転職希望者は活発に活動しています。そのため、この時期に新卒採用を実施する企業は他社応募状況を把握する必要があります。また、勤務先の経営状況の悪化により転職活動を余儀なくされる方も増加傾向にあります。転職活動をしている方の中には、実務能力に加え日本語力だけでなく英語力も高い方も存在するため、会社の中核人材の採用を計画している企業にとっては良い時期と言えます。語学力と言う点では、中国語能力の高い求職者も以前に比べ大幅に増えています。

■インド■■

製造業を中心とした採用ニーズは引き続き堅調だが、人件費の上昇が軽視できない状況に

求人数

対前年四半期比 87%
対前四半期比 123%
JAC Recruitment インド法人社長 小牧 一雄

インド経済はモディ首相の就任後、高速鉄道整備計画などインフラ整備の推進や外資規制緩和、また2017年より全国統一の物品・サービス税(GST)導入といった経済構造改革も断行しながら、7%近くのGDP成長率を達成しています。この数字は世界全体の成長予測が3%程度であることを考えると、驚異的な成長率を遂げていると言えます。一方でこれまで設備稼働率は断続的に上昇してきましたが、5月まで行われる総選挙を控えていること、成長する自動車市場において2020年に向けた排ガス規制などにより、企業の新規投資計画は鈍化してきています。このような先行きへの不透明感から、設備投資へのタイミングをうかがうなど積極的でないことが見受けられます。

企業の採用動向

昨年10月末のディワリといわれるヒンズー教新年祭後の離職者の増加、それに伴う欠員補充や毎年人事を悩ます人事評価期間後の転職者が増えたことなどにより、求人数は対前四半期比で増加となりました。全体的な転職市場の傾向としては、インドに進出している日系企業から多くの求人依頼を受けています。特に自動車業界を中心とした部品メーカーの求人は多く、品質管理、工場管理、日本語スピーカーなどの求人が目立ちました。また、製造ラインの増設、高速鉄道整備計画などによるインフラ整備に伴う総合建築業界の採用ニーズも増加傾向にあります。

求職者の動向

日本人の求職者の動向としては他国と併願してインドでの就業を検討される方が多い状況ですが、最近では英語力を生かせる仕事に就きたい、また経済発展が著しいインドで更なる自己成長を目指したいと考える日本人の転職希望者が増加傾向にあります。一方で、現地に根付いた、より安定した組織作りや人材の定着を重視する日系企業が増える一方で、インド人は給与アップ、昇格、待遇の改善のため転職を繰り返す傾向が強いため、双方の求めるものには大きな乖離があります。特にインドにおける年次昇給率は約10%程度であり、転職の際の給与上昇率が約20%であることから転職をした方がより高い給与を得られるという環境が大きく起因しています。

■日本■■

海外事業関連の求人は横ばいも依然として高水準
景気に不透明感も求人意欲は減退せず

【求人数】(日本企業の海外事業関連求人)
対前年四半期比 113%
対前四半期比 98%
JAC Recruitment(日本) 海外進出支援室 室長 佐原 賢治

米中貿易協議や英国のEU離脱交渉が難航していることから、景気の先行きには不透明感が出ています。
期中には徐々に円安が進むと同時に株価も回復しましたが、機械受注が前四半期に続いて前期比マイナスとなるなど企業の設備投資に鈍化の兆しが見られるほか、自動車や鉄鋼を中心とする輸出も減少傾向で、今年の後半に向けて景気後退を危惧する傾向もあります。

企業の採用動向

当社に寄せられた求人申込数は、需要が高止まりしていた電気電子業界でやや需要が一服したこと、新卒採用活動の開始が例年より早まっていることなどにより、昨年同時期からは微減となりましたが、依然として高水準で推移しており、企業の求人意欲減退は感じられません。厚労省が発表した2月の有効求人倍率も1.63倍と、依然として過去最高水準で推移しています。
1月~3月に特に増加が目立ったのは、海外での取引量増加に伴い増加した「国際法務」の求人と、成長分野であるIoTやAI関連の技術者を求める求人です。また、絶対数こそ多くはないものの、入管法改正に伴い、高度外国人材を求める求人は前年同時期に比べ30%以上増加しました。

求職者の動向

1月~3月の新規求職者(登録者)数は、前期比で114%と大幅に増加しました。前年同期比でも117%と、当社の主要なユーザーである35歳以上の人材の流動化が一層進んでいることを表しています。
昨年末のボーナス支給額も大企業で過去最高額となるなど、求職者の現年収や希望年収も上昇傾向にあります。求人数も高止まりしている中、特にAI、IoT など最先端分野や海外勤務経験者など一部で給与の上昇が目立ちます。また、大企業を中心に都市部の求人が増加していることから、地方部へのU・Iターンの動きは鈍い状態です。全般的に、離職中の求職者は減少しており、また、現在の勤務先に留まることを選択肢としたまま慎重に転職活動をする転職希望者が増えていることから、採用企業においては募集から入社までのリードタイムを長めに想定しておく必要があります。

※各国の求人数の増減については、その国々の景況感による変動や各国が講じた戦略(高額帯年収の求人やスペシャリスト層求人に特化など)により、意図的に減る場合もございます。そのため、求人数の増減は直接各国の業績に結び付くものではありません。

◆株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントについて◆
1988年設立。スペシャリストや管理職の人材紹介に特化し、企業と人材を一人のコンサルタントが同時に担当する「両面型」のビジネスモデルとして国内最大規模の東証一部上場企業です。国際ビジネス経験をもつ人材の紹介も強みの一つで、日本国内では外資系企業や日系企業の海外事業などのグローバル領域の売上が全体の50%以上を占めています。外資系企業の人材紹介に特化したJAC International、ジョブサイトの「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング、英国、ドイツおよびアジア8ヵ国で人材紹介業を展開するJAC Recruitment Asia Ltdのグループ会社を傘下に、世界11ヵ国、26拠点で事業を展開するグローバル企業です。

日本 : http://corp.jac-recruitment.jp (コーポレートサイト)
     http://www.jac-recruitment.jp (転職サイト)
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