平成30年北海道胆振東部地震における現地被害調査結果
切土・盛土分布図で見る盛土と建物被災状況の関係
このたびの北海道胆振東部地震で被災された皆様、ならびにご家族、ご関係者の皆様には謹んでお見舞いを申し上げます。被災地におかれましては、一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。
戸建住宅の地盤調査・建物検査など住宅に関する業務全般を手掛けるジャパンホームシールド株式会社(所在地:東京都墨田区、代表取締役社長:斉藤武司、以下JHS)は、2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震における被害状況の現地調査を行い、調査結果を取りまとめましたので、被害状況の概要および提言をご報告させていただきます。
当社では今後さらに詳細な調査を進めていきます。
調査の概要
・現地調査期間
一次調査:2018年9月17日~9月19日、二次調査:9月27日~9月28日
・調査方法
JHS地盤技術研究所研究員3名、北海道支店社員4名による目視調査、切土・盛土分布図作成
・調査エリア
概査:札幌市(屯田通り、月寒東、美しが丘)、北広島市、厚真町、安平町、むかわ町
詳細:札幌市清田区(清田、里塚)
調査結果
本レターでは詳細調査を行った札幌市清田区について下記の通りまとめました。
地形と地質概要
札幌市清田区周辺は火山山麓地に位置し、支笏火山、恵庭岳、樽前山から噴出した砂質火山灰土が堆積しています。台地には細長く曲がった谷筋が多く、傾斜地を宅地化する際に山側の土地を切土し、そこで発生した土を用いて谷筋を埋めた谷埋め盛土・切盛土をしていると想定されます。
被害状況
今回の地震ではマンホールの抜け上がりといった液状化被害や、地盤沈下に伴う道路の変状、住宅の傾斜、擁壁の崩壊などが確認されました(図1)。
※切土・盛土分布図は1970年前後に作成された国土基本図等を基に読み取った標高と現在の標高との差を求めて当社が作成したものです。
考察:谷埋め盛土地に被害が大きい原因
かつての谷筋は周囲から集水しやすく、地下水位が高い傾向にあります。また、当社の過去の地盤調査の結果から、この地域の盛土底付近には緩い火山灰質土の分布が推察されます(図3)。今回は地下水位が高く、緩い砂質の火山灰質土が分布という素因に降雨や地震が誘因となり、液状化の発生や水みちによる土砂の流出を引き起こし、地盤が沈下および陥没したために建物や道路等に被害を生じたと考えられます。
当社からの提言
液状化など地震時の地盤検討は現在明確な義務化はされていないため、液状化危険度マップなどによる情報収集が行われます。しかし、同マップは大まかな地形区分などを元に作成されているため、切土盛土が入り組む地形などではピンポイントでその宅地の危険度を把握することが困難な場合があります。したがって、建築前には地盤品質判定士など専門家に相談し、宅地ごとに液状化調査を実施するなど詳細な地盤調査を検討し、多角的な目線で地盤を視た上で建築計画をたてることが重要と考えています。
当社には多くの地盤品質判定士がいますので、困ったことや分からないことがありましたらご相談ください。