脳科学の知見でストレス軽減をサポートするアプリを開発 小型センサーで脳のデフォルトモード・ネットワーク*1)の 沈静化をモニタリング
国立大学法人東北大学と株式会社日立ハイテクのジョイントベンチャーである株式会社NeU(本社:東京都千代田区、代表取締役:長谷川 清、以下 NeU)は、脳科学とマインドフルネスの知見をもとに、小型センサーで脳を計りながらストレス軽減をサポートするスマートフォン用アプリ「ストレスマネージャー」を開発しました。本アプリのユーザーは個人と法人の両方を想定しており、2020年3月下旬よりサービス受付を開始する予定です。
情報社会の高度化に伴い、情報の増大やコミュニケーションの複雑化などからストレスの多い時代と言われており、メンタル疾患による休職者の増加*2)など、さまざまな社会問題にも繋がっています。ストレスを軽減する試みとして、働き方改革などの取り組みがされている一方、マインドフルネスなど内面からストレスに対処する取り組みも注目されています。これらの背景より、NeUでは脳科学の知見と日常環境で脳の活動状態を計ることができるセンサー技術を応用して、ストレス軽減とストレス耐性の向上を目的としたスマートフォン用アプリ「ストレスマネージャー」を開発しました。
マインドフルネスとは、「今この瞬間、心の内面に意識を集中」することを指し、ストレス軽減などの効果が様々な研究*3)によって確認されており、脳科学では、デフォルトモード・ネットワーク(以降 DMN)と呼ばれる脳機能の沈静化が関わっていると考えられています。
今回、NeUが既に開発している小型脳活動センサー(XB-01)を額中央に装着することでDMNの活動状態を計測できることを確認しDMNをモニタリングしながら瞑想をサポートするアプリを開発しました。これによって瞑想の習得と習慣化が行え、ストレス軽減をサポートします。
もう一つ注目し取り入れたのが、バイオフィードバック法を用いたストレス耐性の向上に関する知見です。バイオフィードバック法には従来から、心拍数を見ながら自分の意思で上げ下げするといったトレーニングがありますが、NeUでは超小型脳活動センサーによって、心拍と脳活動それぞれを計りコントロールするトレーニングを新たに開発し、今回のアプリに取り入れました。このトレーニングを繰り返し行い習慣化することによって、ストレス度やストレスホルモンレベルが低下することが東北大学の研究*4)によって確認されています。
ストレスマネージャーでは、毎週1回のセルフチェック機能も搭載して、自分の心の状態や変化に気づくサポートも行います。また日々のトレーニングの記録と合わせて、ストレス軽減の効果も確認することが可能です。
「ストレスマネージャー」の主な特長
(1) DMNの活動レベルをモニタリングしながら呼吸瞑想を行う機能により、瞑想の習得と習慣化をサポート
(2) 心拍と脳活動を自分の意思でコントロールするバイオフィードバック・トレーニングにより、ストレス耐性の向上をサポート
(3) 毎週のセルフチェックや、ログ機能、監修者からの映像コラムにより、ストレスマネジメントの実践と習慣化をサポート
*1) 意識的な活動をしていない時に活発になる神経ネットワークで、様々な考えが自然に浮かんでくる状態。DMNの過活動は脳の疲労やうつ状態との関連も報告されている
*2) 厚生労働省労働安全衛生調査(実態調査)の例では、メンタル不調により連続1カ月以上休職または退職した労働者がいた事業所の割合が、平成24年の8.1%から平成30年の12.5%に増加
*3) 感情制御・不安傾向の改善に関するMenezes C.B. et al., 2013の研究や、マインドワンダリングの低下に関するMrazek M.D. et al., 2013の研究など
*4) Kotozaki, Y., Kawashima, R. et al. 2014. Biofeelback-Based Intervention for Daily Hassles. Brain and Behavior 566-579.
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株式会社NeUについて
会社名 : 株式会社NeU(ニュー)
東北大学の認知脳科学の知見と、日立ハイテクノロジーズの携帯型脳計測技術を軸に2017年8月に設立
所在地 : 東京都千代田区神田司町2-2 新倉ビル
代表者 : 代表取締役CEO 長谷川 清
資本金 : 3.59億円(資本余剰金を含む)
事業内容: 脳科学の産業応用事業
URL : http://neu-brains.co.jp/
補足資料: 「ストレスマネージャー」の特長
特長(1)
DMNの活動レベルをモニタリングしながら呼吸瞑想を行う機能により、正しい瞑想すなわちストレス軽減スキルの習得をサポート
本ソリューションの利用に必要な機器は、小型脳活動センサー(XB-01)と専用アプリケーションによって構成され、アプリケーションはAndroid OS及びiOSに対応予定です。
呼吸瞑想ではDMNの沈静度を計測するために、センサーは額中央・眉の少し上に装着し、スマートフォンなどとペアリングを行うことでリアルタイムにモニタリングを行います。
呼吸瞑想はマインドフルネスなどでも一般的に実践されている瞑想で、呼吸に意識を向けることで周囲からの刺激や雑念を忘れ、脳をリラックス状態に整える効果が期待されています。本アプリでは、DMNの活動状態を脳センサーでモニタリングしながら呼吸瞑想を行うことで、脳の沈静度を確認できより効果的な瞑想を支援します。
瞑想中はDMNの変化トレンドを上昇・並行・下降の3つに分析し、色と音で表示。瞑想終了時にDMNの沈静度と心拍の落ち着き度を数値で指標化してコメントを表示します。
この瞑想を続けて行うことで、ストレスの軽減、集中力の向上、創造的思考や他者への思いやりが促進することが期待されます。
特長(2)
心拍と脳活動をコントロールするバイオフィードバック・トレーニングにより、ストレス耐性の向上をサポート
ストレスを感じる状況で人は、心拍数が上がったり頭が真っ白になったりしますが、それらの生理活動は通常自らの意思でコントロールすることは難しいと考えられています。
しかし、心拍や脳の活動をセンサーでモニタリングし少し練習をすると、自分の意思によりコントロールする「バイオフィードバック・トレーニング」ができるようになり、これを続けて行うことでストレス反応が軽減する、つまり耐性が高まるという知見が東北大学の研究から得られています。主観的にストレスが減るだけでなく、ストレスホルモンが減少する強力なストレスコーピングになります。
本アプリではDMNを計ったものと同じ脳活動センサーを額の左寄り(左背外側前頭前野)に装着し、心拍あるいは脳活動を自分の意思で上下させるトレーニングを行います。
トレーニングでは、センサーの値で上下する画面上の飛行物体を指示通りにコントロールします。練習モードでは、脳活動を上げたり下げたりするイメージの例(Tips)を表示することで、コントロールのコツをつかめるようになります。トレーニングモードでは自分の得意な方法で実践的にトレーニングを進めます。
特長(3)
毎週のセルフチェックや、瞑想とバイオフィードバック・トレーニングのログ機能、監修者による情報提供により、ストレスマネジメントの実践と習慣化をサポート
上記2つの機能を実践することによってストレスの軽減と耐性向上に結び付くと考えていますが、習慣化して継続的に活用して頂くために、自分の状態と変化を把握する「セルフチェック」と、マインドフルな日々を過ごすための理論やスキル情報を取り入れて頂くための「学ぶ」メニューを取り入れました。下図に全体のコンセプト及び画面例を記載します。
なお、本アプリの監修は当社取締役CTOの川島隆太博士(東北大学加齢医学研究所所長)と精神科医で僧侶の川野泰周先生が行っています。
注)画面などは変更される可能性があります。