どこからが編集者で、どこからが編集者じゃないと言えるのか
サンクチュアリ出版 スタッフブログ
【この記事は、サンクチュアリ出版公式HPより日々スタッフの日常や気付き、ひらめき、葛藤、ぼやきや愚痴などを紹介しています】
編集部の橋本圭右です。
本を作りはじめて20年たちますが、
いまだに本作りに慣れることができません。
というか、年々難しく感じてる。
10年ほど前は「編集作業とは綱渡りのようだ」と表現していましたが、
今となっては綱渡りな上に、暗闇だわ、横からバレーボールの大砲が飛んでくるわ、
後方からのタイキック、前方からの蝶野ビンタに耐えながらじりじり進んでいくようです。
つまり本作りって、
いつまでたっても勝ちパターンが見えないどころか、
年々、勝手にレベルが上がっていくからめちゃくちゃ面白いのですが、
おれのようになかなか顧客のニーズがつかむことができず、
整理能力にも著しく欠ける人間の本作りは、
つねに暗中模索のお祭り状態であり、
丸一日大人が目を離したキッズルームのようです。
そしてそんなおれでも本を作れているのは、
ひとえにいろんな関係者たちに迷惑をかけているからであり、
迷惑をかけるとわかっていながら、
無謀にスタートを切るからであり、
この場を借りてお詫び申し上げます。
まず著者さん。
あなたはビックバン、本という宇宙のはじまりです。
ただ爆発してくださるだけでも十分なのに、
おれの無茶なスケジュールに合わせて爆発していただき、
ありがとうございます。
あなたの声がなければなにもはじまりません。
私たちは結局のところ、あなた様の増幅装置にしか過ぎない。
ただ、読者のことを考えると、どんな声でもいい、
というわけにはまいりませんので、
100個していただいた話に対して、たった1個の話にしか反応できないこともあり、
その点、大変申し訳なく思っております。
そしてデザイナーさん。
この世界におけるこの本の役割を教えてくれ、
原稿のパワーにめちゃめちゃ掛け算してくれる人であります。
本という混沌に、ひとたび平和と秩序を与えてくれたにもかかわらず、
締め切りまぎわになって
文字を増やして、とか、この要素を削って、などと軽々しく口にし、
秩序を粉砕する編集者に好印象を持つはずはないでしょう。ああ懺悔。
イラストレーターさんとカメラマンさん。
本の世界観を作ってくださる場合と、
文字では伝わりにくいことを秒でわからせてくださる場合、
あるいはその両方をやってくださる場合がありますが、
おれ、ほとんど「おまかせします」と言った記憶しかなくごめんなさい。
それなのに「きっとこういうことだろうな」と
おれよりも年下でありながら、
理解のある親戚のおじさんのように意図をしっかり汲み、
想像以上のビジュアルを提供してくれるものだから、
ほとんど「おお!」としか言った記憶しかありません。
校正さん。
校正神と呼ばせてください。
プロの校正を見るたび「おれは素人だっけ?」とグラつくほど、
正しい日本語とはなんであるのかを再認識させられます。
編集者ってたぶん、
他の編集者から手取り足取り教えてもらえることは稀なので、
ほとんどの編集者さんは、
校正さんからけっこう大切なことを教えてもらっているんじゃないですか。
それなのに入稿まぎわになって、
こんなに労力のかかる仕事を押し付けっぱなしで、
すごい校正ぶりを見せてもらってるのにお礼も言わずに知らんぷりとは、なんて偉そうな。
本当にいつもありがとうございます。
営業と広報(本のユニットメンバー)。
暗闇の中の、唯一の光源。
対書店さん(営業)、対読者さん(広報)の立場から、
こっちに向かって本を作ったらー?
と遠くからキャディさんのように手を振ってくれる
かけがえのない存在です。
めざす目標(本のコンセプト)を提示されるたびに、
いつも(すげえ遠いな)(そんなところまで飛ばせるわけ)
とめげそうになりますが、おれはとっくにあきらめているのに、
最後まであきらめずに応援してくれて感謝です。
制作と印刷所の人。
デジタルデータという数値の集まりを、
本という物体にできるのは、
他ならぬあなた様のおかげなのですが
しわというしわを寄せまくって毎回しわくちゃにしてしまい、
申し訳なくて直視することができません。
もう無理です、オワテマス、オワタ、
などと再三警告されていたにもかかわらず、
眠りから目覚めると、なぜか入稿できている、
ということはおれが夢を見ている間に、
小人たちが靴を作ってくれていたのかと毎回泣きそうになります。
さて、
ここまで書いて、
一体なにを書いているのかよくわからなくなってきたので、
いったん手を止めたいと思います。
もちろんおれが作った本だけではなく、
どんな本にも、
きっと多くの関係者たちの怒り、呆れ、不安、苦笑、泣き、そして喜びなどのエネルギーが詰まってます。
本だけじゃなく、きっとカヌレとかお米とかスカルプシャンプーとかもそうなんだろう。
今日も感謝していただきたいと思います。
(画像提供:iStock.com/Jinli Guo)