即位の礼「来賓リスト」で世界の中の日本の立ち位置が分かる

日本の国力の激しき凋落

From 藤井 聡(表現者クライテリオン編集長・京都大学教授)

191の外国要人が参列

先週は、大変おめでたい事に、 「即位の礼」が盛大に執り行われ、 改めて、今上陛下がこの令和の時代の 天皇(emperor)であられることが、 全ての日本国民に、 そして、世界の皆様に改めて、 高らかに示されました。

一人の日本国民として、 陛下を、そして皇室を精一杯お守りし 日本国家の繁栄に、 力の限り貢献すべく、 日々精進を積み重ねたい、 との意を新たに致した次第です。

ただ・・・・

今回の「即位の礼」の報道に触れるにつけ、 30年前の平成期に行われた即位の礼と比して、 ご参列戴いた諸外国の賓客の皆様方の 「格」 が、随分と下がっているのではないかと――― 感じました。

そう思ってネットなどを見ておりますと、そのような記事も見られましたので、 改めて、自身でも「確認」致してみました。

「確認」にあたっては、 上記記事と同様のソースを使いまして、 平成と令和の双方に参列戴いた諸外国の賓客の 役職を比較する、という方法を採用いたしました。

にわかに「格上げ」か「格下げ」か 判断がつきかねるケースもありましたが、 「格下げ」と判断できるケース、 「格上げ」と判断できるケースをリストすると、 以下のようになりました。

「格下げ」と思われる国(35か国)
──────────────────────
      平成    令和
──────────────────────
レバノン 大統領     駐日大使
ザンビア 大統領     外務大臣
セネガル 大統領     経済・計画・協力大臣
ガンビア 大統領     国民議会議長
カメルーン 大統領    首相
ジブチ 大統領      首相
モンゴル 大統領     首相
アイルランド 大統領   上院議長
ポルトガル 大統領    前大統領・元首相
キリバス 大統領     インフラ・持続可能エネルギー大臣
ガイアナ 大統領     大統領府付大臣
イスラエル 大統領    駐日大使
ボツワナ 大統領     駐日大使
ボリビア 大統領     駐日大使
ホンジュラス 大統領   駐日大使
メキシコ 大統領     内務大臣
アルゼンチン 大統領   副大統領
インドネシア 大統領   副大統領
パラグアイ 大統領    副大統領
トルコ 大統領      文化・観光大臣
デンマーク 女王     王太子
アメリカ  副大統領   運輸長官
コロンビア 副大統領   外務大臣
ドミニカ  副大統領   外務大臣夫人
ギリシャ 首相      副首相
ジャマイカ 首相     上院議長
カナダ 総督       最高裁判所長官
セントクリスト
ファー・ネイビス 総督  外務・航空大臣
バハマ 副首相      駐日大使
ナミビア 外相     駐日大使
スーダン 革命評議会議長 駐日大使
アルジェリア 憲法評議会議長 駐日大使
ベネズエラ 国会議長   駐日大使
ロシア 最高会議議長   上院副議長
国際連合 事務総長    事務総長官房長
──────────────────────

「格上げ」と思われる国(6か国)
──────────────────────
      平成    令和
──────────────────────
グアテマラ 外相     大統領
シンガポール 首相    大統領
スリランカ 首相     大統領
ニジェール 国民会議議長 大統領
中華人民共和国 国務院副総理 国家副主席
オランダ 皇太子      国王
──────────────────────

(いずれが格下/格上かの判断は、藤井個人が行っていますので、 もし、間違いではないかというご指摘があれば、 是非、お知らせ頂けますと幸いです)

実に35か国が「格下げ」

格上げが6カ国あるものの・・・・実に35カ国において、 「格下げ」となっていた訳です。

・・・誠に無念・・・

折角の陛下の即位の礼に際して、 一国民として、 このような事態となってしまい、 陛下に大変に申し訳なく思います・・・。

・・・ですが・・・
昭和から平成に変わった頃の日本の国力と、 今日の国力を比較すれば、 各国からの
「扱い」
がこうなってしまうのも、 残念ながら致し方無きことと、 言わねばなりません。

何と言っても、 平成期と令和期で 日本の国際的経済力が、「三分の一」にまで凋落してしまったのですから・・・

平成と令和で日本の経済力は「三分の一」に

具体的に申し上げますと、 「平成黎明期」の我が国の経済力は、 全世界の約15%~18%程度を占めていました。

ところが、今日の我が国の経済力は、 全世界の約6%にまで凋落してしまったのです。

もともと、憲法の制約もあり、 我が国日本の 軍事力が「二流」「三流」であり、 外交的には、 「経済力だけが頼みの綱」 だったわけですが、 1997年の消費増税によって、 我が国日本はデフレ-ションという重篤な病を患い、 その結果、衰弱の一途を辿るようになったわけです。

その結果、先に指摘したように 日本経済は、かつての「三分の一」程度にまで、 凋落したのです。

そこまで経済力が低下すれば、 かつて「大統領」を派遣していた国が

「まぁ、日本はもう勢いがないし、 外交で仲良くしておいてもたいしてメリットもないし、 駐日大使でも列席させておけば良いじゃないか」

と判断したとしても、 致し方ありません。

米運輸長官来日の意味

その凋落ぶりが最も現れているのが、 アメリカからの来賓の格下げ、です。

この三十年間、日本は、「けなげ」にも、 国民から何を言われようが、 諸外国からどう侮蔑されようが、 ただひたすらにアメリカに付き従う外交を 展開し続けました。

日本外交は、アメリカ以外を多少蔑ろにしてでも、 対米関係を重視する、という姿勢で、 アメリカ外交を展開してきた筈、です。

・・・・にも関わらず、 平成期には「副大統領」が来日した一方で、 今回の参列者は「運輸長官」だったのです(!)。

つまり、日本にとってアメリカは、 「超大切な国」なわけで、 中国が大国化しつつある今日、 その重要性はさらに拡大し続けているわけですが、 アメリカにとって日本など、 「さして重要ではない国」に 成り下がってしまったわけです。

この「格下げ」問題は、日本国家にとって、 極めて深刻な問題です。

なぜなら、この顛末は、 日本の国際的地位、ひいては、外交力が 大幅に凋落していることを意味しているからです。

そもそも「外交」といえど、 日常の「社交」とその本質は何ら変わりません。

「ある組織・人物のお祝い会」に行くかないかは、 「その組織・人物との関係がどれだけ大事か」 に直接的に依存しています。

その組織・人物が、 自分のビジネスや自身の出世にとって重要であったり、 あるいは、その組織・人物から戴いた「恩義」に 何とか報いたいという気持ちが強ければ、 万難を排して出席しようと考えます。

一方で、そういう気持ちがほとんど無ければ、 適当に代理でもたてておけば良い、と考えるものです。

こう考えれば、 今回、30以上もの国から、 「格下げ」の扱いを受けることになったという事態は、 誰も日本のために、何かをしてやろうとは考えないし、
誰も日本の主張に、耳を傾けてやろうとは考えない、 という状況になりつつあることを示しているのです!

これこそ、「平成の日本政治」「平成の日本外交」に対する、 国際社会からの「客観的評価」であり 「採点結果」なのです。

繰り返しますが、なぜこうなったのかと言えば、 消費増税 → デフレ → 国際的経済力が三分の一に下落 という顛末を迎えたからです。

我が国の政治家各位には、 こうした認識を是非とも持って戴きたいと思います。

そして、経済成長を蔑ろにし、 消費増税だ、緊縮財政だとやっていたことが原因で、 デフレになり、国力が衰退し、 それを通して、 「日本を軽んじる」 国際状況が現出してしまったのです。

ついては、民主党であろうが自民党であろうが、 日本経済を成長させることに失敗した、 全ての政治家に、

「徹底的なる猛省を促したい」

と思います。

なぜなら、政府が現実を直視しなければ、 国家が衰弱していくことは避けられないからですーーー。

そして、 目先の小銭稼ぎのような緊縮財政・消費増税が、 如何に日本の国力を下落させ、 国際的地位を凋落させたのかを、 あらゆる政治家に 是非とも、ご理解戴きたいと思います。

追伸1;
MMTについての筆者からの書籍『MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実』がようやく出版できました。是非、ご一読下さい!

追伸2;
オープンのメルマガではなかなか論じきれない、内容を今、こちらでお話ししております。『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』是非、ご購読ください。

追伸3;
ビルミッチェルを招聘したMMT国際シンポジウム(11月5日@国会議員会館、主催:京都大学レジリエンス実践ユニット)の詳細が固まりました。下記、ご参照の上、是非、ご参加ください。

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