3月8日 国際女性デーを前に書店店頭も盛り上がり  異例の大ヒット小説『82年生まれ、キム・ジヨン』特大パネル登場 「あなたのことばで顔をつくろう」

2019-03-07 17:30

株式会社筑摩書房(所在地:東京都台東区、代表取締役社長:喜入冬子)が2018年12月に刊行したチョ・ナムジュ著『82年生まれ、キム・ジヨン』(斎藤真理子訳)が、アジア文学としては異例の大反響を呼んでいます。刊行後たちまち完売店が続出し、累計発行部数は8万部を突破しました。(2019年3月6日現在 7刷 累計発行部数80,000部)
紀伊國屋書店 新宿本店では、刊行からの販売冊数が1,000冊目前となっています。(2019年3月6日現在 累計販売部数922部)
3月8日の国際女性デーを前にし、店頭には本書の表紙に描かれた顔のない女性の特大パネルの展示が始まりました。パネルには「私たちのことばで顔をつくろう」との呼びかけがあり、早くも読者からのことばが並んでいます。(紀伊國屋書店 新宿本店でのパネル展示は3月15日まで)

紀伊國屋書店 新宿本店 店頭

本書はキム・ジヨン氏(韓国における82年生まれに最も多い名前)の誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児までの半生を克明に回顧していき、女性の人生に当たり前のようにひそむ困難や差別が淡々と描かれています。そして彼女はある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したように振る舞い始め――。彼女を抑圧しつづけ、ついには精神を崩壊させた社会の構造は、日本に生きる私たちも当事者性を感じる部分が多々盛り込まれています。

韓国で絶大な共感から社会現象を巻き起こし100万部を突破、チョン・ユミ、コン・ユ共演で映画化も決定した異例の大ベストセラー小説の邦訳となる本作。青山ブックセンター本店、丸善 丸の内本店、有隣堂 アトレ恵比寿店、紀伊國屋書店 梅田本店など、全国書店の文芸ランキング1位も獲得し始めています。
TwitterやInstagramなどのSNS上では、刊行から3カ月たった今でも「ジヨンは私だ」「これはわたしの物語」との感想が連日上がり、日本でも共感の輪が広がっています。

医大受験における性差別が明らかになり、子ども連れで議会に出席した熊本市議員が不当なバッシングを受ける……。昨年から続く様々な事件を皮切りに、女性が受ける不当な扱いが社会問題として人々の注目を集めつつあります。世界中で巻き起こる#Me Tooムーヴメントを受けて、最近では#KuTooというハッシュタグが生まれるなど、日本でも女性の立場や無意識に強制される風習について声をあげる人々が増えています。読者の反響を受けて、女性たちの声を後押しするようにフェミニズムコーナーを設ける書店が増えつつあります。そんな社会の流れに乗って、本書はまだまだ話題を集めそうです。

MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店 店頭

▲MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店

HMV&BOOKS HIBIYAコテージ フェアパネル

▲HMV&BOOKS HIBIYAコテージ

銀座 蔦屋書店 店頭

▲銀座 蔦屋書店

著者のチョ・ナムジュさんが緊急来日

 トークイベントは450人の定員ををこえる集客に
2019年2月19日には著者のチョ・ナムジュさんが来日され、来日記念として芥川賞作家の川上未映子さんとのトークイベントを行いました。『82年生まれ、キム・ジヨン』と、チョ・ナムジュさんの短編集が収録された『ヒョンナムオッパへ』(白水社)を翻訳された斎藤真理子さん、『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』(タバブックス)の翻訳者の一人である、すんみさんにも登壇いただき、韓国の社会状況について解説していただきながら、これらの作品をどのように私たち自身の問題として考えていけばよいかが話されました。
トークイベントのチケットは告知数日でホール内400席が完売となり、急きょ設けられたライブビューイング席も完売となる盛況ぶりでした。当日の来場者にアンケートを募ったところ100通を超える回答があり、10代から60代までの声が集まりました。

国際女性デー用書店展開パネル

▲アンケートでの回答を元にした国際女性デー用書店展開パネル

この100人のアンケートは、3/8の国際女性デーに筑摩書房特設webで公開予定となっています。
http://www.chikumashobo.co.jp/special/kimjiyoung/

来日トークイベント概要

第291回新宿セミナー@Kinokuniya
『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著/斎藤真理子訳、筑摩書房)、『ヒョンナムオッパへ――韓国フェミニズム小説集』(チョ・ナムジュほか著/斎藤真理子訳、白水社)刊行・著者来日記念
特別対談 チョ・ナムジュ×川上未映子

出演 チョ・ナムジュ、川上未映子、斎藤真理子、すんみ
   通訳:宣善花(ソン・ソナ)、延智美(ヨン・ジミ)
日時 2019年2月19日(火)
会場 紀伊國屋ホール(紀伊國屋書店新宿本店4F)

『82年生まれ、キム・ジヨン』は、もはや<事件>!ひとつの小説が韓国を揺るがす大事態に

『82年生まれ、キム・ジヨン』は、韓国で2016年10月に刊行されました。当初は担当編集者も1万部はいかないと予想していたそうです。しかし1年足らずで10万部を突破することとなりました。本作は、キム・ジヨン氏(韓国における82年生まれに最も多い名前)の誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児までの半生を克明に回顧していき、女性の人生に当たり前のようにひそむ困難や差別が淡々と描かれています。そして彼女はある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したように振る舞い始め――。彼女を抑圧しつづけ、ついには精神を崩壊させた社会の構造は、日本に生きる私たちも当事者性を感じる部分が多々盛り込まれています。 
韓国ではその共感性の高さから、国内だけで100万部突破という異例の大ベストセラーとなりました。
2017年3月8日の世界女性デーに、共に民主党のクム・テソプ議員がフェイスブックを通じて同小説300冊を購入してプレゼントした事実が伝えられたのに続き、正義党のノ・フェチャン院内代表が文在寅大統領の就任記念に「82年生まれ、キム・ジヨンを抱きしめてください」という言葉ととともにこの本をプレゼントしたことで本書のブームに火が付き、国全体に及ぶ社会現象となりました。
K-POPアイドルなど影響力のある芸能人が度々話題にしたことでも注目を集め、ガールズユニット、Red Velvetのアイリーンが本書を読んだと発言したところ、一部男性ファンが「アイリーンがフェミニスト宣言をした」として一斉に反発、アイリーンの写真やグッズを破損する様子を動画投稿サイトに投稿するという事態も起きました。
アイリーンだけでなく、少女時代のスヨンやBTSのRMも『82年生まれ、キム・ジヨン』に言及しています。2018年1月、少女時代・スヨンはYouTubeを介して放送されたリアリティ番組『90年生まれチェ・スヨン』で「読んだ後、何でもないと思っていたことが思い浮かんだ。女性という理由で受けてきた不平等なことが思い出され、急襲を受けた気分だった」と、BTS・RMもNAVERのVライブ生放送を通じて「示唆するところが格別で、印象深かった」と本書にコメントを寄せました。
この反響からついに映画化も決定。主人公キム・ジヨンを演じるチョン・ユミとその夫役、チョン・デヒョンを演じるコン・ユは『トガニ 幼き瞳の告発』『新感染ファイナル・エクスプレス』に続き、3作目の共演となります。キム・ドヨン監督が手がけ、クランクインは2019年上半期に予定されています。
既に台湾でもベストセラーとなり、ベトナム、アメリカ、カナダ、木々リス、イタリア、フランス、スペインなど17ヵ国で翻訳も決定しています。

韓国版原書『82年生まれ、キム・ジヨン』書影

▲韓国版原書『82年生まれ、キム・ジヨン』書影

著者からのメッセージ

日本の読者の皆さんへ
この小説を書きはじめた2015年、韓国では多くの事件がありました。道徳観念のない女性たちが、MERS(中東呼吸器症候群)にかかっているのに隔離を拒否したという噂が流れました。もちろん事実ではありません。女性をばかにする暴力的な言葉を使ったお笑い芸人が番組を降板しました。母親を虫にたとえる「ママ虫」という造語が生まれました。韓国最大のポルノサイトにおいて、盗撮やレイプの共謀などの話題が公然とやりとりされていたことが明らかになりました。
私は、誰も女性だからという理由で卑下や暴力の対象になってはならないと考えてきました。女性たちの人生が歪んだ形で陳列され、好き勝手に消費されていると感じました。女として生きること。それにともなう挫折、疲労、恐怖感。とても平凡でよくあることだけれど、本来は、それらを当然のことのように受け入れてしまってはいけないのです。そういう物語を書きたいと思い、そこから『82年生まれ、キム・ジヨン』という小説は始まりました。
この小説はありがたいことに韓国で多くの読者に出会うことができました。そして、読者イベントやお手紙、ブックレビューを通して読者自身の話を聞かせてもらうこともできました。キム・ジヨン氏より年上の女性たちも、若い女性たちも、この小説はまるで自分の話のようだと言っています。共通する経験、そのときには気づかなかった感情、似ているようで違っているそれぞれの選択……おかげで女性たちの多様な物語が世の中に現れ、大きな意味を持って受け入れられました。
女性たちをとりまく世界は変わりつつあります。Me too運動はハーヴェイ・ワインスタインをはじめ、性犯罪を犯した政界・文化界の大物たちを追い出しました。アイルランドは国民投票によって、妊娠十二週までは制限なく妊娠中絶を許容しました。賃金公開制度を実施する国家が増えています。韓国の女性たちもまた、メディアによる性の商品化を指弾し、家父長的な慣習に叛旗を翻し、自分が経験した性暴力を暴露して厳重な処罰を要求しています。
日本の読者の方々にとっても『82年生まれ、キム・ジヨン』が、自分をとりまく社会の構造や慣習を振り返り、声を上げるきっかけになってくれればと願っています。あなたの声を待っています。
2018年秋
チョ・ナムジュ

訳者あとがきより

『82年生まれ、キム・ジヨン』は変わった小説だ。一人の患者のカルテという形で展開された、一冊まるごと問題提起の書である。カルテではあるが、処方箋はない。そのことがかえって、読者に強く思考を促す。 小説らしくない小説だともいえる。文芸とジャーナリズムの両方に足をつけている点が特徴だ。きわめてリーダブルな文体、等身大のヒロイン、ごく身近なエピソード。統計数値や歴史的背景の説明が挿入されて副読本のようでもある。

伊藤詩織さんからのコメントも到着! 著名人コメント

「次から次に積み上げられる不条理を前に、思わずもっと楽しんで生きようよ、と言ってしまいたくなる人もいるだろう。だから私はあえて言いたい。「これが私たちの日常だけど、なにか?」、と。」
――鳥飼茜

「この本のノンフィクション的書法での女性差別への抗議は一歩先に行ってる。良きベストセラーが国を動かすケースだ。」
――いとうせいこう(Twitterより)

たくさんの私たちに本の中で出会い、時々胸が詰まる思いでした。
――伊藤詩織

「一気に読んだ。登場人物が、理不尽さに甘んじることなく、自らの手で成功を掴んでいく様子は痛快だ。それにしても驚くのは、これが百年前ではなく、現代の物語ということ。もちろん日本も他人事ではない。哀しみと同時に、勇気をもらえる小説だと思う。」
――古市憲寿

「フェミニズムって、実は学問でも思想でもなく、女性たちの日常の中にある。それは生きるものであり、暮らすものだ。ということを小説にしたからこんなにパワフルなんだと思う。日本のキム・ジヨンも読みたくなった。」
――ブレイディみかこ

「女であるということ。たったそれだけで、そのせいで、被らなければならなかった無数の悲しみ、それらを耐えなければと繰り返しこらえ続けた狂おしさが……実は、自分だけのものではなかった、と思えたなら、それだけでもたぶん救いになるんだ。救われるべき人たちに届きますように。」
――温又柔

「小説は語れなかった名もなき感情に言葉を与えることができる。だから、韓国中の女性たちがこの本に熱狂したのだ。自分の中の言葉にならなかった、声に出せなかった感情が、ここにすべて書かれているから」
――星野智幸(「ちくま」2019年1月号書評より)

「つらかった。出来事も感情もわかりすぎてきつかった。女性を取り巻く状況はそう簡単には変わらないだろう。それでも勇気を以て書かれ、刊行された本がここにある。このスタートラインに立って走ろう。一緒に。」
――深緑野分

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書誌情報

『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)
著者 : チョ・ナムジュ
訳者 : 斎藤真理子
刊行日: 2018年12月6日配本 12月8日発売
価格 : 本体1,500円+税
判型 : 四六判並製/ページ数:192ページ/ISBN:978-4-480-83211-5
解説 : 伊東順子/装丁:名久井直子/装画:榎本マリコ
書影 : https://www.atpress.ne.jp/releases/179010/img_179010_2.jpg

『82年生まれ、キム・ジヨン』書影
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