「KPMGグローバルCEO調査2018」について
- CEOの55%が、今後3年間で売上成長率が2%未満と慎重な予測 -
38%のCEOは、ミレニアル世代*1のニーズに合わせて自社のビジネスを再編することを優先している
地政学は経営陣に大きな影響を与え、保護主義的な動きは成長に対する最大の脅威となっている
CEOの半数は、サイバー攻撃の犠牲になるのは避けられないと見ている
*1:ミレニアル世代とは2000年第の初頭に青年期を迎えた世代のことで、具体的には1980年~2000年に生まれた世代を指す。
KPMGインターナショナル(チェアマン:ビル・トーマス)はこのたび、世界の主要11カ国のCEO約1,300人に対して実施した第4回目となる「KPMGグローバルCEO調査2018」の結果を発表しました。
今回の調査では、世界経済および自国への見通しが全体的としては比較的強気であったにもかかわらず、グローバルなCEOは厳しい現実を冷静に見ていることから必ずしも楽観的ではなく、彼らの半分(55%)は自社のビジネスの売上げの伸びについて慎重であるということがわかりました。また、半数(52%)のCEOは、新しいスキルを取り込む前にまず成長目標を達成する必要があると答えています。本調査によると、人口構成の急激な変化、地政学的な不安定さ、将来的に避けられないサイバー攻撃などを背景にしつつも、CEOは成長に向けた取り組みを推進しています。また、CEOはサイバー攻撃という難題に取り組んでおり、特に59%のCEOが顧客データの保護について自らが責任を感じていると回答しています。
KPMGインターナショナル チェアマンのビル・トーマスは、「CEOは、組織を成長に導くために変化という逆風を利用しています。私が話をしたCEOは、地政学的な不確実性、破壊的状況、そしてサイバー攻撃の脅威が今や彼らにとってのニューノーマルであることを認識しています。一番良いのは、この新たな現実によって創出される機会を進んで受け入れ、システム、そして場合によってはビジネス全体を変革していくことです。2018年以降に成長を促進していくためには、CEOが高い経営能力と現実主義を同程度に兼ね備えることが必要です。」と述べています。
「KPMGグローバルCEO調査2018」の主なポイント
2018年の調査では、今後3年間の成長見通しをはじめ、直面する課題や組織を成功へと導く戦略などについて、世界のCEOの洞察をまとめています。主な調査結果は、以下のとおりです。
不確実な世界という難題に挑む
CEOは、成長のためのあらゆる機会を獲得していくために、彼らの企業が将来の消費者に対応した組織に変わっていく際に重要な役割を果たしています。約4割(38%)のCEOが、ミレニアル世代のニーズを満たすように対応していく必要があると回答しました。一方、CEOの約半数(49%)が、自社がサイバー攻撃の犠牲になることは「いつ犠牲になるのか」という問題であって、「もし犠牲になったら」といった仮定の話ではないとしており、サイバー攻撃からはもはや避けられないという意識が高まっています。また、現在の地政学的状況を考えると、今回「保護主義への回帰」が今後の成長に対する最も大きな脅威として挙げられているのは、驚くべきものではないといえます。
日本企業CEOの調査結果
・ミレニアル世代に対応するため、自社のビジネスの再編を行う必要があると回答した日本のCEOはグローバルと同程度で4割(42%)。
・日本のCEOの半数(46%)が、自社がサイバー攻撃の犠牲になるのは「いつか」であって、「もしも」の問題ではないと考えており、グローバルと同じような傾向がみられる。
・自社の成長にとって脅威をもたらすリスクとして、日本企業においても保護主義への回帰が最も多く、日本のCEOの76%が挙げている。日本のCEOは、海外企業のCEOより保護主義政策について懸念していることがわかる。
現実的な成長を促進する
CEOは、マクロ経済環境については楽観的であり、世界経済および自社の業界の成長の見通しについて自信を持っています(それぞれ67%と78%)。彼らはまた、自国の成長についても自信を持っています(2017年から3%ポイント低下しているものの、74%のCEOは自信があると回答)。しかしながら、自社の成長見通しについては、複雑な状況下に置かれていることから慎重な見方をしています。
・CEOの90%が自社の成長見通しについて自信を持っている(2017年から7%ポイント上昇)。
・しかし、今後3年間で人員を6%以上増やす計画を持っているCEOは37%に過ぎない(10%ポイント減)。
・55%のCEOは、今後3年間の売上成長率は2%未満と慎重な予測をしている。
日本企業CEOの調査結果
・日本のCEOの8割以上が、国内外の経済成長見通しについて自信を持っており、その割合は昨年度と比較して大幅に増加。
・日本企業CEOの経済見通しや業界に対する見通しは明るくなったが、今後3年間の自社の売上成長見通しで、2%~5%の成長を見込む日本のCEOは、昨年は6割だったのに対して、今年は5割に減少した。一方、2%未満の売上成長を見込むCEOが昨年の約3割から今年は5割弱に増加。自社の成長率に関しては保守的な見方をしている。
デジタルを自らの問題と捉える
CEOは、かつてないほどデジタル関連の課題を抱えており、データと信頼性について自らが責任を持って対応していることがわかりました。
・71%のCEOは、率先して抜本的な組織変革を推進する準備ができている。
・59%のCEOは、顧客データ保護の問題を自らの重要な責任と考えている。
・一般的な意見に反して、62%のCEOは人工知能(AI)の導入によって雇用が奪われる以上により多くの雇用が創出されることを期待している。
日本企業CEOの調査結果
・「AIの導入によって雇用が奪われる以上により多くの雇用が創出されることを期待している」と回答した日本のCEOは、海外企業と同様に多く、その割合は60%。
・「顧客データの保護について、自らの重要な責任」と考えている日本のCEOの割合は42%で、海外企業のCEOと比べると17ポイント低い。
・「自社の経営モデルの抜本的な変革を率いていく準備が個人的にできている」と回答した日本のCEOは47%。海外企業のCEOと比較すると、準備できていると回答した日本CEOの割合は低い。
事実よりも洞察を重視する
顧客の要求が絶えず変化し、かつテクノロジーの状況が常に流動的な中、機動性と洞察は非常に重要となります。
・59%のCEOが、経営の機動性が企業の存続を左右すると考えており、対応が遅ければ破綻すると見ている。
・半数以上(51%)のCEOは、過去データの分析と比較して、予測分析の正確性は低く、ソーシャルメディアの情報源が最も信頼性が高いと感じている。
・CEOの67%は、過去3年間に戦略的決定を下した際、データに基づく洞察よりも、自分の洞察に頼ったことがあると認めている。
ビル・トーマスは、「データは非常に重要だが、最終的にはCEO自身が大きな決断をしなければなりません。そのため、経験値と洞察力が依然重要であるということは明らかです」と述べています。
日本企業CEOの調査結果
・信頼できる情報源として、「ソーシャルメディア」を挙げた日本のCEOは60%と、海外企業のCEOより低く、他の情報源に比べると信頼されていない。一方で、「政府が提供するオープンデータ」(68%)や「旧来のメディア」(65%)を信用している日本のCEOは多い。
・「経営の機動性が企業の存続を左右する」と考えている日本のCEOは、海外企業のCEOよりさらに高く84%で、海外企業のCEOよりも経営の機動性を重要と考えていることがわかる。
・しかしながら、日本の企業は、「抜本的な変革を率いていく準備ができている割合」が海外企業よりも低い。「業界における技術革新のスピードへの対応に苦慮している」割合においても海外企業が36%に対して、日本企業は73%とその数値には大きな差があり、CEOの意識と現実の行動や準備状況に乖離があることがわかる。
サイバーセキュリティへの脅威が増大
サイバーセキュリティへの脅威が常に存在するリスクはより注目されており、将来的な成長を阻害するリスクは何かという設問において、今年はその順位が5位から2位へと上昇しました。半数以上(55%)のCEOが、強固なサイバー戦略が主要なステークホルダーとの信頼関係を構築する上で重要だとしていますが、サイバー攻撃に対する準備がきちんと整っていると回答したのは半数(51%)程度しかいませんでした。
日本企業CEOの調査結果
・サイバー戦略がステークホルダーと信頼関係を構築する上で重要と考えている日本企業のCEOは65%。海外企業のCEOよりその割合は高く、日本企業においてサイバーセキュリティを戦略的優先事項として捉えている傾向が強いことがわかる。
・しかし、日本企業のCEOで「サイバー攻撃に対する準備ができている」と考える割合は33%で、海外企業と比較しても準備できていない企業が多い。
日本企業が成長を加速するためのカギ
日本のCEOは、経営の機動性を高め、成長を加速するための方法として、外部との連携や人工知能(AI)の活用を重視しています。さらに、コア人材としてのデータサイエンティストの活用が今後の成長のためのカギになると考えています。
日本企業CEOの調査結果
・「自社が必要とする経営の機動性を実現するための唯一の方法は、第三者との提携強化」と考えている日本のCEOの割合は72%と海外企業のCEOより19ポイント高い。
・日本のCEOは、「人工知能(AI)の活用が今後3年間に組織にもたらす効果」として「経営の機動性の向上」(43%)、「利益成長の加速」(42%)、「データガバナンスの向上」(42%)を上位に挙げており、経営のスピードや成長の加速のために、人工知能(AI)の活用に期待を寄せていることがわかる。
・自社の将来の成長計画を後押しするための重要な人材としては、「データサイエンティスト」が最も多く挙げられており、日本のCEOの74%が挙げている。2番目に多い「新興市場の専門家」に比べて、大きな差があった。
・成長目標を追求するために今後3年間に予定している施策として、日本のCEOは「第三者のデータプロバイダーとの連携」を最も多く挙げている(62%)。 今後、第三者のデータプロバイダーと連携しながらビッグデータの積極的活用を推進していこうとするCEOの姿勢が読み取れる。
*1:ミレニアル世代とは2000年第の初頭に青年期を迎えた世代のことで、具体的には1980年~2000年に生まれた世代を指す。
KPMGグローバルCEO調査2018に関する情報については、kpmg.com/CEOoutlookのサイトをご覧ください。また、ハッシュタグ「#CEOoutlook」を使用して、Twitterアカウント「@KPMG」でのツイートをフォローいただけます。
日本企業分析の速報版はこちらから( https://www.atpress.ne.jp/releases/157033/att_157033_1.pdf )ご覧いただけます。
「KPMGグローバルCEO調査2018」について
本調査は、主要11ヵ国(オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、オランダ、スペイン、英国、米国)および11業界(投資運用、自動車、銀行、小売/消費材、エネルギー、インフラ、保険、ヘルスケア、製造、テクノロジー、通信)におけるCEO1,300人からの回答に基づいて実施しました。回答企業は業務収入が5億米ドル以上の企業であり、うち3分の1が業務収入100億米ドル以上となっています。この調査は、2018年1月22日から2月27日の間にかけて実施しました。
注) いくつかの数値に関しては四捨五入を行っているため、必ずしもその合計が100%にならない場合があります。
KPMGインターナショナルについて
KPMGは、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供するプロフェッショナルファームのグローバルネットワークです。世界154ヶ国のメンバーファームに約200,000名のプロフェッショナルを擁し、サービスを提供しています。KPMGネットワークに属する独立した個々のメンバーファームは、スイスの組織体であるKPMG International Cooperative(“KPMG International”)に加盟しています。KPMGの各メンバーファームは法律上独立した別の組織体です。日本におけるメンバーファームは、次のとおりです。
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