乳がんになりやすくなるって本当ですか? 「発がんリスク」に答えます
美容クリニックで念願のバストアップ!でも乳がんのリスクが高くなるってウソ?ホント?
豊胸とがんの関連性について、マイナスなイメージのウワサを耳にすることがあると思います。豊胸術を受けるとがんになりやすいとか、がん検診が受けられなくなるとか……。
真偽のほどは明確になっていない部分もありますが、日々、豊胸術の施術を行っている医師として、お話できることを伝えていこうと思います。
これを読んで、安全な豊胸術を知っていただき、安心して理想のバストを手に入れるきっかけになることを願っています。
シリコンバッグと乳がん、検診について
マンモグラフィ検査が難しくなる
豊胸術を受けると、乳がん検診を受けづらくなるという話はよく耳にすると思います。
これは事実でありますが、すべての豊胸術で乳がん検診が難しくなるわけではありません。もっとも乳がん検診に影響を与えるのは「シリコンバッグ挿入法」です。
40歳以上の人に推奨されるマンモグラフィー検査は、シリコンバッグが入ったままで受けるのは危険です。撮影時にバストをかなりの強さで圧迫しますから、バッグが破損する可能性があるのです 。そこで、多くのクリニックや健診機関では、シリコンバッグが入っている場合、マンモグラフィーの撮影を断る場合が多いようです。
乳腺クリニックや美容クリニックによってはバッグが入ったままマンモグラフィを行ってくれるところもありますが、バッグに隠れた病変を見逃す可能性もあるので、南クリニックではおすすめしていません。
超音波やMRIにも映ってしまうシリコンバッグ
マンモグラフィ以外の検査でも、シリコンバッグは検査の邪魔になる場合があります。超音波やMRIでもバッグは映りますから、小さな変異を見つけにくくなる可能性があるのです。
検査にバッグが映ることで豊胸がバレてしまうからと、乳がん検診を受けない女性もいるようですが、乳がんは早期発見での治癒率が非常に高いがんでもあります。
堂々と「豊胸しています」と言う覚悟のある人に、シリコンバッグ挿入法は選択して欲しいと思います。
古いシリコンバッグを入れたままにしておくのは危険
シリコンバッグを入れたことで乳がんになる確率が高くなる、ということは証明されていませんし、そのようなことはないと思います。
唯一、「ブレストインプラント関連未分化大細胞型リンパ腫」(BIA-ALCL)と呼ばれるがんの一種が、シリコンバッグが原因で発生する可能性があると報告されていますが、10年以上、同じバッグを入れていた場合の症例報告になりますので、10年以内で入れ替えたり抜去すれば問題ないと考えられます。
もちろん、古くなったシリコンバッグをそのまま留置しておくのは危険を伴うことがありますから、注意してください。
脂肪注入と乳がん、検診について
乳がんと誤診される「しこり」の形成に要注意
患者さん自身の脂肪をバストに注入して大きくする「脂肪注入法」は、比較的安全な印象があると思います。しかし、乳がん検診の妨げになるような副作用が起こる可能性があることは覚えておいてください。
というのも、脂肪を注入したあとのバスト内で、しこりが形成されてしまうことがあるのです。
一度、体から取り出した脂肪細胞は、血液の供給を遮断されています。栄養や酸素が入ってこなくなると、脂肪細胞はあっという間に壊死してしまいます。壊死した細胞が集まったものがしこりとなってバスト内に残留すると、乳がんと誤診されることがあるのです。
乳がん検診でしこりが見つかると、たとえ「豊胸をしています」と伝えたとしても、放っておいてよいものか、がんのリスクを伴うものか精密検査をしなければなりません。
精密検査はバストに針を刺すなど、患者さんにとって負担の大きいものです。ですから脂肪注入によるしこりは、つくらないに越したことはありません。
こうした事態を避けるには、脂肪の加工を丁寧に行い、注入時には少しずつ散らしながら入れる技術が必要になります。脂肪がバスト内で生き続けられる確率を「生着率」と呼びますが、最低でも7割以上、できれば8割以上の脂肪が生着できるように工夫されている美容クリニックを選ぶようにしてください。
乳がん治療後の、乳房再建に役立つ脂肪注入法
乳がんの患者さんが乳房を切除した場合、施術後のバストをどうするかというのは大きな問題です。
もっとも単純なのはシリコンバッグを入れる方法ですが、バッグには寿命があり、10年くらいで入れ替えが必要になってしまいます。そのため、最近、人気となっているのが脂肪注入法でバストを再建する方法です。もともとのバストの大きさや、がんで切除した部位によっては人工物を利用せざるを得ない場合もありますが、患者さん自身の脂肪を移植することで、安心した乳房再建が叶います。
ヒアルロン酸と乳がん、検診について
ヒアルロン酸にはがんの抑制と発生の作用がある!
ヒアルロン酸ががんを誘発するという話題が世界的に流れ、一時、美容クリニック業界を震撼させました。日本でも「予後不良なトリプルネガティブ乳がんに、ヒアルロン酸が関与している可能性がある」と発表され、美容クリニックの医師たちが頭を抱える事態となりました。
しかし、十分に精査していくと、「ヒアルロン酸にはがんの抑制と発生、両方の作用がある」という報告であることがわかりました。
つまり、健康な人であれば、ヒアルロン酸でがん発生の可能性が高まることはないので安心してください。
しこりをつくらないためには丁寧な注入が必須
ヒアルロン酸と乳がんの関係で注意したいのは、しこりや石灰化によってがんとの誤診が起きやすくなる点です。
ヒアルロン酸注入法は手軽な印象があると思います。一時的な豊胸ということもあり、美容クリニックでもリーズナブルな料金で施術を提供している場合があります。
そうなると施術を短時間で、しかも経験の少ない医師に任せるようなケースが生まれてくるのですが、これがヒアルロン酸注入によってしこりが発生させてしまう原因になります。
本来、ヒアルロン酸を注入するには、できる限り細いカニューレを使い、ヒアルロン酸が1カ所にかたまらないようにしなければなりません。しかし、時短ばかりを優先すると、太いカニューレで一気に挿入するようになってしまいます。
これによってヒアルロン酸がかたまりをつくり、しこりを形成する結果を招きます。
乳がん検診がスムーズに行えるようにするためにも、ヒアルロン酸を入れる際には、丁寧に注入してくれるクリニックを見つける必要があるでしょう。
成長再生豊胸と乳がん、検診について
乳がん検診を安心して受けられる成長再生豊胸
ここまで紹介した豊胸術のいずれも、直接がんの発生と強く結びつくことはありません。しかし、乳がん検診でのリスクは少なからずあることがおわかりいただけたと思います。
では、乳がん検診で困らない豊胸術を選ぶにはどうしたらよいのでしょうか。
南クリニックでは「成長再生豊胸」をおすすめしています。
成長再生豊胸は異物を入れるわけでも、脂肪を移植するわけでもありません。今、ご自身のバストのなかにある脂肪を分化させて増殖させ、今ある乳腺を発達させることでバストの中身を増やす方法です。
この方法であれば、乳がん検診はナチュラルなバストとして受診することができますし、何かを入れるわけではありませんから、豊胸によってしこりが形成される心配もありません。
成長再生豊胸の前にがん検診を受けておこう
がんの発生リスクについて心配される人がいるのですが、現状のバストにがん細胞がなければ、成長再生豊胸を実施することでがんのリスクが高まることはありません。
ただし、万が一、すでにがんができていた場合には、がん細胞を増殖させて、病期を進行させてしまう危険があります。必ず、事前にがん検診を受け、がんの疑いのない状態で成長再生豊胸を受けて欲しいと思います。
そこさえクリアしてもらえれば、成長再生豊胸は豊胸を行っていないときと同様の生活、そしてがん検診を受けられる、唯一の豊胸術だと言えるでしょう。
南クリニック院長:南晴洋
京都第二赤十字病院形成外科勤務、大手美容外科院長を経て1997年 南クリニック開業。創業以来、豊胸に力を入れている。注射で豊胸を行う「成長再生豊胸」を海外の学会でも発表。