右肩下がり時代をのびのび生きるコツは 過疎の被災地のじいさんばあさんが知っている! 書籍『「みんな」って誰?』を刊行

学術出版社の世界思想社(京都市左京区)は、『「みんな」って誰?』を刊行します(10月23日発売予定)。状況が良くなることが想像しにくいなかで、どうしたらのびのび生きられるのかを、人口減少・高齢化が進むなか被災した方たちから学ぶ本です。

書影

●逆境から空気が変わるしくみを解明
もともと、少子高齢化の進んだ地域を地震が襲い、諦め感や無力感がただよう被災地。さまざまな取り組みのうちに空気が変わり、やがて、被災した人が「復興した」「過疎が止まった」と胸をはるようになりました(人口減少も高齢化もいっそう進んでいるのに)。ここに、右肩下がりの時代をすこやかに生きていくヒントがある、と著者は言います。

アンデルセンの「はだかの王さま」や、柳田國男の『遠野物語拾遺』のエピソードもとりあげて、「みんな」(=空気)がどうやって変わるのか、自分がどうやって変わるのか、そのメカニズムを解明し、わかりやすく伝えています。

●MBAの土台グループ・ダイナミックスの実践的活用
MBAカリキュラムにも組み込まれているグループ・ダイナミックスの土台となる考え方を紹介し、組織や地域での変化を促進するための具体的なツールと方法を提供しています。内発的なプロセスを重視し、外部に頼らない持続可能な活性化が可能になります。

●「地域おこし協力隊」制度のモデルとなった災害復興のリアルな事例
新潟県中越地震の復興プロセスをエスノグラフィを通じて詳細に描写し、実際の現場での取り組みや課題をリアルに伝えています。著者自身、学生ボランティアや中間支援組織「中越復興市民会議」のスタッフとして活動に参加した経験に裏打ちされた、支援の空回りや絶望から前向きへの空気の変化の記述は説得力があります。深く分析して、他の問題や他の地域にも共通する原理・法則を抽出しているので、ソーシャルデザインや村おこしに役立ちます。

●10月23日で新潟県中越地震から20年
奥付発行日は、新潟県中越地震が起きた2004年10月23日からちょうど20年としています。20歳の大学生が、地域の魅力に惹かれ住みつき、村人たちと交わりながら20年にわたって実践と研究をおこなってきた物語としても読めます。

●対話形式での読書体験
問いかけを通じて読者が自分自身の考えを深める形式をとっています。単なる受け手としてではなく、能動的に本の内容に関与することができます。

読者に考えることを誘うイラスト

●目次
はじめに
序章  はだかの王さま再考
    ――みんなのグループ・ダイナミックスとは?
第1章 右肩下がりの被災地で復興にのぞむ
    ――新潟県中越地震のエスノグラフィ
第2章 支援がつまずくとき
    ――「めざす」かかわりと「すごす」かかわり
第3章 地域が自ら変わるには?
    ――内発的であるということ
第4章 集団を変化させるには?
    ――みんなの前でことばにする
第5章 見なかったことにしないとすれば?
    ――集合的否認と両論併記
終章  ひとごとからわれわれごとへ
    ――災間を豊かに生きる

おわりに

●プロフィール
宮本匠(みやもと たくみ)
1984年大阪府生まれ。町工場の横に積みあがる金屑と機械油と田んぼの土のにおいが入り混じった東大阪の空気を吸って育つ。大学時代、古本屋と中古レコード屋を渉猟する毎日から、ひょんなことで新潟の被災地で山菜を探す日々に。すがすがしく今を生きるヤマの人々にすっかり魅せられて、世の中の人が「問題」と考えている見方だけではない「問題」とのつきあい方を被災地や過疎地をフィールドに研究する。博士(人間科学)。大阪大学大学院人間科学研究科准教授。特定非営利活動法人CODE海外災害援助市民センター副代表理事。ユーモアとペーソスが同居するものが大好物。水道の蛇口から井戸水の出る大阪北部で三児の子育て中。
主な著書に、『現場でつくる減災学』(新曜社、矢守克也と共編著)。『防災・減災の人間科学』(新曜社、矢守克也・渥美公秀編著、近藤誠司と共著)。

著者近影

●「はじめに」より抜粋
「世の中これからどうなるんだろう」「日本社会の未来って、なんだか不安だなあ」そんな気持ちをいだくことはありませんか? はじめからそんな不景気な話やめてくれよと思ったあなた、ちょっと待って。この本は、そんな不景気な話を景気のよい話でごまかすのではなくて、世の中が右肩下がりになっても、それでも気持ちよくのびのび生きていくことができるとしたら、それはどのようにできるか考えるために書きました。

ヒントをくれるのは、災害に見舞われた被災地。それも、災害がおきる前から、人口減少や高齢化が進んでいて、災害からの復興にあたっても、明るい未来を描くことが難しかったような被災地です。被災地では、最初は、もうだめなんじゃないかという諦(あきら)め感や無力感がただよっていました。けれど、さまざまな取り組みのうちに、雰囲気が変化していきます。やがて、人口減少がとまったわけでもないし、高齢化もいっそう進んでいるのに、被災した人が「復興した」「過疎がとまった」と胸をはるようになりました。それはなぜなのか。ここに、右肩下がりの時代をすこやかに生きていくヒントがあると思います。

ですから、この本はたしかに過疎が進む被災地での災害復興の現場をおもにあつかっているのですが、そこから考えたいのは、災害復興のことだけでなく、右肩上がりに「よくなっていく」ことが想定しづらいことがらについて、私たちがどのように向きあえるのかです。

(webマガジン「せかいしそう」で、「はじめに」を全文読めます)
https://web.sekaishisosha.jp/posts/8261

書籍概要

書名  :「みんな」って誰?――災間と過疎をのびのび生きる
判型  :四六判
頁数  :208頁
価格  :1,870円(10%税込)
ISBN  :978-4-7907-1794-2

「教養みらい選書」シリーズ概要

世界思想社という社名には、世界のあらゆる思想を受け止め、学問と教養を推進し、平和な世界を築くという、創業時の思いが込められています。その原点に立ち返り、「教養みらい選書」を創刊しました。
教養というと、従来は一部のエリート、つまり支配層のものというイメージが強かったと思いますが、これからはもっと身近なものであるべきです。若い人が将来を切り開く助けになる、近未来の社会に生きる教養や知恵を身近なテーマから学ぶ本を発信しています。
本を読んだことない人でも読めるようにわかりやすく、歯ごたえのある内容をお届けしています。

●シリーズ既刊書
001『僕がロボットをつくる理由』石黒浩
『週刊エコノミスト』で紹介。

『僕がロボットをつくる理由』

002『食べることの哲学』檜垣立哉
『毎日新聞』『朝日新聞』で紹介。2022年共通テスト/国語で出題。

『食べることの哲学』

003『感性は感動しない』椹木野衣
『朝日新聞「折々のことば」』『読売新聞』『週刊東洋経済』『週刊エコノミスト』『ブレーン』『美術手帖』などで紹介。

『感性は感動しない』

004『音楽と出会う』岡田暁生
『朝日新聞「折々のことば」』『週刊新潮』『週刊文集』『産経新聞』『音楽の友』『レコード芸術』などで紹介。

『音楽と出会う』

005『賀茂川コミュニケーション塾』谷口忠大
『読売新聞』『京都新聞』で紹介。

『賀茂川コミュニケーション塾』

006『二枚腰のすすめ』鷲田清一
NHK『ひるまえほっと「中江有里のブックレビュー」』『朝日新聞』『読売新聞』『週刊新潮』『日刊ゲンダイ』などで紹介。

『二枚腰のすすめ』

007『人、イヌと暮らす』長谷川眞理子
『日本経済新聞』『東京新聞』『京都新聞』『Voice』で紹介。

『人、イヌと暮らす』

008『居場所のなさを旅しよう』磯前順一
『朝日新聞』「折々のことば」、『読売新聞』『西日本新聞』などで紹介。

『居場所のなさを旅しよう』

会社概要

法人名 :株式会社 世界思想社教学社
創業  :1948年(昭和23年)
代表者 :代表取締役 上原 寿明
所在地 :〒606-0031 京都市左京区岩倉南桑原町56
事業内容:学術専門書・教養書の出版および大学受験参考書・
     問題集を中心とする教育図書の出版

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