日本初!グリーンエネルギーとIoTを活用したエビ養殖に挑戦
-- NEDO「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」の 実証運転を7月より開始 --
裕幸計装株式会社(代表取締役会長:太田 隆三)、国立大学法人九州大学(i)(総長:石橋 達朗)、学校法人工学院大学(学長:今村 保忠)、株式会社インターネットイニシアティブ(代表取締役 社長執行役員:勝 栄二郎、以下 IIJ)は、ベトナムにおける環境汚染の原因のひとつであるエビ養殖汚泥を活用し、温室効果ガス削減や電力の安定供給などを目指す「省エネ型エビ養殖統合システム」を開発し、その実証運転を開始します。本実証は、裕幸計装が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」(ii)の助成を受け、九州大学、工学院大学、IIJが委託先として参画し、実施するものです。
本実証は、株式会社三菱総合研究所をはじめ(iii)、日越の研究機関・民間企業より技術支援を受け実施されるものであり、両国間の産学連携を通じ、日本の先進技術がベトナムの主要産業であるエビ養殖業に大きく貢献することが期待されています。
省エネ型エビ養殖統合システム導入により、ベトナムのエビ養殖の効率向上を実現
ベトナムの主要産業であるエビ養殖は、電力の供給不足や、養殖汚泥による周辺土壌・地下水の汚染、温室効果ガスの発生、養殖池での病気蔓延など複合的な課題を抱えており、エビの大量死や周辺地域の環境汚染を低減する低環境負荷型システムへの転換が急がれています。
これらの課題を解決すべく、「循環型エネルギー創出ユニット」と「エビ増産ユニット」から成る「省エネ型エビ養殖統合システム」を開発しました。
「循環型エネルギー創出ユニット」では、養殖汚泥とレモングラスの加工廃棄物を混合・発酵させ、生成されたバイオガスを、固体酸化物形燃料電池(SOFC)に燃料として供給することで発電を行います。発電した電気は、曝気装置など養殖設備に使用されるため、循環型の創エネ技術であるといえます。当該システムは、カーボンニュートラル2050(iv)を目指すとしている日越両政府の取り組みに貢献するものです。
IoTによる「エビ増産ユニット」では、IoTデバイスを使い、溶存酸素濃度、pHなどをセンサーで計測するほか、IoTプラットフォームを設計、養殖池の水質データに加え、バイオガス発酵槽とSOFCの状態監視などを含むデータの保存、可視化を行い、データの閾値監視やアラート通知機能などのシステムを構築することで、養殖環境とエビの育成状況との相関性を分析します。エビにとって最適な養殖環境を見出し、養殖効率向上を目指します。
実証期間は2024年7月から2025年6月まで、ベトナム南部ティエンザン省にて実施予定で、単位養殖池(1,000m3)あたり年間約40t-CO2の削減、およびエビ生残率85%(年間平均生残率57%)という成果を見込んでおります。
ベトナム全土のエビ養殖場への展開を期待
従来の養殖手法を行っている養殖事業者に、本システムを導入した場合、単位収穫重量あたり最大90%以上のCO2排出量削減が期待できます。
また、エビ養殖の効率が向上することによる養殖事業者の売上増加や、これまで川や海に垂れ流しされてきた養殖汚泥をエネルギー源として有効活用することによる環境改善など、ベトナム社会におけるエビ養殖業を取り巻く課題解決へ大きく貢献することにも繋がります。
メコンデルタ地域だけでも約5万社のエビ養殖事業者があるといわれ、本システムの活用により、ベトナムにおける大幅な経済効果もさることながら、世界有数のエビ消費国の日本にとって、より品質のよいエビの流通が可能になるという成果還元も期待できます。
各社の役割
- 裕幸計装株式会社
事業者として、事業におけるシステムの設計・構築、現場管理、ベトナム政府関係者との折衝、委託先および外注先関係者との調整など、事業全体を総合的に統括する立場にあります。
- 国立大学法人九州大学
エビ養殖の汚泥と近隣の未利用有機物であるレモングラス製油工場から出る抽出残渣を用いた効率的なメタン発酵法の確立を目指しています。また、1,000m3池での超高密度飼育で高い生残率を達成するために必要な要素技術を確かめるための試験をカントー大学、ならびに実証サイトで実施しています。
- 学校法人工学院大学
途上国で燃料電池の普及に貢献できる人材を育成している先進工学部機械理工学科白鳥 祐介教授が、エビ養殖に燃料電池を導入した循環型モデルの発案者として、バイオガスで作動する燃料電池技術の確立に携わっています。
- 株式会社インターネットイニシアティブ
エビ養殖における生産性向上において、IoTデバイスを使って養殖池の溶存酸素やpHなどの水質を計測します。また、IoTプラットフォームを設計、構築し、養殖池の水質データに加え、バイオガス発酵槽とSOFCの状態監視などを含むデータの保存、可視化を行うほか、データの閾値監視やアラート通知機能などのシステムも提供します。
※本プレスリリースに記載されている社名、サービス名などは、各社の商標あるいは登録商標です。
i 九州大学が先行研究として、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)で実施された「高効率燃料電池と再生バイオガスを融合させた地域内エネルギー循環システムの構築」を実施しました。
ii この助成事業は、3E+S(安定供給、経済性、環境適合、安全性)の実現に資する日本の先進的技術を海外で実証し、技術の普及に結び付けること、さらに、制度的に先行している海外のエネルギー市場での実証を通じて、日本への成果の還元を目指すことを目的としています。裕幸計装は、NEDOの「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」の一環として「地域のバイオマスを利用した省エネ型エビ養殖システム高度化実証研究」を提案し、2021年9月に助成事業として採択されました。
iii 本事業の外注先として、IoTデータ分析を担っています。
iv 日越両政府は、2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指すと表明しました。