【MOVIE】キム・ボラは、やさしい “はちどりタイム”という透明で濃密な時間
2020-06-19 12:10
Written by : 相田冬二
2時間18分。と聞くと、新人監督らしい勇み足、もしくは、思いの丈を詰め込みすぎ、との先入観を抱く映画好きもいるかもしれない。 つまり、長すぎるのではないかと。まったく長くはない。かといって、あっという間に過ぎるわけでもない。
透明だが、濃密。「はちどりタイム」と呼ぶより他はない、そのオリジナルな時間感覚がまずはキム・ボラ監督の才能を証明している。
1994年、ひとりの中学生少女の体験を、あらゆる角度から捉える。母、父、姉、兄、同級生、ボーイフレンド、後輩、そして、塾の女性教師。少なくともこの8人に関しては、ほぼ等価の割合で描かれていることに驚嘆する。連続ドラマなみの情報量が、わずか138分におさまっている。それでいて、駆け足にも、ダイジェストにも陥ることなく、蜜のように深い味わいが持続する。この卓越した合理主義の発明は、無論、冷徹な視点が支えている。
重要な点は、これがエピソードの羅列ではなく、すべて関係性の提示になっていることだ。つまり、主人公と8人は、すべて個と個として…
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