ラン藻の乳酸生産に重要な酵素の機能改変~1つのアミノ酸を変えて~

要旨
 光合成を行う細菌であるラン藻の一種シネコシスティス注1)は地球温暖化の原因物質である空気中の二酸化炭素を取り込み、様々な有用物質の生産に利用することができます。中でも乳酸やコハク酸といった有機酸注2)は、再生可能なバイオプラスチックの原料として利用することができます。自然界にある乳酸は二種類あり、それぞれL-乳酸とD-乳酸と呼ばれていますが、L-乳酸の方がはるかに多く存在します。しかしながら、乳酸が集まってできるポリ乳酸というバイオプラスチックは、ポリ-L-乳酸とポリ-D-乳酸を混合することで、物性が向上するため、自然界で不足しがちなD-乳酸の需要は高まりつつあります。
D-乳酸生産に重要な酵素としてD-乳酸脱水素酵素(Ddh)があります。研究グループは、D-乳酸を生産するラン藻シネコシスティスがもつDdh(以下SyDdh)の性質を調べ、さらなる有機酸増産に向けた機能改変を行いました。
性質を調べた結果、SyDdhは他の細菌由来のDdhとは異なり、マグネシウム存在下で活性が低下する酵素であることが分かりました。また、一般的にDdhはピルビン酸を基質とする酵素ですが、SyDdhはピルビン酸と構造が類似しているオキサロ酢酸という化合物も基質にできることが分かりました。これらの性質を決定しているアミノ酸を特定するために、他の細菌や他のラン藻のDdhとの構成アミノ酸の比較を行いました。その結果、それぞれSyDdhにおける14番目と234番目のアミノ酸が特徴的であることが分かりました。そこで、それぞれのアミノ酸の役割を知るために、14番目のアミノ酸をグルタミンからグルタミン酸に置換したSyDdh(SyDdh_Q14E)、234番目のアミノ酸をセリンからグリシンに置換したSyDdh(SyDdh_S234G)を作製し、性質を調べました。SyDdh_Q14Eはマグネシウムによって活性化され、SyDdh_S234Gではピルビン酸ではなく、オキサロ酢酸に対してより特異的に活性を示すようになりました。
このように本研究では、乳酸生産に重要なDdhという酵素の性質が1つのアミノ酸を置換することで変化することを明らかにしました。
この研究は、明治大学 農学部 農芸化学科 伊東 昇紀(学部4年生)、小山内崇(専任講師)らのグループによって行われました。この研究は、JST戦略的創造研究推進事業先端的低炭素化技術開発ALCA(代表小山内崇)およびJSPS科研費新学術領域研究「新光合成」(領域代表基礎生物学研究所皆川純教授、計画班代表大阪大学清水浩教授)の援助により行われました。
本研究成果は、2017年11月8日(英国時間)発行の英国の科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。
           
※研究グループ
明治大学 農学部農芸化学科 
環境バイオテクノロジー研究室
専任講師 小山内 崇(おさない たかし)
学部4年生 伊東 昇紀(いとう しょうき)
博士前期課程1年生 竹屋 壮浩(たけや まさひろ)

▼詳細については、以下リンク先をご覧ください
https://www.meiji.ac.jp/koho/press/2017/6t5h7p00000pmv9h.html


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