イタリア国立衛生研究所、FPP(パパイヤ発酵食品)による メラノーマの増殖抑制効果を確認  ~がんのリスク軽減が期待される「発酵食品」~

2019-04-12 10:00

大里研究所(所在地:岐阜県揖斐郡、理事長:林 幸泰)は、イタリア国立衛生研究所(Istituto Superiore di Sanita:ISS)のステファノ・ファイス教授らの研究において、FPP(パパイヤ発酵食品)によるマウスのメラノーマ(悪性黒色腫)の増殖抑制効果が確認されたことを報告します。本研究成果は、2019年1月20日、学術研究誌「Cancers」で発表されました。

【図2】対照マウス(コントロール)および FPPを毎日摂取したマウス(FPP摂取開始から21日後 (A)、14日後(B)、3日後(C)にメラノーマを移植)との比較

長期にわたる酸化ストレスは、腫瘍の増殖に大きく関わっており、多くの食品中に含まれる抗酸化物質にも抗腫瘍効果が期待されています。中でも、栄養豊富なフルーツ「パパイヤ」と日本人の長寿を支えてきた「発酵」という二つの“健康の秘訣”を結びつけて生まれたFPPは、アルツハイマー型認知症患者における酸化ストレスの抑制効果をはじめ、これまでに発表された数多くの臨床研究結果から、優れた抗酸化作用で知られています。

また、FPPは、過剰なROS(活性酸素種)を抑制する抗酸化作用だけでなく、免疫活性に必要とされるROSの産生を促進し、糖尿病患者の傷の治りを早くすることも報告され、日本の特許庁より「ATP産生促進剤 及び ミトコンドリア活性促進剤 並びに 免疫賦活剤」として特許登録もされている世界でも稀な食品であり、医療への応用も期待されています。

そこで今回、FPPを経口摂取した C57BLマウスにメラノーマ細胞(B16F10細胞)を皮下接種し、FPPのメラノーマの増殖を防ぐ効果を確かめるため、様々な条件で試験を行い、がんのリスク軽減につながる非常に興味深い結果が得られました。

【図1】本研究の図解

【図1】本研究の図解

具体的には、FPPの摂取量や、摂取開始からメラノーマ細胞を皮下注射するまで日数等の条件を変えた場合でも、FPPを毎日摂取することで、有意な腫瘍の増殖抑制効果が認められました。最も顕著な結果が得られたのは、試験開始から終了まで1日に200mg/kgのFPPを経口摂取させたマウスにFPP摂取開始から3日後にメラノーマ細胞を皮下注射した場合で、FPPを摂取していないマウスに比べ腫瘍の大きさが約6分の1でした(図2-I)。また、FPPを摂取したマウスではいずれも転移が起こりませんでした。試験終了時の腫瘍の様子は、FPPを摂取していないマウスよりも有意にサイズが小さいだけなく、色の比較においても差は明らかでした(図2-II)。更に、試験終了直前のマウスの血液を採取し、活性酸素種(ROS)および、抗酸化物質であるスーパーオキシドディスムターゼ1(SOD-1)、グルタチオン(GSH)を測定したところ、FPPの抗腫瘍効果は、総ROSレベルの減少、およびGSHおよびSOD-1の血中レベルの増加と一致しました。

【図2】対照マウス(コントロール)およびFPPを毎日摂取したマウス(FPP摂取開始から21日後(A)、14日後(B)、3日後(C)にメラノーマを移植)との比較

【図2】対照マウス(コントロール)および FPPを毎日摂取したマウス(FPP摂取開始から21日後 (A)、14日後(B)、3日後(C)にメラノーマを移植)との比較

本研究の結果は、FPPが身体の防御システムを正常に機能させること、そして、その結果として腫瘍増殖の予防および抑制の両方に寄与し得ることを示唆しています。私たちの体内では常に細胞の“がん化”と免疫細胞によるがん細胞の攻撃・排除が繰り返されていますが、健康な人の場合、この免疫細胞がきちんと機能することで健康が維持されています。FPPの自然抗酸化応答誘導を介した抗がん作用の仕組みが解明されれば、身体のもつ免疫力を治療に応用した免疫療法との併用やがん予防への更なる活用が期待されます。

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