国内初、鉄酸化細菌を活用した水銀汚染土壌・地下水浄化技術が 「バイオレメディエーション適合確認」を取得
2024-09-06 11:15
安藤ハザマ(本社:東京都港区、代表取締役社長:国谷 一彦)は、酸性鉱山排水の中和や重金属の除去に利用されている鉄酸化細菌(アシディチオバチラス フェロオキシダンスMON-1株 以下、MON-1株)(写真1)を利用した水銀汚染土壌・地下水浄化技術を開発し、「バイオレメディエーション適合確認(注1)」を取得しました。この適合確認は、重金属の浄化技術において国内初の事例です。
- 開発の背景
水銀は土壌環境において重大な汚染物質の一つであり、その除去は国内外を問わず喫緊の課題となっています。そこで、環境保護と持続可能な土壌浄化技術の開発に向けて、水銀耐性鉄酸化細菌を見出した岡山大学の研究成果を基に浄化技術を開発し、同大学とともに水銀汚染土壌・地下水浄化への実用化に取り組んできました。
- 水銀汚染土壌・地下水浄化技術の特長
従来、水銀汚染土壌は600℃~800℃に加熱し、金属水銀として回収する方法が採用されますが、多大なエネルギーとコストがかかります。これに対し、本技術は常温で活動する微生物によって水銀を除去することで、省エネルギーで低コストの浄化が可能です。
具体的には、MON-1株の高濃度の水銀汚染環境で生存可能である等の特性を活かし、水銀イオンをガス状の金属水銀に還元して分離除去します。この方法は、バイオレメディエーションの中であらかじめ培養した微生物を汚染土壌や地下水へ添加するため、バイオオーグメンテーション工法(注2)に分類されます(図1)。
浄化方法は、以下の4つのステップで構成されます。
1:汚染土壌へ鉄酸化細菌を添加します
2:エネルギー源となる鉄分を添加します
3:微生物によりエネルギー源の鉄が酸化されます
4:鉄の酸化と同時に水銀が還元、ガス状の金属水銀に変化するため、汚染土壌から容易に分離して除去することができます
このような微生物の持つ自然なプロセスにより、水銀汚染土壌や地下水から水銀を効果的に除去し、環境への影響を最小限に抑えることが可能となります。
- バイオレメディエーション適合確認の取得
本技術の実用化に際して、MON-1株の大量培養などの課題を克服しました。そして、実用レベルの浄化技術を開発し、パイロットスケールの実証実験(写真2)にて環境基準値をクリアする浄化の効果が確認されたことから(図2)、「バイオレメディエーション適合確認」を申請、取得しました。
- 今後の展開
「バイオレメディエーション適合確認」の取得により、本技術の安全性が認められたことから、実際の汚染サイトでの水銀汚染土壌や地下水の浄化に適用するために、実用化に向けたさらなる技術改良を行うとともに、国内のみならず海外への普及にも取り組んでいきます。
(注1)バイオレメディエーション適合確認
「微生物によるバイオレメディエーション利用指針(平成17年経済産業省・環境省告示第4号)」に基づく確認です。この確認を受けることで、その技術が安全で効果的であることが証明され、実際の環境浄化プロジェクトでの使用が可能となります。
(注2)バイオオーグメンテーション工法
汚染された土壌や地下水に特定の微生物を追加して、汚染物質の分解や除去を促進するバイオレメディエーション技術の一つです。この工法は、自然界に存在する微生物だけでは十分に汚染物質を分解できない場合に、特定の能力を持つ微生物を人為的に導入することで、浄化効果を高めることを目的としています。
画像・ファイル一覧