【岡山理科大学】工業高校生が校内で育てたメバルを初出荷 好適環境水利用の養殖で東岡山工業高校
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岡山理科大学が開発した好適環境水を使い、水産養殖と植物の栽培を同時に行う循環型農法「アクアポニックス」に取り組んでいる岡山県立東岡山工業高校(東工)で、メバルが成長したため12月16日、初出荷されました。出荷先の岡山県総社市の料理店「遊食房屋」総社店では早速、煮つけに調理されて卓上を飾りました。
このメバルは昨年7月31日、東工実習室の2.5トン水槽に理大が育てた約50匹の稚魚を収容して養殖スタート。メバルの排出物を肥料に小松菜や水菜、アイスプラントを栽培してきました。メバルは当初50グラムほどでしたが、大きなもので体重188グラム、全長19.7センチにまで育ちました。このうち30匹が出荷されました。
この日は同校で初出荷の報告会が行われ、挨拶に立った藤原亨祐校長は「ここまでやってきた生徒たちの頑張りをたたえたいと思います。これからメバル以外にどんどんいろんな魚の方の養殖も進めていきます。今日をきっかけに何か新しいことがさらに広がればいいと思っています」と工業高校の新たな挑戦に強い意欲を示しました。
続いて、指導にあたってきた理大生命科学部生物科学科の山本俊政准教授が、「工業高校のこうした取り組みは全国初で、新たな工業高校の先駆けになるような気がします。この取り組みを宇宙養殖までつなげていきましょう。ぜひ頑張って、次のステージに上っていきましょう」とエールを送りました。
また、遊食房屋の細川明宏取締役営業本部長は「1年ほど前から東工の取り組みを勉強しながら、理解もしてきて、遊食房屋で初めて販売ができるようになりました。これからも、もっともっとたくさんいろんなチャレンジができるかなと思っていますので、我々も協力できる範囲は頑張ってやっていきたいと思っています」と述べました。
研究報告は、いずれも工業化学科3年の横倉寛大・化学研究部長と、井上翔太さんが行い、アクアポニックスの仕組みについて、「魚から排出された尿素やアンモニアをバクテリアによって、亜硝酸や硝酸塩、植物にとって必須成分を成長に変え、きれいになった水を飼育水に戻すことで、ずっと循環される産業廃棄物が少ないシステム」とし、水質分析計などを使って「アンモニア、亜硝酸、硝酸塩などのパラメータを管理範囲内でコントロールするよう心掛けています」と日常的な作業を説明。今年1月には高硝酸塩の影響により貧血状態となり、メバルたちが危機的な状態に陥ったものの、水を替えて乗り切った経験を踏まえ、「油断や過信は禁物」「定期的な精度の高い分析が必要」などと強調しました。
メバルは「未来の匠たちが創る海の味わい」ということで、「匠海(たくみ)メバル」と名付けられました。
報告会後には、生徒たちが水槽からメバルを次々に水揚げして、体重と体長を計測していきましたが、元気いっぱいでタモ網から飛び出し、生徒が慌てて捕まえる場面も。
メバルは、その場で遊食房屋の調理担当者が活けづくりと薄造りに調理して試食会が開かれました。生徒たちは口に運んだ後、「脂がのっていて、甘くておいしい」「くさみが全くない」と自分たちが育てたメバルの出来栄えに満足そうでした。
匠海メバルはこの日のうちに、遊食房屋総社店に運ばれ、煮付け(税込み495円)で提供されました。同店とのコラボメニューを考案した総社高校家政科3年、服部麻那さんら4人も試食に駆け付けて、「ふわふわで、めっちゃおいしい!」「かめばかむほど、旨味が出てくる」と口々に感想を話し、一般客の評判も上々でした。用意した14食はわずか1時間余で完売したそうです。
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同校は宇宙養殖をめざして「東工アルテミス・プロジェクト」にも取り組んでおり、実習室の一つをアクアポニックスルームとして装置を自作し、今年10月中旬、“幻の高級魚”「タマカイ」の稚魚約60匹を収容して、養殖とともにバナナ栽培も行っています。
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