~4人の子持ちスポーツライターが教える!~ スポーツ好きな子育て世帯に朗報!? テレビでのスポーツ観戦が家族に与える嬉しい“キッカケ”
■テレビで観た“憧れ”が競技に導き、やる気を生む …運動嫌いや苦手意識には家庭環境が関わっている!? ■家族が集まる、会話するネタになる …スポーツ観戦が、これまでと違った話題に繋がる ■過去の栄光が親のカッコよさとして蘇る …親を目標としている子供は少ない!?
東京オリンピック・パラリンピックの開催が来年に迫っている昨今、日本国内ではスポーツへの関心が高まっています。つい先日も、マラソンの日本代表選手を決める『マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)』が開催されました。恐らく早起きして応援に駆け付けたり、朝からテレビに釘付けだったりした方は多いでしょう。
現地に赴き、その場で見るトップアスリートの姿は迫力があります。しかし、大きな会場では良い席が確保できないと選手が良く見えなかったり、マラソンのような競技では一部しか観戦できなかったり。もしかしたら、存分にスポーツ観戦を楽しみ切れないかもしれません。遠方から向かうなら移動の時間や交通費、宿泊費だって結構な負担です。それなら、自宅でゆっくりテレビ観戦するのも良いのではないでしょうか?
私には1~12歳までの子供が4人いますが、もっぱらスポーツはテレビ観戦です。もちろん移動が大変だったり、小さな子供がすぐに飽きてしまったりするのも理由の一つ。でも実は、テレビ観戦は家族環境にも色んなメリットを与えてくれるんです!今回は実体験も交えつつ、特に子供のいるご家庭でスポーツをテレビ観戦するメリットについてお届けします。
テレビで観た“憧れ”が競技に導き、やる気を生む
スポーツと言っても、世の中には数えきれないほどの種目があります。きっとお子さんが産まれ、「どのスポーツを習わせたらいいかな」なんて悩んでいる方は多いはず。実際、私も何度か相談を受けていますが、その際に伝えるのは「競技に迷うなら全身運動を。でも、まずは色んな競技に触れさせてあげて」というアドバイスです。
我が家は水泳や体操、そして私自身が教えている“かけっこ教室”に通わせていますが、一番大切なのは本人が真剣に打ち込めるかどうか。そのためのモチベーションに繋がるのが、「こうなりたい」と思える憧れの選手像です。
とはいえ、1年を通じ全国各地で開催されている数多くの競技大会。あれこれ連れて回るのには、時間とお金、労力が掛かって大変でしょう。でもテレビなら、色んな競技の色んな大会を誰もが自由に楽しめます。もし見たい大会の日時が重なったって、録画すれば問題ありません。どんなスポーツに興味を持つのか、それは本人にしか分からないもの。だからこそ、できるだけ色んなスポーツにテレビ観戦を通じて触れ合させてあげてください。
例えばふと観たテレビの映像から、
「カッコいい!」
「こんなプレイしてみたい」
という憧れが生まれる。その感情が、競技を始めるキッカケになるかもしれません。憧れの姿を追いかけ続け、やがて今度は自分がプロとしてテレビ画面に!…なんてことだってあり得ます。
実際に活躍しているプロアスリートも、実はそういう少しのキッカケが今に繋がっていることは多いんです!
「あの選手も、こういう苦労を乗り越えたんだ」
「この練習の先に、あのプレイがあるんだ」
そう常にイメージできれば、きっと辛い局面でも乗り越えられるはず。憧れは目標であり、目標があればこそ人はそこへ到達するために努力できるものです。現地での観戦に比べて、テレビならそういうキッカケに出会える機会は各段に高まります。
運動嫌いや苦手意識には家庭環境が関わっている!?
スポーツは身体を鍛えるほか、脳の発育にもメリットを及ぼすものとされています。特に成長期において、スポーツすることは大きな意義を持つでしょう。
どんなスポーツも、早く始めるに越したことはありません。子供の成長は目覚ましく、小さい子ほどスポンジのように習ったことを吸収していきます。また、何も運動せず小学校や中学校へと進むと、スポーツそのものに苦手意識を感じてしまうかもしれません。それは、決して本当に運動能力が低いわけではないでしょう。早期から始めた周囲の子と比べてしまうと、どうしても自分が見劣りするからです。もちろん運動能力に個人差はありますが、できれば早い時期からキッカケを与え、取り組み始めた方が良いのだと思います。
そのためには、家庭環境がとても大切です。群馬県高等学校体育連盟の研究部が行った『小学生・中学生・高校生のスポーツ活動に関する意識調査』には、これを裏付ける興味深い結果がありました。
◎スポーツに取り組み始めた時期
中学・高校で競技している方々に対し、その競技を始めた時期について調査。すると以下のように、幼少期から始めている人はとても少ないことが分かりました。
ちなみに私は3歳から水泳を始めました。親が海で溺れた経験を持っており、泳ぎだけは覚えてほしいと考えたそうです。中学では陸上競技部に入りましたが、水泳を行っていたことで全身バランスの良い筋肉が育まれていたこと、また体力が培われていたことは陸上競技でも活かされたと思います。
当時は陸上教室なんてほとんどなく、しかし走るのは得意で好きだったので、小学校での大会に向けた練習には参加。選手として選ばれました。なお、水泳も選手として大会に出る程度になり、中学に水泳部があればそちらを選んでいたかもしれません。
◎子供に特別な運動経験がない理由
もちろん、中には中学・高校を通じても、特に運動を経験していない方もいます。では、なぜ運動に取り組まなかったのでしょうか。これについては、以下のような結果があります。
もっとも多いのは、子供自身が運動を苦手、あるいは嫌いだということ。次いで、参加させたい部活動やクラブ等がなかったということです。
しかし、最初から運動が苦手・嫌いという子供は、本当に多いのでしょうか。恐らく運動する機会が少なく、少しずつ周囲との差が生まれることから「自分は苦手だ、嫌いだ」と考えてしまう気がします。また、部活動やクラブ等についても、そもそも「やりたい」と思える競技に巡り合えていないという可能性は高いでしょう。ですから家庭環境において、早い時期から色んなスポーツ競技に触れ、始めるキッカケを与えてあげることは、とても大切なのだと思うのです。
家族が集まる、会話するネタになる
もしも共通で楽しめるスポーツがあれば、その放送時間はいつも家族がテレビの前に集まるようになるでしょう。一緒に驚き、喜び、そしてときに悔しがる。そうした感情の共有は、何よりの家族コミュニケーションとなるはずです。ふと働いていると子供から、
「今日は大会があるから、早く帰って来てね」
なんて連絡が入るかもしれません。そう言われれば、仕事も頑張って効率的にこなそうという気持ちが沸き上がることでしょう。
もちろん、たとえ全員が揃っていなくても大丈夫!スポーツだって、好きな競技は十人十色です。そんなときは無理に集まらず、それぞれがテレビ観戦を楽しめば構いません。でも、熱狂した気持ちは誰かに伝えたいもの。共感してくれる相手が家族にいれば、きっと絆は深まるのではないでしょうか。
食事の際に試合結果をネタに話したり、ふとニュースで報じられたシーンを見て「これ、さっき見たよ!」と会話に繋がったり。「今日の試合はどうだったの?」なんて子供に問いかければ、子供は自分からどんどん喋ってくれるはずです。テレビなら頻繁に大会を観られるので、会話に困らなくなるかもしれません。
スポーツ観戦が、これまでと違った話題に繋がる
皆さんは普段、子供とどんな話をしているでしょうか。国立青少年教育振興機構の行った『インターネット社会の親子関係に関する意識調査』の報告書によると、もっとも多いのは学校のこと。次いで友達や勉強、そして趣味などの話題が多いという結果が出ています。これは、小学・中学とも変わりません。
この調査によれば、テレビが話題になることは少ないようです。しかしその反面、「趣味や自分の好きなこと」は4番目に位置しています。そのため、打ち込めるスポーツを見つけ、テレビ観戦が日常に加われば、この「趣味や自分の好きなこと」に付随して新たな家族の話題へと繋がっていくのではないでしょうか。
過去の栄光が親のカッコよさとして蘇る
親御さんの中には、学生時代に何かしらのスポーツへ取り組んでいた方も多いでしょう。私は現在もマラソンとトライアスロンを行っていますが、同じように現在も競技している方だっているはずです。たとえ競技成績が誇れるようなものではなくとも、貴重な経験だと思ってください。
例えばテレビでスポーツを観ている際、ふと親の口から放たれるこんな一言。
「あれ、若い頃はできたんだよな~」
「実は学生時代、〇〇部だったんだよ」
「あの競技場、昔は大会でよく使ったよ」
それを聞いた子供から、「凄いじゃん!カッコイイ!」と尊敬のまなざしが生まれるかもしれません。私は100kmなどウルトラマラソンをよく走るので、マラソン大会をテレビで観た際は「これより、もっと長く走れるんでしょ?やっぱり凄いな~」とよく言われます。その結果、先にお伝えした“憧れの人物像”に、親自身がなれるかもしれません。
とはいえ、こうした会話は騒がしい会場ではなく、家族の過ごす家だからこそ自然と生まれる一言ではないでしょうか。過去の栄光としてしまっていた自分だけの思い出が、子供にとって“かっこいい親”像を生むキッカケになる。ぜひ子供と一緒に、ご自身の取り組んでいた競技をテレビ観戦してみてください。その場でルールなど解説してあげるだけでも、きっと親を見る子供の目が少しは変わるはずです。
親を目標としている子供は少ない!?
子供にとって、どんな親でありたいでしょうか。私は常に、「憧れの先輩」のような存在でいたいと思っています。「こうなりたい」と目指せる目標でありながら、しかし、何かあれば気軽に相談してもらえる存在です。これについては、ジブラルタ生命保険株式会社による『親子のつながりに関する調査』に興味深い結果があります。
父親と母親というものは、家庭環境によって役割がことなるもの。我が家でも、どちらかと言えば母親がいつも子供たちに寄り添い、私は“何かあった際の最後に出てくる砦”のような位置づけです。この調査結果では、以下の2点に着目してみました。
・両親ともいつも支えてくれる味方であり、頼りになる存在と感じている
・両親いずれか(もしくは両方)を目標としている子供は少ない
両親は、何かあれば頼れる相手。しかし一方で、両親を目標に据えている人は非常に少ないことが分かります。しかし親としては、「親のようになりたい」「親を超えたい」「親は尊敬・憧れの存在」と言われれば嬉しいもの。それが今度は、親にとってモチベーションアップにも繋がるでしょう。そのキッカケの一つに、スポーツのテレビ観戦がなり得ます。試しに番組表を確認し、子供の好きそうなスポーツを一緒に見てみてはいかがでしょうか。
ただし「やって見せて!」なんて声に応えるべく実際にプレイすると、ボロが出るのでやめた方がいいかもしれません。無理して怪我…なんていうことにならないよう、くれぐれも注意してください。スポーツを通じた家族の新しい関係づくり、始めてみませんか?
[著者プロフィール]
三河 賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かしランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰。子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。その他にマラソン大会運営のアドバイザー、コラム等の寄稿実績も多数。三男一女・4児の大家族フリーランス。ナレッジ・リンクス(株)代表、“運動できる”コワーキングスペース『Plus Fit』運営。宮城県出身、千葉県印西市在住。1983年生まれ。