【藤井聡】財務省に従う「政府」とそれに踊らされた「国民」が今、「医療崩壊」と「社会崩壊」を同時に導こうとしています。

From 藤井 聡(表現者クライテリオン編集長・京都大学教授)

緊急事態宣言の5月一杯までの延長が公表されました。
特別警戒の13都道府県「以外」においては、一部行動制限が解除されるとのことですが、まだまだ、様々な行動の制限は継続されます。そして、東京大阪を含む13都道府県においては、これまで同様に「8割」の社会的な接触制限が継続されます。
この緊急事態宣言は、一体何のために出されているのかというと、感染の急激な拡大(いわゆるオーバーシュート)を回避するためでもありますが、その法律的な意味における直接的理由は、「医療崩壊」の回避です。
「医療崩壊」というのは、感染症の医療需要が供給量を大幅に超過してしまって、適切な医療を施せなくなって、助かる筈の命が失われていくような状況になることを言います。

そして政府は今、この医療崩壊を避けるためという大義名分の下、
「自粛して下さい!」
と全国民に呼びかけているわけです。

TVのワイドショーやニュース番組の司会者達は皆、「我々が自粛を国民に依頼し続け、感染を抑え込み、医療崩壊を防がねばならない!」という責任感に燃え、連日、自粛、Stay Homeを国民に呼びかけ続けています。
そして、多くの国民は真面目にこうした呼びかけに従い、結果、ますますTVを朝から晩まで見続け、ますます「医療崩壊を防ぐために、自粛しなけりゃイカン」という思いを深めています。
そして、こうやって政府、TV、国民の三者によって作り上げられた「医療崩壊防ぐために自粛せにゃイカン」全体主義は、いわゆる「8割おじさん」(西浦教授)の「8割の接触を下げれば感染爆発は抑えられる」という学術的提言によってさらに強化されています。
そして、Yoshikiの様な人気タレントや有名スポーツ選手が手を代え品を代えTVに登場し「今はつらいかもしれないけれど、みんなで乗り越えよう!」というキャンペーンを展開し、自粛全体主義はさらにさらに強化されています。
こうして、多くの日本国民は、自粛こそが正しいことだと自らに言い聞かせ、自宅に滞在し続けているわけです。
そしてその結果、社会や経済が根底から破壊されようとしているのが現状です。

DVや虐待はエスカレートすると同時に、
https://www.kahoku.co.jp/editorial/20200502_01.html
半数前後の中小企業がこのままでは倒産する危機に直面し、
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200426-00000053-kyodonews-bus_all
かつ、地域の公共交通が今、溶解し、
https://jcomm-covid19.jimdofree.com/
自殺に追い込まれる方が10万人以上、20万人以上へと拡大するであろう状況に至っています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200502-00000025-nkgendai-bus_all

要するに、今の日本国民はコロナの感染拡大による「医療崩壊」を防ぐために、「社会崩壊」に目をつぶりましょうという話になっているのです。
というよりもむしろ、地球よりも重い命を守るための崇高なる「医療崩壊・回避」の努力を国民一丸となってやっている時に、社会崩壊を防ぐ話など「不謹慎」極まりない、という話にすらなっているのが現状です。
しかし、これは理不尽極まりない暴力的風潮です。
繰り返しますが、「自粛の強要」によって、DVや虐待は増え、倒産、失業が増え、挙げ句に犯罪や自殺が増加するのであり、これらを防ぐ努力が「不謹慎」である筈はありません。
しかも、医療崩壊のリスクを低減させないままに、社会崩壊の程度を回避すること方法など、いくらでもあるのです。それをやらないのは、単なるバカか、さもなければ不条理な精神異常者です。
おおよそ、(感染を8割削減するためには「接触を8割削減する」以外の、もっと効率的な方法がいくらでもあるのですが・・・それについてはさておくとしても)医療崩壊を回避する最も基本的な対策は、医療供給力の増強のはずです。
そもそも今、コロナ対応病床は、日本中にある全ての病床の内のわずか0.7%です。

そして、残りの99.3%の病床は今、概して、「ガラガラ」の状況にあります。コロナ感染症に怯え、Stay Homeを続ける一般の患者達が皆、通院を回避しているからです。
https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1257102096836386816

ということは今、全国に、ベッドは余りまくっているのです。
こういう状況を政府は知らない筈がありません。だから、普通に考えれば、国民に8割の接触回避を依頼する前に、
「今、大量に余っている病床をコロナ対応病床に転換させる」
という取り組みをすれば良い筈なのです。

実際、ドイツは、ICU(集中治療室)1床増設に対し「5万ユーロ(600万円程度)」の助成金を支払うという制度を作ったところ、ICUは「1.4倍」に増えたそうです。
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/756632/

医療従事者にしても、今、コロナ対応以外の病院では、大量に「余っている」状況にあります。
したがって、十分な手当を提示しつつ、全国の医療関係者にコロナ対応病院に来る事を提案すれば、大量に人材を調達することが可能と考えられます。
これは、現場の医療従事者に複数直接確認し、「間違い無い」という確約を頂いている話です。例えば、開業医の多くは、大量の負債を抱えているにも関わらず、コロナ不況のために患者が激減し、経営が大変に厳しくなっているそうです。そうした方々に「十分な手当」を提示すれば、彼らの貴重な医療技術を提供いただく可能性は十分考えられるでしょう。

人工呼吸器や、医療ガウン、ゴーグルなども不足していると言われますが、これについても例えば、アメリカのように「国家命令」として、全額国費負担を前提として民間に生産する事を命ずれば、早期に確保することも決して不可能ではないでしょう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200403/k10012366091000.html

しかし、残念ながら安倍内閣はこうした取り組みを「何一つ」と言って良いほどの水準で進めていないのが実情です。
その結果、病床はさして増えず、コロナ対応の医療従事者もさして増強されず、必要な医療物資もさして増えてはいないのです。
それもこれも偏に「緊縮財政」のせいです。
アメリカやドイツは、このコロナ対応についてはカネに糸目をつけずに徹底的に政府資金を充当するという態度を取っていますが、日本では、3月一杯までは「予算は予備費しかありません」と言い募っていましたし、4月以降も「補正が決まるまではコロナ関係費が計上されていない当初予算しかありません、だからやはり予備費しか使えません」という事になっていたのです!!(ご存じでしたか・・・?)
じゃぁ、上に述べたような米独のような「コロナ対応の予算」はいつから支給できるのかと言えば・・・4月下旬に決定された補正予算が執行可能な、5月8日からなのです!!
何という遅さでしょう・・・

つまり日本政府・安倍内閣は、財務省が決めた日程と財布に唯々諾々と従い、そのせいで、医療供給力が全く上げられず、その必然的帰結として医療崩壊の危機が迫ってきているのです。
そしてその結果、政府はあろうことか「医療崩壊しそうだ~!」と言って騒ぎ立て、それを防ぐ為に4月7日の時点で早々と国民に8割の行動自粛を要請したのです。でも、その間、自分自身は財務省と戦おうとはせずに、医療供給力を上げる努力を怠り続け、医療崩壊リスク低減の努力を全て国民に押しつけ続けたのです。

なんという不道徳・・・この構図を認識した良識ある国民で、憤りを感じない国民はいないのではないかと僕は思います。
ただし、この構図に気付かず、財務省に牛耳られた政府のでまかせに踊らされ、「自粛全体主義」を自ら作り出し、政府の「医療崩壊・緊縮財政」に加担し、自ら社会を崩壊させ続けている国民もまた、重い重い罪を犯しているのではないでしょうか・・・。
ついては、少なくとも心ある本記事読者だけでも、是非、この情けなき、罪深き状況を認識いただきたいと思います。
そうした現状認識が十分にできた国民だけが(おそらくはそれができるのは、この広い日本の中でも極一部に限られているのではないかと思いますが・・・)、この危機から逃れ出るための正しき道をしっかりと考え得ることができるのではないかと、思います。

追申:この情けなき罪深き状況が作り出したのは、日本国民そのものであると認識していますが、やはりこの方の罪は特に重いと考えています。一人の学者の責務として、この学者について徹底的に批判いたしたいと思います。
「北大西浦教授の「8割おじさん戦略」は、批判的に徹底検証されねばならない。」
https://foomii.com/00178/2020050112532166031

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