前年比-1.1%の中、生活家電とカメラ関連製品がプラス成長 - 2024年 家電・IT市場動向 -

2025-02-20 11:00

 NIQ/GfK Japan は、全国の有力家電・IT取扱店の販売実績データ等を基に、2024年の家電およびIT市場の販売動向を発表した*1。

【国内家電小売市場】

 2024年の国内家電小売市場は前年から1.1%減、6.9兆円をやや下回る結果となった。コロナ特需により家電やIT製品の需要が高まった20年をピークに金額規模は微減が続いており、特に22年以降は高需要期の反動の影響が尾を引いているとみられる。
 分類別に見ると、生活家電、カメラ関連製品が前年の販売金額を上回った。生活家電は春から初夏にかけてのエアコンの販売好調が寄与した他、理美容家電、調理家電も堅調だった。カメラ関連製品はコンパクトデジカメの復調が需要を下支えした。一方、スマートフォンを中心とする電話関連、AV関連製品、IT関連製品はいずれも前年の販売金額を下回った。電話関連は23年末のスマートフォン端末の割引規制強化に伴う駆け込み需要の反動減が強く影響した。また、テレビや個人向けパソコンなどの買い替えが進まなかったことが、 AV、IT関連製品の落ち込みに影響した。
 インターネット販売の金額規模は前年を上回った一方で、店頭販売はスマートフォンの販売低調が響き、前年から微減となった。その結果、家電小売市場全体におけるインターネット販売の金額構成比は前年から1%ポイント増加し、21.5%となった。23年はコロナ禍明けで購入場所が店頭に回帰する動きがあったが、24年はインターネット通販の利便性が再認識されたとみられる。

【AV市場】

 薄型テレビは前年比0.1%増の470万台となり、3年続いていた市場縮小から踏みとどまる結果となった(図1)。24年上半期は昨年からの減少傾向が続いていたが、下半期は上昇に転じた。

 タイプ別にみると、液晶テレビは販売が増加傾向にあるが、有機ELテレビは対前年で2割近く減少した。この背景には、「ミニLED」や「量子ドット」などを搭載した高画質を訴求する液晶テレビのラインナップの増加がある。特に55インチ以上の大型サイズにおいてこの傾向が顕著であり、ミニLEDは対前年で2倍以上に成長している。価格については、高価格帯製品が伸びたこともあり、薄型テレビの税抜き平均価格は前年から1%上昇の94,000円となった。

 BDレコーダーは数量前年比18%減の81万台と、100万台を割る結果となった。動画配信サービスの普及により、録画需要が逓減していることが影響しているとみられる。特に低価格帯の販売減少が顕著であった。その一方で、税抜き8万円以上の高価格帯の販売は前年を上回っており、多チューナー搭載、大容量HDD搭載モデルなど高機能製品の需要は比較的堅調だったと言える。結果、BDレコーダーの税抜き平均価格は58,000円と前年から6%上昇した。

 ヘッドホン/ヘッドセット2は昨年まで続いていた減少傾向が下げ止まり、前年と同規模の1,890万本となった。市場の4割強を占める有線タイプは同8%減と振るわなかったものの、市場の4割弱を占める完全ワイヤレスイヤホン 3が同11%増と、引き続き市場をけん引する形となった。中でも、ノイズキャンセリング機能を訴求した完全ワイヤレスイヤホンが前年比19%増と好調であった。また形状面では、耳を完全に塞がないタイプのオープンイヤー型*4ヘッドホン/ヘッドセットが前年比54%増と市場を拡大した。用途や環境に応じて使用できる機器の選択肢が広がっていることが、ヘッドホン/ヘッドセット市場を支えている要因の一つと考えられる。

【テレコム市場】

 携帯電話は数量前年比15%減の2,330万台となった(図2)。そのうち9割強を占めるスマートフォン(ファブレット含む)が同12%減の2,250万台、フィーチャーフォンが同52%減の80万台となった。 23年12月に施行された法改正による値引き規制の影響や、その駆け込み需要の反動で、24年は年間を通して低調に推移した。携帯電話専門店の店舗数も23年に続き減少した。

 市場全体が落ち込む中で、税込み端末価格14万円以上の高価格帯スマートフォンは、数量前年比29%増と大幅に伸長し、数量構成比は前年から10%ポイント増の30%にまで拡大した。同価格帯においては、ワイヤレスチャージなど利便性の高い製品も普及が進み、携帯電話市場を下支えした。

 ウェアラブル端末*5は前年比6%減の340万本となった。数量構成比で約半数を占めるスマートウォッチは主要ブランドの需要が一巡したことで前年比16%減となった。一方で、ランニングや山登りなどのスポーツ用途に訴求されているスポーツウォッチは、数量構成比では市場の15%程度にとどまるものの、税抜き1万円未満の比較的手頃な価格帯の製品ラインナップの拡充によって前年比25%増と大幅に増加した。

【IT・オフィス市場】

 パソコンとタブレット端末市場は、前年比11%増の2,000万台となった(図3)。個人向けは前年比1%減にとどまったものの、法人向けはWindows 10のサポート終了に伴うパソコンの買い替え需要や、GIGAスクール構想特需時に購入された端末のリプレイスなどによって前年比13%増となった。

 パソコン*6は前年比14%増の1,360万台となった。そのうち個人向け市場は同6%減の300万台となった。物価の上昇といった外部要因に加え、製品の高価格化も需要の縮小要因となったと考えられ、20年以降縮小傾向が継続している。一方、法人向け市場は同21%増の1,060万台となった。25年10月に控えたWindows 10サポート終了へ向けたリプレイスが始まっているとみられ、前年を大きく上回った。

 タブレット端末*7は前年比4%増の640万台となった。個人向け市場は新製品の発売などによって同5%増の240万台と伸長した。通信方式別にみると、キャリア回線付きは前年比25%減と縮小したが、Wi-Fiモデルは同11%増と伸長し、数量構成比で前年から6%ポイント拡大し79%となった。また、SIMフリーモデルは数量構成比3%ではあるが、前年比118%増と大きく伸長した。法人向け市場は3%増の400万台となった。20年の文教向け特需時に購入された端末のリプレイス需要が一部喚起され、市場を押し上げたとみられる。

【イメージング市場】

 デジタルカメラは前年比16%増の140万台となった。数量ベースで2年連続プラス成長を継続している。タイプ別にみると、コンパクトカメラが数量前年比23%増、レンズ交換式カメラが同7%増といずれも伸長した。レンズ交換式のミラーレス一眼は数量前年比9%増となり、3年連続の成長となった。コンパクトカメラもレンズ交換式カメラもいずれも平均価格は上昇しており、デジタルカメラ全体の税抜き平均価格は前年から2%上昇の95,000円となった。

 交換レンズは、前年比8%増の54万本となった。一眼レフ用は数量前年比19%減であったが、ミラーレス一眼用は同12%増となった。交換レンズに占めるミラーレス一眼用の割合は、数量ベースで90%と前年から3%ポイント伸長した。交換レンズの平均価格も上昇しており、前年から5%上昇の107,000円となった。

【生活家電市場】

 冷蔵庫は前年比1%減と前年をわずかに下回る420万台となった。20年から4年連続の縮小だが、減少幅は小幅にとどまった。サイズ別でみると、小容量(200L以下)が数量前年比4%増で推移しており、その結果、同クラスの冷蔵庫全体に占める数量構成比は2%ポイント増の42%と拡大した。中容量(201-400L)と大容量(401L以上)は構成比を落とし、それぞれ23%、35%となった。冷蔵庫の税抜き平均価格は前年から2%減少し、103,000円であった。

 洗濯機は前年比1%増の490万台となった(図4)。洗濯機の中でここ数年拡大を続けていたドラム式洗濯機だが24年は前年微増にとどまった。タイプ毎の数量構成比は、ドラム式が21%、縦型が77%、二槽式が2%となり、前年から変化はみられなかった。ドラム式の拡大が一服したことで、洗濯容量別でみても、大容量(洗濯容量8kg以上)の占める数量構成比は前年と同じ51%であった。税抜き平均価格は前年微減の91,000円となった。

 エアコンは前年比5%増の820万台となり、800万台を回復した(図5)。気象庁によると2024年は全国的に気温の高い状況が続き、そのことがエアコン販売に寄与したと思われる。特に上半期の好調が顕著で、4~6月は数量前年比10%強の伸びとなった。冷房能力別の数量構成比に大きな変化はなく、小部屋向けの2.2kWが前年から1%ポイント増の45%を占めた。エアコンの税抜き平均価格は前年から4%上昇した。全ての能力帯で平均価格が前年を上回っており、価格上昇トレンドが継続した。

 掃除機は前年比0.2%増の740万台となった(図6)。タイプ別にみると、スティックタイプのみ前年の規模を上回った。結果、スティックタイプの数量構成比は前年から4%ポイント拡大し60%となった。キャニスタータイプは前年から1%ポイント減の22%、ハンディタイプは2%ポイント減の9%となった。ロボットタイプは同6%と前年を維持した。掃除機の税抜き平均価格は前年から3%上昇し26,000円となった。

*1. 全国の有力家電・IT取扱店(家電量販店、総合量販店、カメラ専門店、携帯電話専門店、ネット通販等)からPOS データ等を収集し、統計的な手法に基づき全国市場規模相当に拡大推計した
*2. ヘッドホン:マイク無しのイヤホン・ヘッドホン製品(ステレオのみ)、ヘッドセット:マイクを備えたイヤホン・ヘッドホン製品(ステレオ・モノラル)
*3. 完全ワイヤレスイヤホン:左右のイヤホンが完全に独立したBluetooth搭載イヤホン
*4. オープンイヤー型:骨伝導タイプや耳を塞がない装着方法により、周囲の音も聞くことができるイヤホン
*5. ウェアラブル端末:搭載されているセンサーを利用して心拍や位置情報などのライフログを収集し、スマートフォン等と連携する機器および演算能力を持つ機器
*6. Windows 8/8.1/10搭載のスレート型情報端末を含む
*7. タブレット端末:画面サイズ5.6インチ以上のタッチスクリーンを備え、iOS、Android等の軽量OSを搭載するスレート型情報端末(7インチ未満の通話機能付き端末は含まない)

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