グリーンピース・東南アジアが 独自調査、日本語版レポート発表 「変化の波ータイの遠洋漁業における 人権侵害と違法漁業」
タイの漁業における 人身売買・強制労働の実態を暴く
国際環境NGO グリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース・ジャパン)は、本日5月11日(木)、日本語版レポート「変化の波ータイの遠洋漁業における人権侵害と違法漁業」を発表しました(注1)。本レポートは、グリーンピース・東南アジアがタイの水産業にはびこる人権問題について12カ月間にわたる独自調査を行い、2016年12月15日に発表しました。漁獲した魚を海の上で運搬船に移し替える行為(洋上転載)と人身売買や強制労働などのつながりを明らかにしています。洋上転載をすることで、船は長期間にわたり港に戻らずに漁を続けることが可能になり、その孤立した環境が人権侵害や違法漁業を助長させています。
グリーンピースは、違法(Illegal)・無報告(Unreported)・無規制(Unregulated)に行われる漁業(略称:IUU漁業)や、非倫理的に獲られた魚が市場に流通するのを防ぐため、水産業者や小売業者に対し、洋上転載の禁止とサプライチェーンの浄化を働きかけています。
2015年12月のAP通信の調査により、複数の大手グローバル水産業者のサプライチェーンに関連する深刻な人権侵害が明らかとなったことから、企業は海の人権問題を無視することができない状況になりました。その結果として、今年3月には世界のペットフード業界に変化が訪れました。同業界大手のネスレはサプライチェーンにおけるすべての洋上転載を禁止することを、同じくマースは洋上転載を確認し、必要があれば洋上転載に由来する水産物の使用を停止することを約束しました(注2)。
これを受け、2社に水産物を供給する世界最大級の水産企業タイ・ユニオンは、人権問題やIUU漁業の根絶に向けて洋上転載の取り締まりを含むサプライチェーンの浄化を求められています。
グリーンピース・ジャパン海洋生態系担当小松原和恵は、「洋上転載が続く限り、どんな水産会社も、販売する魚が持続可能かつ倫理的に漁獲されたと保証することは不可能に近いのです。漁業大国といわれる日本も、国内消費のおよそ半分を輸入に頼っていることから世界の水産業で起きているIUU漁業や人権問題と無関係ではありません。海の生態系破壊と人権問題を撲滅するためには、消費者が問題を知り、販売側に働きかけることが非常に大切です。洋上転載の規制を発表したマースやネスレの決断を後押ししたのは、一人ひとりの消費者が地道に訴え続けた結果に他なりません」と訴えました。
注1)レポートのPDFは、下記URLよりダウンロードいただけます
https://issuu.com/greenpeacejapan/docs/turnthetide_jpn
注2)グリーンピース・プレスリリース「ペットフード業界最大手ネスレとマース、洋上転載を規制する方針発表」http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/press/2017/pr20170317/