【名城大学】人間学部の加茂省三教授が名著「アフリカにおける国家-腹の政治-」を翻訳、出版
アフリカ政治研究の第一人者の名著 待望の邦訳
本学人間学部の加茂省三教授が、フランスのアフリカ政治研究の第一人者として知られるジュネーブ国際・研究開発大学院のジャン=フランソワ・バイヤール教授が1989年に初版を著した「アフリカにおける国家-腹の政治-」を翻訳(翻訳の原本は2006年発行の改訂版)し、6月10日に晃洋書房から出版されます。アフリカ政治学研究に大きな影響を与えた名著の待望の邦訳として、アフリカ研究者の間では早くも反響を呼んでいます。
加茂教授の専門は国際関係論で、フランスのボルドー政治学院とパリ政治学院への留学、在パリ日本大使館勤務の経験があり、かつてフランスの植民地だったアフリカのフランス語圏の国々とドゴール政権以降のフランスとの外交史を主に研究しています。バイヤール教授とはフランス滞在中に何度か直接、コンタクトを取ったことがあるそうです。
約500ページに及ぶ「アフリカにおける国家-腹の政治-」について、「いい本ではあるけれど、フランスのアフリカ研究者も難しいと言うほどの難解な本です」と加茂教授。2010年、加茂教授の研究や経歴を知る晃洋書房の編集者から翻訳の提案があり、加茂教授は自らの研究の傍ら、10数年をかけて日本語訳を完成させました。
加茂教授「古典とも言える名著だが、現在でも十分に意義がある」
「フーコーやグラムシといった哲学者の思想も出てきているのが難解さの理由」と加茂教授が話すように、「アフリカにおける国家-腹の政治-」では文化人類学や哲学、言語学や社会学といった人文科学の諸分野を横断してアフリカの国家や社会を考察し、社会と国家、エリートと民衆が絡み合っているアフリカの姿を浮き彫りにして、私腹を肥やすことが絶えない政治のメカニズムのキー概念となる「腹の政治」をバイヤール教授は提唱しています。
加茂教授は5月に開催された日本アフリカ学会第60回学術大会で「ジャン=フランソワ・バイヤール著『アフリカにおける国家』の現代的意義」と題するセッション発表で翻訳について発表したところ、大きな反響があったそうです。加茂教授は「古典とも言える名著ですが、現在でも十分に意義がある内容です。難解でフランス語の原著は日本ではほとんど読まれていなかったので、この日本語訳でより理解してもらいやすくなったのでは」と話しています。
「アフリカにおける国家-腹の政治-」は菊版、バイヤール教授による日本語版への序文を含めて400ページ、6820円。