日本橋茅場町ARTDYNEで 木原健志郎個展「Wings」を開催

Kenshiro Kihara 《Cicada》 2025 Oil on canvas 1620×1303mm

ARTDYNEでは、木原健志郎による2年ぶり2回目の個展「Wings」を開催いたします。本展では、木原が新たに展開する静物画シリーズ《リビング・フィギュア》を中心に、「生」と「死」、「虚構」と「現実」が交錯するその独自の絵画世界を紹介いたします。

ある日、制作のためにフィギュアをリペイントしていた木原の視線が、ふと卓上のサボテンに留まりました。「塗装されたサボテンは、“生きたフィギュア”になり得るのか?」――そんな問いをきっかけに、《リビング・フィギュア》シリーズは誕生します。

塗料をまとった植物や虫、肉片といったモチーフたちは、やがて朽ちゆく運命にありながらも、薄く重ねられた塗膜によってその形を保ち、「生」の痕跡をとどめようとします。ここで木原は、虚構(フィギュア)と現実(生命体)という二項のあわいにある“ズレ”を、鮮やかに浮かび上がらせます。

木原にとって「描くこと」とは、単に目の前のものを再現する行為ではありません。彼の作品は一見すると限りなく写実的ですが、鑑賞者に「これはいったい何なのだろう」と思わせる、根源的な違和感を常に残します。特筆すべきは、彼の卓越した描写力が、単なる技巧にとどまらず、作品のコンセプトと不可分に結びついている点です。塗装されたモチーフが、あまりにも緻密に、過剰なまでにリアルに描かれることで、かえって「現実とは何か」という問いが立ち現れてくるのです。こうして描かれた静物たちは、視覚的なリアリティを超えて、そこに刻まれた時間性や物質性、さらには存在そのものへの問いを私たちに投げかけてきます。

本展は、木原健志郎が一貫して取り組んできた「虚構と現実の関係性」、すなわち作られたイメージや演出された存在を通じ、現実がいかに不確かで揺らぎを含んだものであるかを可視化する、静かで力強い試みとなります。この機会にぜひご高覧賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

【アーティスト・ステートメント】
普段の制作で使うためにフィギュアをリペイントしていたとき、ふと卓上のサボテンが目に留まりました。塗装されたサボテンは「生きたフィギュア」になるのだろうか?そんな考えがよぎり、何気なくサボテンを鉢ごと塗装したことが、今回の「リビング・フィギュア」シリーズの始まりでした。この作品群は、塗装されたさまざまなモチーフを描いた静物画であり、生物の持つ存在の重みを、フィギュアのように空虚で軽薄なものとして提示する試みです。

植物や肉、虫などのモチーフは、朽ちようとする一方で、表面の塗料はモチーフの形をなぞり、生の痕跡としてその形を留めようとします。その様子は、薄い塗料の皮膜を隔てて、生と死が背中合わせに存在しているかのように感じられました。

この世界の表裏である虚と実、そして生と死。私は絵を描くことによって、そういった不可視のものに形を与え、想像することができるのだろうと思います。
木原健志郎

木原 健志郎|Kenshiro Kihara略歴

1997年 兵庫県生まれ
2022年 尾道市立大学大学院 美術研究科美術専攻 修士課程 修了(M.F.A.)

個展
2023年 「ヒーロー」(ARTDYNE、東京)

主なグループ展
2025年 第28回 岡本太郎現代芸術賞展(川崎市岡本太郎美術館、神奈川)
2024年 「Dimensional Fantasia」(GR gallery、ニューヨーク)
      「face to face Vol. IV」(Bunkamura Gallery 8/、東京)
2023年 木原幸志郎・木原健志郎 二人展(阪急メンズ大阪、大阪)
2022年 「はじまれり」(ARTDYNE、東京)
      AaP2022(ロイドワークスギャラリー、東京)
      木原幸志郎・木原健志郎二人展「Figure and Ground」(Artglorieux、東京)
      木原幸志郎・木原健志郎二人展「Stranger」(ロイドワークスギャラリー、東京)
      ブレイク前夜展2022(Artglorieux、東京)
      One FACE 2022(ロイドワークスギャラリー、東京)
      二次元派展(代官山ヒルサイドフォーラム・N&A Art SITE、東京)
2021年 木原幸志郎・木原健志郎二人展「Infinity Mirror」(Gallery A8T、仙台)

受賞歴
2025年 第28回 岡本太郎現代芸術賞入選(川崎市岡本太郎美術館)
2021年 FACE 2021入選(SOMPO美術館)
      muni Art Award 2021(ぎゃらりい秋華洞・高島匡夫賞)

助成
2021年 三菱商事アート・ゲート・プログラム スカラシップ
      一般財団法人村主現代芸術文化財団若手芸術家助成制度

メディア掲載
2024年 芸術新潮「山下裕二の新・今月の隠し球」4・5月号掲載
2022年 月刊公募ガイド「青くて熱い」2月号掲載
2021年 BSフジ「ブレイク前夜〜次世代の芸術家たち〜」出演

以上

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