[プレスリリース]平城京左京三条一坊二坪の発掘調査(平城第658 次調査)

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2024-01-25 12:00

概要

 今回の調査では、掘立柱建物群や掘立柱塀をはじめ、井戸と考えられる大土坑や礎石を捨てこんだ土坑群などを確認しました。計画的に配置された掘立柱建物群や坪内を区画する掘立柱塀など、平城京左京三条一坊二坪における土地利用の実態が明らかになり、その性格を考えるうえで重要な成果となりました。

1.調査の経緯と目的

 今回の調査地は、朱雀門の東南約200mに位置し、平城京左京三条一坊二坪にあたります(図1)。平城宮の正門である朱雀門に近く、朱雀大路、二条大路と近接していることから重要な場所であったと想定されています(図2)。現在、奈良県の地域デザイン推進局平城宮跡事業推進室では、平城宮跡歴史公園朱雀大路東側地区の整備に向けた検討を行っています。これにともない、奈良文化財研究所では昨年度より左京三条一坊二坪における遺構の様相を確認するための発掘調査を継続して実施しています。
 左京三条一坊二坪では、これまでに史跡平城京朱雀大路跡の整備に関わる発掘調査や、国土交通省の平城宮いざない館の建設にともなう事前の発掘調査が実施されてきました。これによって坪の西辺と北辺は築地塀で囲われた空間であったことがわかっています。ただし、これまでの調査はいずれも坪の周縁部でおこなわれたものであり、左京三条一坊二坪の中心部分の土地利用の状況はほとんどわかっていませんでした。
 昨年度実施した平城第650 次調査の南区では小型の掘立柱建物を検出しており、これによって坪の東南部の様相が明らかとなりました。坪の北部にあたる平城第650 次調査の北区では、小型の掘立柱建物や東西・南北方向の柱穴列、石が多数埋まった土坑を確認していました。
 今回の調査では、平城第650 次調査北区の成果をうけて、遺跡の様相を把握するべく西側に調査区を広げました。調査区は南北25m、東西45mで、調査面積は約1125 ㎡です(うち475 ㎡は平城第650 次調査北区と重複しています)。調査は2023 年10 月3日(火)から開始し、現在も継続中です。

図1 今回の調査区位置図
図2 今回の調査区周辺図

2.主な検出遺構(図3)

図3 第658次調査区遺構図 1:200

今回検出した遺構は、奈良時代とそれ以降の大きく2時期に分かれます。

奈良時代の遺構

南北塀

 調査区東部で検出した南北10 間(約24m)以上の掘立柱塀。調査区を縦断し、調査区外北方および南方へ続きます。平城第650 次調査南区では続きが確認できなかったため、二坪内の北部を東西に区画する塀と考えられます。

東西塀

 調査区南部で検出した東西約34mの掘立柱塀。東側で3間(約8.0m)、西側で5間(約13m)を検出し、中央部には約13mの空閑地があります。東端で南北塀に接続しており、西はさらに続く可能性があります。西側では南北流路と重複しており、東西塀のほうが新しいです。

建物1

 調査区東北部で検出した桁行3間(約5.4m)、梁行2間(約3.3m)の南北棟の掘立柱建物。南妻柱を欠いています。柱穴には柱根が遺存するものもあります。大土坑と重複しており、建物1のほうが古いです。

建物2

 調査区東北部で検出した桁行3間(約6.0m)、梁行2間(約3.9m)の南北棟の掘立柱建物。土坑群3と重複しており、建物2のほうが古いです。

建物3

 調査区中央部北半で検出した桁行3間(約6.0m)、梁行1間(約3.0m)の南北棟の掘立柱建物。土坑群3と重複しており、建物3のほうが古いです。

建物4

調査区西北部で検出した桁行3間(約6.8m)、梁行1間(約3.0m)の南北棟の掘立柱建物。南北流路と重複しており、建物4のほうが新しいです。

建物5

 調査区西北部で検出した桁行3間(約6.8m)、梁行1間(約3.0m)の南北棟の掘立柱建物。東西柱穴列、南北流路と重複しており、建物5のほうが新しいです。

建物6

 調査区西北部で検出した掘立柱建物。東西1間(約2.1m)、南北4間(約8.1m)を検出しました。調査区外に続くと考えられます。

南北柱穴列

 調査区東北部で検出した掘立柱の柱穴列。南北3間(約7.7m)を検出しました。南北溝と重複しており、南北柱穴列のほうが新しいです。調査区外へ続く塀か、建物の一部である可能性があります。

東西柱穴列

 調査区西北部で検出した掘立柱の柱穴列。 東西4間(約11m)を検出しました。南北流路、建物5と重複しており、南北流路より新しく、建物5より古いです。東端から北にのびるとみられる柱穴を調査区北壁で確認しており、調査区外北方にも続く可能性があります。

大土坑

 調査区東部で検出した一辺約2.7mの方形の大土坑。土坑の規模、形状や埋土の状況から、井戸の可能性が考えられます。建物1と重複しており、大土坑のほうが新しいです。

南北溝

 調査区東端で検出した幅50~60cm、深さ約50cm の南北素掘溝。調査区を縦断しており、調査区外北方および南方へ続きます。南北柱穴列と重複しており、南北溝のほうが古いです。溝の断面は逆台形状で、水が流れた痕跡は観察できないことから、比較的短期間のうちに埋め立てられたと考えられます。坪内を東西に区画するために掘られた溝の可能性があります。

南北流路

 調査区西部で検出した幅0.6~6.0m、深さ10~30cm の自然流路。調査区を蛇行しながら縦断しており、調査区外北方および南方へ続きます。流路の埋土は細砂~粗砂からなります。東西塀、建物4、建物5、東西柱穴列と重複しており、南北流路のほうが古いです。

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