市民参加型 筆順情報取得ウェブアプリケーション 「ナゾルクン」公開についてのお知らせ

古代文字体験・学習アプリケーション[ナゾルクン for Kids]

2022-04-19 14:10

概要

奈良文化財研究所では、科学研究費・基盤研究(S)「木簡等の研究資源オープンデータ化を通じた参加誘発型研究スキーム確立による知の展開」(研究代表者:馬場基)の交付を受け、東京大学史料編纂所・国文学研究資料館・国立国語研究所・京都大学人文科学研究所・中央研究院歴史語言研究所(台湾)等の研究機関・研究者で研究開発を進め、機関・国境を越えた歴史的文字の連携検索ポータルサイト「史的文字データベース連携検索システム」(https://mojiportal.nabunken.go.jp/)を2020年に公開しました。
このたび、上記ポータルサイトで公開している文字画像を活用した市民参加型 筆順情報取得ウェブアプリケーション「ナゾルクン」を公開しました。

ナゾルクン遊び方

内容

公開日

2022年3月25日

URL

アプリケーションの概要

・市民参加型の研究を実現するためのツールとして
  市民参加型 研究情報蓄積用アプリケーション[ナゾルクン for Academic]
  古代文字体験・学習アプリケーション[ナゾルクン for Kids]
を開発した。
・スマートフォンで利用可能なアプリケーションを公開することで、社会一般での広範な利用を促し、研究への市民参加という新たな研究のスタイルを試みる。
・現時点では、奈良文化財研究所所蔵木簡の約150文字が利用できる。
・2022年春ごろ、東京大学史料編纂所の電子くずし字データと連携予定

〇市民参加型研究情報蓄積用アプリケーション[ナゾルクン for Academic]

・オープンデータ化した古代文字画像を提供し、関心を持つ市民に画像上の文字を「なぞる」ことで筆順データを作成していただき、広汎かつ大量の古代文字筆順情報を蓄積するプロジェクト。
・筆順情報は、深層学習(AI)を含む文字自動認識研究を飛躍的に向上させる可能性が強く期待される他、文字そのものの研究を深める重要な情報である一方、これまではデータ化・取得が困難で、研究を発展させる分量を確保することはさらに困難であった。
・今回、ナゾルクン for Academic の開発・公開によって、こうした筆順情報の獲得および獲得作業への参加が飛躍的に容易になり、研究の進展が加速すること
が期待される。

〇古代文字体験・学習アプリケーション[ナゾルクン for Kids]

・日本文化を理解するために、その基礎の一つである文字文化の体験・理解は欠くことが出来ない。特に、我が国の将来を担う世代が、我が国における文字文化の来歴を追体験し、理解を深めることは極めて重要だと考える。
・こうした観点から、ナゾルクン for Academic の技術を応用し、また関連の研究情報を活用して、文字画像を「なぞる」行為を通じて我が国の文字文化を体験
しながら学習できるツールとして、ナゾルクン for Kids を開発した。
・研究者が作成した筆順情報をもった画像を用意し、その情報との差に基づいて判定を行う機能を付与することで、体験性・学習性を確保しつつ、ゲーム感覚を確保することを目指した。
・これによって、我が国の文字文化生成期における文字の書き方の体験学習が可能となり、併せて筆順・字形等の多様性・芸術性への気づきや、今日の標準化した文字文化成立に至る文化的展開への洞察を導くことができると考える。さらに、現在デジタルデバイスの普及によって、「入力」し「見る」ものとしての側面が強くなっている文字を、身体運動を通じて「書く」ものとして体感することが可能となる点も強調したい。

ナゾルクントップ画面

東京学芸大学附属 小金井中学校 教諭・田崎義久 氏のコメント

1)どのような点が寄与できるか

・木簡等に書かれた当時の漢字が今とは異なる字(形)であったり、その運順を自分で書く体験を通して理解を深めることができる。
・判定後のその漢字に関わる紹介で、木簡等に関する知識を深めることができる。

2)何が足りないか

・難解な漢字に興味を持っている漢字博士みたいな生徒は、ゲーム感覚でどんどん進めていくように感じました。一方で、一般的な生徒は何文字くらい進めていくのか(1回にどれだけ時間をかけられるのか)と思いました。授業の中で触れる時間は実際にはなかなかとれず、各自が家庭で取り組むことが主になるとしたら、中学生は結構忙しいからです。
・何の漢字かわからないものはとにかく書いてみますが、根拠があるわけではありません。回答を見て、その漢字だったかとわかる面白さがあるので、選ぶ漢字のバランスが重要かと思います。
・生徒が調べたい漢字を選択できると、時間短縮や個々の関心に応じて木簡等の文字から選べていいかと感じました。

3)どの部分を展開すべきか

・木簡等やそこに出てくる漢字は無数にあるので、教科書や資料集に掲載されている史料に関して、この漢字が面白いという部分を研究者の皆様の視点から選んでもらえるといいかと思いました。例えば、鮑などは授業でも出てきます。
・運順判定を体験しながら、奈良時代の人々の生活の様子がわかるようなストーリー性があると、素敵だと思います。紹介に出土した場所の紹介や遺物など、生徒の興味、関心を引く話題とつながると、もっと深まるように感じました。
・社会科に限らず、国語や書写の時間に扱う内容と関連させてみると、中学1年生の歴史的分野の古代の歴史を学ぶ時以外にも、使用する機会が増えると思います。

操作画面
答えの画面

問い合わせ先

独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所
史料研究室長 馬場基(ばばはじめ)
Mail:baba-h32@nich.go.jp
Tel:0742-30-6837

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