【名城大学】名古屋市科学館で吉野彰終身教授の特別講演会を開催
リチウムイオン電池の開発の意義や子ども時代のエピソードなどを紹介
2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰終身教授・特別栄誉教授の特別講演会が8月25日、名古屋市中区の市科学館内にある「あいち・なごやノーベル賞受賞者記念室」で開催されました。「リチウムイオン電池が拓く未来社会」と題した講演と「未来と自分」をテーマにした座談会で吉野終身教授は親子連れら約200人に、リチウムイオン電池の開発の意義や科学と出合った子ども時代のエピソードなどを語り掛けました。
「2050年には『AIEV』が活躍するサスティナブル社会が実現」と吉野終身教授
名古屋市科学館では2021年3月に愛知県と名古屋市によって地元ゆかりのノーベル賞受賞者の功績を伝える「あいち・なごやノーベル賞受賞者記念室」が整備されました。特別講演会はその一環として「科学に対する好奇心や探究心をはぐくむ機会に」と開催され、これに合わせて記念室では8月20日から25日まで本学が所有する吉野終身教授のノーベル賞メダルとディプロマ(賞状)のレプリカが特別展示されました。
講演会で吉野終身教授はまず、リチウムイオン電池の開発に至る経緯について説明。電池の小型化・軽量化に向けて、電気を通すプラスチック「ポリアセチレン」の活用を模索して「基礎研究に5年、商品開発に5年、認められるまでに5年、合わせて15年がかかった」と紹介。「モバイルIT社会の実現に大きく貢献」「サスティナブル社会の実現に大きな期待」の2点がノーベル賞受賞の理由になったと解説しました。
その上で吉野終身教授は「2022年にはリチウムイオン電池はEV(電気自動車)向けが主流になり、2050年には未来のモビリティ『AIEV』が活躍するサスティナブル社会が実現する」との見通しを示しました。最後にオゾン層破壊の問題を取り上げて「北半球は2030年ごろ、南半球は2055年ごろにはオゾン層は回復する見込み。この問題を克服したように、人類は地球温暖化の問題にも解決にたどり着くことができる」と力を込めました。
「未来と自分」がテーマの座談会では小学生から高校生までの6人の質問に答える
講演会後の座談会では、小学生から高校生までの6人の質問に、吉野終身教授は身振り手振りを交え、笑顔を見せながら次々と答えていきました。「小学生の時にやっておいてよかったことは?」との問いに「何でも実験しては確かめることが好きだった」と答える一方で、「図画工作をもっと勉強しておけばよかった。考えたことを言葉で説明しきれないとき、1枚のイラストで見せることができればと思うことがよくある」と明かしました。
また、次世代の電池について問われると、「エネルギー密度の大きい電池よりも、耐久性や劣化しないことを重視する流れになっている。今はそれぞれ半々だが、リサイクルがうまくいく技術かどうか、製品そのものをリサイクルしやすいものにすることが重要になってくる」と強調。高い性能を持ち、注目が集まる全固体電池については「量産化の技術がまだできていない。これからの研究開発次第」と指摘しました。
吉野終身教授のノーベル賞メダルとディプロマのレプリカはこの日は演台横で展示されたほか、吉野終身教授の生い立ちや研究内容、リチウムイオン電池の仕組みなどを紹介する「あいち・なごやノーベル賞受賞者記念室」の展示品も会場内に設置され、聴講した子どもたちや家族連れらが講演前や休憩中に熱心に見入っていました。