セラミド研究会学術集会で北海道大学と共同発表「乾燥肌と関わりの深い「結合型セラミド」の新たな可能性を発見」
大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区 社長:上原 茂](以下、当社)と、木原 章雄教授(北海道大学大学院薬学研究院)の研究チームは、角層の細胞間に存在するセラミドと肌バリア機能の関係を解明する研究を行ってまいりました。
その結果、角層細胞表面で角層構造やバリア機能に重要な役割を果たしている「結合型セラミド」の量が、肌が日常的に受ける紫外線などの外部刺激によって顕著に減少することを明らかにしました。結合型セラミドは、先天性魚鱗癬などの乾燥や肌バリア機能異常をもたらす疾患と強く関わることが知られている特殊なセラミドです。
なお、本研究成果は、「第15回セラミド研究会学術集会※1・第16回スフィンゴテラピィ研究会合同年会(2022年10月19日~21日)」にて発表を行いました。
※1 セラミドの機能性、代謝、安全性、体内動態に関する最新の研究知見が発表される国内唯一のセラミド専門学会
「セラミドと肌のバリア機能の関係」に関する研究成果の概要(イメージ)
結合型セラミドとは
●肌のうるおいに必須な、角層細胞と角層細胞間脂質をつなぎとめる特殊なセラミド
肌の最表面に位置する角層は、細胞同士の隙間にセラミド等の脂質が層状に重なることで異物の侵入を防ぎ、水分を保持するバリア機能を担っています。乾燥などによりバリア機能が低下した肌では、角層中のセラミドが減少していることが知られており、美しく健やかな肌のためには、角層細胞間脂質の状態を正常に保つことが重要とされています。
結合型セラミドは角層細胞表面に存在しており、一般的な遊離型セラミドと異なる非常に長い鎖状構造を持った特殊なセラミドです。この長い構造部分が角層細胞の表面タンパク質と共有結合し、CLE(corneocyte lipid envelope)と呼ばれるバリア機能に重要な保護層を形成しています(図1)。先天的に肌バリア機能が障害され、出生時から角層の異常と極度の乾燥を生じる先天性魚鱗癬のような疾患では、結合型セラミド等の超長鎖セラミド量が減少していることが木原教授らの研究により解明されつつあります。
結合型セラミドは角層細胞表面を覆うことで角層細胞を保護するとともに、角層細胞間脂質を角層細胞上で安定的につなぎとめるという、他のセラミドには見られない重要な役割を果たしています。このような背景から、当社では、千種類を超える角層セラミドの中でも、この結合型セラミドに着目し、研究を進めてまいりました。
研究成果
●外部刺激を受けた肌では、結合型セラミドが顕著に減少していることを発見
今回、当社は、ヒト三次元培養表皮を用いた結合型セラミド量と肌バリア機能の評価系を確立しました。本評価系を活用し、肌が日常的に受け得る紫外線や化学物質(SLS※2)などの外部刺激の肌への影響を評価したところ、肌バリア機能が低下することが認められました(図2)。
さらに、外部刺激を与えたヒト三次元培養表皮では、セラミドの中でも特に結合型セラミドの量が顕著に減少していることが明らかとなりました。セラミド組成を分析※3した結果、一般的な遊離型セラミドであるNSタイプのセラミドに比べて、結合型セラミドであるP-OSタイプのセラミドが極端に減少していました(図3)。
NS:遊離型セラミド、EOS:結合型セラミド前駆体、P-OS:結合型セラミド
※2 ラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate)、洗剤等に使用される陰イオン性界面活性剤の一種
※3 高速液体クロマトグラフ(HPLC)とタンデム質量分析計(MS/MS)を組み合わせたLC-MS/MSによる分析。千種類を超える角層セラミドの中で、特定のセラミドを区別して分析できる技術を木原教授らが確立している。
※4 ヒト三次元培養表皮中の主要なセラミド(NS、EOS、P-OS)の分析結果
今回、これまで先天性魚鱗癬などの疾患と強く関わることが知られている結合型セラミドが、肌が日常的に受ける紫外線などの外部刺激によっても顕著に減少することを明らかにしました。
セラミドは、種類によって役割や機能が異なるため、健やかで美しい肌のためにはセラミドの種類に着目することが重要と考えています。その中でも当社では、結合型セラミドを肌バリア機能の鍵のひとつと捉えて着目し、今後も研究を継続してまいります。
さらには、これらの研究成果を、乾燥肌やエイジング等の肌の悩みに寄り添うスキンケア商品の開発に応用してまいります。