避難所でのコロナ感染防げ 建築士が避難所レイアウト設計
全国的にも珍しい取り組みで建築士会とNPOが連携
新型コロナウイルス感染症の流行にともない、避難所における感染症対策が急務となっています。特定非営利活動法人アジアパシフィックアライアンス・ジャパン(A-PADジャパン)(代表理事:根木佳織 本部:佐賀県佐賀市)は、一般社団法人佐賀県建築士会と連携し、感染症に配慮した避難所レイアウト設計(動線と配置の設計)を行いました。
■ 建築士会とNPO、両者の思いをきっかけに実現
災害が起こるたびに繰り返される避難所での生活環境の悪化やプライバシー問題、行政職員の負担増。避難所の環境改善を模索してきたA-PADジャパン、建築士として安心・安全な避難所をつくりたいという両者の思いが一致して取り組みが実現しました。
今回、避難所レイアウト設計にあたったのは、佐賀県建築士会理事の川崎康広氏を中心とする危機管理対策部会の有志メンバー4名。レイアウト設計を行った施設は、2019年の九州北部豪雨(佐賀豪雨)の際128世帯、205人が避難した大町町(おおまちちょう)公民館です。大町町では災害後、防災訓練や防災備蓄、民間企業との連携などの対策が進められており、今回の避難所レイアウト設計のモデル事業に協力を得られることになりました。
レイアウト設計にあたっては、パーティションの配置の他、健康管理スペースを設ける、避難者と健康管理が必要な避難者の動線を分けるなど感染症に配慮した他、大町町では、災害支援団体や、民間企業、自衛隊などの支援を受け入れた経験から支援者用のスペースもあらかじめ設けています。
感染症対策については、行政の施策と一致するよう、佐賀県の作成した新型コロナウイルス感染症に対応した避難所運営マニュアル作成指針にもとづいた内容にするとともに、避難所での感染症対策に詳しい医師の意見を反映して作成しています。
完成した避難所設営レイアウトは、公民館に常時掲示し、避難所のイメージを日頃から住民に理解してもらう計画です。
避難所設営計画は、行政職員間で共有されるのが一般的ですが、住民、支援者とも共有するのは全国でも珍しい試みです。関係者が認識を共有することで、住民や支援者が避難所運営に協力しやすくなることが期待できます。
■ 佐賀県建築士会のコメント
A-PADジャパンと共同で実際の避難施設をモデルに事前検討を進めたことで、あらためて迅速な避難所設営や住環境改善の必要性を認識すると同時に、心理的にも避難のハードルを下げることの重要性を実感しました。
今後も平常時、災害時、被災後を問わず、どの場面においても、生活を守るための住環境を考えるお手伝いができるよう取り組みを続けていきたいと考えています。
今回作成した避難所設営レイアウトは、訓練や実際の災害時の活用状況を踏まえて随時更新を行う計画です。
1F部分ポイント
・検温や受付に時間がかかることから、受付は避難所の入り口より中に設置
・健康管理が必要な避難者は別の入り口から避難所に入るよう動線を分けた(赤線)
・(事務室)行政支援者待機・支援者ミーティングスペース
・(応接室)支援者仮眠室
・(調理実習室)炊き出し用支援者調理スペース
・(団体連絡室)支援物資保管庫
・(図書室の小上がり)予備スペースは学習スペースや幼児の遊び場にもなる
・(図書室)健康相談スペースは体調に不安がある方の一時休憩室や健康相談を行う
・(倉庫)支援者更衣スペース
・(管理人室※現在は使用しておらず一部改修が必要)健康管理スペース
・屋外 洗濯機設置、物干しテント、ごみ集積場
2F部分
・高齢者や妊産婦、乳幼児のいる家族などが過ごすスペース(要支援者は大町町総合福祉センター美郷に避難)
・換気に配慮し、避難スペースごとに窓に面するよう配慮した
・廊下の間仕切りは避難の際には簡単に撤去できる
3F部分
・備蓄しているパーティションを配置
・更衣室や、休憩・コミュニティスペースを設けた
【特定非営利活動法人アジアパシフィックアライアンス・ジャパンについて】
本部:〒840-0831 佐賀県佐賀市松原1-3-5まるなかビル6F
設立:2015年
URL:https://a-padj.org/index.html
事業内容:
・緊急人道支援活動
・復興支援活動
・防災や減災のための活動等