「引退ではなく○○」アスリートの人生について
元メジャーリーガー川﨑宗則氏をお迎えし「アスリートビジネスサミット」開催報告
株式会社A.B.United(本社:大阪市、代表取締役:中田仁之、以下ABU)はアスリートに”セカンドキャリア”という言葉が使われない社会を実現すべく、アスリートに特化したビジネス教育を提供し、就職・起業などの次の一歩=ネクストキャリアをプロデュースしています。
日本のプロ野球でも第一次戦力外通告が始まりました。プロアスリートにとって、またアスリートを支援する弊社にとっても今年もまた辛い季節となりました。
さる9月16日、「アスリートビジネスサミット」を熊本市で開催いたしました。
元メジャーリーガーであり現役プロ野球選手である川﨑宗則さんをゲストにお迎えし、ABUアドバイザーでもある株式会社ペライチ創業者会長の山下翔一さんと私でトークライブをさせていただきました。
(写真: 未来フォト 丸山京子 以下all)
第1部「ドラマじゃない?アスリートのセカンドキャリアの現実と課題」
まず最初に川﨑さんがおっしゃったことは「アスリートに引退という言葉はふさわしくない」ということでした。
「引退というのは事業を辞める時、すなわちリタイアする時に使われる言葉であって、プロ野球選手でなくなることは引退ではなく”NPBを卒業”することだ」
とお話しいただきました。
引退ではなく卒業と考えたら、「卒業おめでとう、これからはもう野球しなくていい、自由に何でもできるんだよ」という発想になる。起業するにせよ就職(転職)するにせよ、自分で進路を決めることができる。
そもそも、プロ野球選手になる方法は「ドラフト会議」で選ばれるしか道はなく、そこにはコネも何も通用しない上、「くじ引き」で就職先が決められるという手法が採用されています。
自分の人生を左右するかもしれない就職先をくじで決められる、これが当たり前になっている現実ですが、そもそも違和感を感じます。
プロ野球選手に「受け身」な方、つまり「周りの誰かがお膳立てしてくれるだろう」という待ちの姿勢が多いのは、高校も推薦、大学も推薦、プロになるのもくじという「自分で自分の人生を選ぶ機会が与えられなく思考停止の状態で育ってきた」環境にも問題があると言えます。
プロだけではなく、高校野球の世界にも課題はたくさんあります。
「甲子園行くぞ!」だけが価値観でありその他のことは考えなくて良い、恋愛禁止、スマホも禁止、野球以外のことは何も知らなくて良いという思考停止状態で多感な高校3年間を過ごすことによる弊害が「自分の人生を決める力が弱い」ことに繋がっているのかもしれません。
川﨑選手は高校生の頃、野球の傍ら「バンド活動」もしていたそうで(すぐに監督に見つかってバンドは辞めたそうですが)、強豪校→寮生活→甲子園で活躍→ドラフト、という王道ど真ん中を歩いてきたわけではない「幅」が、社会人になってから非常に活きているとお話しいただきました。
日本ではひとつのことに集中して、その道を極めることに邁進することを良しとする風潮がありますが、多様性のこの時代ではそぐわなくなってきていると思います。メジャーリーガーでも教員をしながらプレーをしていたり、事業をしながらプレーしている選手がほとんどであり、「野球しかしていないこと」に対するリスクを理解しているとも言えます。
「ひとつのことだけじゃなく、色んなことを経験して人としての幅を広げていくことが社会では必要」だと山下会長もお話しくださいました。
「もうそろそろ卒業かな・・・」と選手は自分でわかります。しかし、誰にも相談できないまま、不安を抱えて悶々とした時間を過ごします。実際の戦力外通告は、球団事務所でわずか25秒ほどで「お疲れ様でした。来期は契約しません」と言われるそうです。
野球はすべてサインで始まります。キャッチャーからのサイン、監督からのサインを見ることから始まります。つまり誰かの指示を仰ぐクセがつきやすく受け身になりやすい傍ら、サッカーやラグビーはいざ試合が始まったら全て選手達で考え自主的に動く状況判断が必要なので、空間認知能力も含め同じアスリートでも動き方や考え方が全然違います。
アスリートの課題として、わからなくても怒られたくないからとりあえず「はい」という思考停止な環境も挙げられます。また、失敗したら怒られるから失敗を異常に怖がる風潮もあります。
特にアスリートに対しては、わからないことはわからないと言える環境、自分で考えて挑戦し失敗できる環境が大事であり、ABUが提供している「わからないことを素直にわからないと言える場所、安心して挑戦して安心して失敗できる環境作り」が必要だと考えています。
他にも、メンバー外(補欠)の問題、ビジネス界における経営者感覚、当事者意識の問題など様々な角度から「スポーツとビジネスの融合」についてお話しさせていただきました。
川﨑選手、山下会長、素晴らしいお話をありがとうございました。
第2部「「アスリートが社会で活躍するためには何が必要だろう?」
第2部ではABUで学ぶアスリート受講生が登壇し、パネルディスカッションを展開しました。
登壇してくれたアスリート受講生は
香月良仁(元プロ野球選手・熊本で会社経営)
馬場賢治(元Jリーガー・大阪で会社経営)
という元アスリート経営者と、
元脇周也(パーソナルトレーナー)
原田拓也(理学療法士・病院勤務)
というアスリートを支える側のメンバーでトークセッションをお届けしました。
テーマは「アスリートが社会で活躍するためには何が必要だろう?」
第2部ではフリップを用いて、アドリブトークを展開しました。
例えば、「社会に出てから最初に感じたギャップについて」
○社会では、失敗を取り返すことに時間がかかる
○引退してマクドナルドを堂々と食べられるようになった
○自分という人間が試されている
○社会では意外と認知されていない
などの言葉が出てきました。
香月さんの失敗談として、このサミットの翌日と翌々日に予定していた「熊本福幸スポーツフェスティバル」というイベントの話をしてくださいました。
元々、このサミットを熊本で開催した目的は「香月さんのフェスを応援するため」でした。
しかし、台風直撃により結果として2日間共フェスは中止にせざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。
香月さんは「いいネタができました」と笑っていましたが、決して心の底から笑っていたわけではなく、悔しくて悔しくて仕方なかったと思います。
決して香月さんが悪いわけではない中、頭を下げながら会場の方々にジュースを配る香月さんの姿に胸が締めつけられました。
13年間で7つのJリーグクラブを渡り歩いた馬場賢治さんは、「失敗を切り替えているので覚えていない」と言います。
常に前を向いて「次はどうしよう」という思考の持ち主なので、失敗したことをその場で反省し改善点が見つかれば忘れる、という思考回路がすでに出来上がっています。
既に社会人としてアスリートをサポートしている原田さんからは「技術ではなくスポーツに対する向き合い方や姿勢、努力できる才能が社会で上手くいくアスリートの共通点」だと話してくれました。
元脇さんからは「スポーツの成績ではなく、人気よりも人望のある選手が社会でも上手くいくのではないか」と話してくれました。
会場の方からの質問にもお答えしました。
「アスリートが社会のリーダーになるためには何が必要だと思われますか?」
というご質問に、
○社会起業家になること
○コミュニケーション能力
○決断力
○自分の特徴を知ること
などアスリートの視線から真摯に回答していました。
最後にAthletes Business Unitedの使命についてプレゼンテーションをさせていただきました。
ABUにつきましてはこちらのホームページをご覧くださいませ。
アスリートに特化したビジネス教育機関「ABU」では、
・ここでビジネスを学びたい
・現役選手としての自分の価値を高めたい
・引退後のために準備がしたい
というアスリート受講生を募集しています。
第8期は11月21日〜2023年3月31日まで、オンラインで講義を提供しています。
また、アスリートの採用をご検討いただける会員企業様も募集しています。
一般の採用市場には現れない、学ぶ意欲に溢れるアスリートが多く在籍しています。
アスリートの方、企業の方で弊社に興味のある方は、ホームページよりお問い合わせいただくか、資料請求をお申し込みくださいませ。
アスリートの方はこちら
https://ab-u.co.jp/admission-information/document/
採用をご検討いただける企業の方はこちら
https://ab-u.co.jp/supporter/inquiry/
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