メスを使った美容外科手術はもう古い!?術後のダメージが残る施術には要注意
バストを大きくするならシリコンバッグ挿入――この考えは、長らく美容クリニック業界の常識でした。
ジェル状の内容物を入れたシリコンの袋をバストの中に挿入して物理的に大きく見せるという手法は1960年代に開発され、アメリカやフランスを皮切りに世界中へと広まっていきました。
「バストアップしたい分のバッグを入れる」ため、結果がわかりやすく、今でも海外では豊胸術の主流となっています。
しかしここに来て、日本の豊胸術は大きな転換期を迎えています。
その理由の1つは、豊胸術を受けたことによるリスクを心配する人が増えてきた点にあります。
シリコンバッグ挿入法で体内に袋を入れるためには皮膚を切開する必要があり、全身麻酔による手術となります。術後の傷が治るまでには時間がかかるとともに、一定期間強い痛みが伴います。
「侵襲(しんしゅう)」と言う言葉はご存知でしょうか。
トリオ芸人の1人が、整形外科的な手術後の侵襲によって「うつ病」を発症したというニュースは記憶に新しいのではないでしょうか。
医療用語として侵襲という言葉が使われる場合、医療行為によって生体に悪影響が及ぶことを指します。外科手術で体にメスを入れることはもちろん、薬剤を投与して体に変化をもたらす行為も、副作用がゼロではないので侵襲と呼びます。また術後、メンタルに影響が出現した場合も侵襲の1つと捉えられます。
特に外科的な手術の侵襲は、体に大きな影響をもたらすことで知られています。メスで傷つけられた部位の細胞は死滅し、傷のついた周囲では炎症反応が起こり多数の白血球が使われます。また傷を治すために組織が固くなり、場合によっては内臓や筋肉、神経の働きに影響を及ぼすこともあります。さらには手術の際に使用される麻酔も、体へ負担をかけ侵襲となります。
そうした事実を知った人たちが、メスを入れる豊胸術を躊躇し始めたとしても不思議ではありません。AIの技術が進化し、さまざまな分野がデジタル化される一方で、体には「よりナチュラルなもの」を求める人が増えています。まさに、現代社会の縮図が豊胸術の世界でも描かれ始めているのです。
美容クリニック業界では、できる限り体への侵襲を抑えたうえで、理想のバストに近づける豊胸術を模索してきました。
今回は、メスを入れる豊胸術がいかに体に負担をかけるかを知っていただくとともに、術後の体に優しく、侵襲を最小限に抑えた、最新の豊胸術を紹介していきましょう。
豊胸手術経験者の悲惨な体験談が恐怖をあおる
全身麻酔で重度の脳障害に陥ったケース
メスを入れてシリコンバッグを入れる従来の豊胸術のメリットは、先述した通り、大きくしたい分だけバストアップが可能になる点です。大きさだけでなく、ジェルのタイプによって手触りのチョイスもでき、挿入する場所によってバストの形を理想に近づけることもできます。
反面、手術という大掛かりなステップを経なければならないという点はリスクといえます。なかでも手術の際に行われる「全身麻酔」は体に大きな負担を強いるものです。
2019年末にも、アメリカで18歳の女性が豊胸術の麻酔によって脳に重度障害を負ったことが報じられました。麻酔を受けた直後、二度も心肺停止状態になったにも関わらず、患者さんから目を離していたために対処が遅れ、取り返しのつかない事故へとつながったのです。この事故が世界的に報道されたことで、「豊胸術は怖い」という印象が強まった感があります。
もちろん現実的には、豊胸術の麻酔トラブルが頻繁に起きているわけではありません。しかしゼロかと問われれば、答えはNO。世間的には明るみにでていなくても、豊胸術の麻酔によるトラブルは、日本でも水面下で起きているのです。
なぜ、豊胸術で全身麻酔が必要なのか
「シリコンバッグ挿入法」で、全身麻酔が必要となるのはなぜでしょうか。
シリコンバッグは手のひらほどの大きさがあります。バスト内部に挿入するためには、脇の下、またはアンダーバストを数センチにわたって切開する必要があります。
メスを入れるのは体の表面だけではありません。バッグを挿入する位置は、仕上がりの形や大きさ、患者さんの年齢によって「大胸筋下」「乳腺下」「胸筋膜下」と異なりますが、いずれにしてもバスト内部の組織にも傷をつけ、バッグが入るスペースをつくる必要があります。
それは体内の組織を引きはがすようなイメージです。血管や軟部組織などを傷つけるので、皮膚表面の痛みに加えて、バスト内部の痛みも加わります。痛みは耐え難いほど大きなものになるので、全身麻酔が必須となります。
部分的に痛みを除去する方法もないわけではありません。クリニックによっては部分的に神経をブロックする硬膜外麻酔を選択する場合もありますが、脊髄のすぐそばにある硬膜外に針を刺す技術は大変高度なもので、 麻酔専門の医師か、かなり熟練した医師以外が行うのは非常に危険です。そのため豊胸術では局所麻酔よりも全身麻酔が優先されるのです。
全身麻酔は薬を体内に入れるだけで簡単そうに思えるかもしれませんが、アメリカの事故の例でもわかる通り、麻酔の量や種類の選択はもちろん、術中の管理が適切に行われないと、命に関わる重大な事故の原因になりかねません。
シリコンバッグ挿入法を毎日のように行うクリニックでは、麻酔専門の医師を常勤させる必要があるでしょう。しかしコストがかかることから、現実には執刀医が麻酔の管理も行っているケースが目立ちます。
このような現状こそが、豊胸術の全身麻酔でトラブルが起きる原因となってしまうのです。
麻酔事故が社会的に公表されない理由
豊胸術は執刀医の技術とセンスが大きく問われる施術です。医師は神経を張り詰め、指先の感覚を研ぎ澄ませて手術に当たります。その状況で、患者さんの呼吸や血圧を常に管理しながら、麻酔の調整まで行うとなれば、医師の負担は非常に大きなものとなります。
もちろん、ほとんどのクリニックは事故を起こすことなく、シリコンバッグ挿入法を麻酔の専門医不在のまま続けています。ただ残念なことに、現実には事故は起きているのです。適正な麻酔でも事故が起きることはありますが、明らかな麻酔コントロールミスによって、心停止や高度低血圧症、高度低酸素血症などを引き起こし、命を左右する事態に陥っているケースが少なからずあるのです。
訴訟になれば表沙汰になりますが、患者さん家族とクリニック側の話し合いによって示談となれば、事故は封印されます。そのような事例が現実に存在しているということは、全身麻酔を必要とする豊胸術を考えている人には、知っておいてほしいと思います。
シリコンバッグの破裂事故が多発している!?
麻酔以外にも、メスを入れるシリコンバッグ挿入法には危険な面が隠れています。
「豊胸した胸が破裂した!」
という噂話を聞いたことがあるかもしれません。豊胸を考えている人にとっては非常にショッキングな話で、「やはり豊胸は怖い!」と恐怖感をあおる噂でもあります。
この、「胸が破裂した」という表現は誤りで、正しくは「バスト内に挿入したシリコンバッグが破れた」のです。バストそのものが爆発するようなことはまず起こりません。しかしバスト内でシリコンバッグが破損すれば、バストの形を維持することはできなくなります。加えて、バッグの中身がバスト内に流出するわけですから、体にとって良くないことは明らかで、すぐにバッグを抜去する手術が必要になります。
シリコンバッグが破損する原因はさまざまですが、物理的に強い力が加わるのが一番の要因となります。事故などで胸を強打したり、極端に強いマッサージを受受けたりするほか、乳がん検診のために行われるマンモグラフィ検査で破損することもあります。
とはいえ、バッグの破裂は簡単には起こりません。ただ、昨今はSNSの発達によって、たった1つの例でもあっという間に話が拡散し、恐怖を助長しているのかもしれません。
知らない間にバッグが破けてしまう恐怖もある
事故などで強い刺激を受けてシリコンバッグが破損した場合には、患者さん自身が違和感で気づくことができます。しかし、強い刺激が加わったわけではないのに、バッグに小さな穴が開いたり、 破れたりしてしまうことがあります。破損の原因は、バッグの挿入位置の問題や、バッグの劣化などが考えられます。
こうしたケースでは、患者さん自身がバッグの破損に気づかず、長期間、バスト内に破れたバッグが放置されてしまうという問題が生じます。
バスト内に挿入されたシリコンバッグの周囲には、被膜と呼ばれる膜が形成されます。そのため、バッグの内容物は被膜の内側に留まっていることが多く、時間とともに少しずつ被膜外に漏れ、炎症を起こします。
そうなると、少しずつバストの形が変わってきます。バストがしぼむ、乳頭の向きが変わる、シワができる、コブのようなものができるなど、外から見てもわかるほどの変形も起こり得ますが、変化がゆっくりであるために気づかれにくいのも事実です。耐え難い痛みが発生して、ようやくバッグ破損の判明に至ることも少なくありません。
痛みに弱い人でもチャレンジできる豊胸術とは?
脂肪注入法でも術後の痛みは続く
シリコンバッグ挿入法ではメスを使い、麻酔をかけるために、体への負担が大きくなります。さらにシリコンバッグの破損リスクもあります。しかし、多くの人が恐れているのは、術後の痛みにあるのではないでしょうか。
ケガや病気で手術をした経験のある人はご存じだと思いますが、手術の傷が癒えるには相当の時間がかかります。帝王切開で出産した女性が、出産後3週間くらいは痛みに苦しみ、赤ちゃんのお世話が大変だったと語ることもあります。
豊胸術でも、体を傷つける部位が広いほど術後の痛みが引くのには時間がかかります。つまりシリコンバッグ挿入法だけでなく、ここ十年ほどで増加している「脂肪注入法」も、痛みが伴う豊胸術の1つだといえます。
脂肪注入法では、患者さん自身のヒップや太ももから脂肪を吸引する必要があります。吸引はカニューレと呼ばれるストロー状の器具で行います。傷口は小さくても、1カ所でたくさんの脂肪を吸引すると、体に凹凸ができてしまいます。そのためカニューレの先を様々な方向に動かし、広い範囲から脂肪吸引を行い、ボディラインをなめらかに仕上げなければなりません。
カニューレが入っていく部位では、血管や組織が傷つきます。その傷が癒えるのには時間がかかり、長い人では術後数週間も鈍い痛みが続くのです。鎮痛剤で我慢できる人もいれば、痛みで仕事や家事ができないと訴える人もいます。
このように痛みに弱い人にとっては脂肪注入法も完璧な豊胸術とはいえないのです。
注射のみの施術。痛みをほとんど感じない豊胸術
これまでの豊胸術は、いずれにしても痛みとは無縁ではありませんでした。しかし、近年、痛みをほとんど感じない豊胸術が誕生しました。
それが「成長再生豊胸」です。
メスを使わず、全身麻酔も行わず、体内の組織を傷つけることもありません。バストが自然に成長するように、「成長因子」の含まれる注射を打つだけ。注射の針が皮膚に刺さる刺激はありますが、他の豊胸術のようなつらい痛みは感じません。豊胸術のなかで、ダントツに侵襲の小さな方法だと断言できます。
「成長再生豊胸」は ダウンタイムが最小限
メスを使った手術は、術後数週間、痛みとの格闘があります。また入浴を禁じられたり、うつぶせで寝られなかったり、 運動ができなかったり、といった生活制限が必要になる施術もあります。
しかし、成長再生豊胸は普段の生活スタイルを変えることなく施術を受けられます。施術時間も注射だけでごくわずか。施術当日からシャワーを浴びることもでき、施術後に仕事や家事を行っても問題ありません。
美容クリニックの施術では「ダウンタイムはどれくらい?」と、患者さんからよく質問されますが、成長再生豊胸にはダウンタイムと明言できるような症状はほとんどありません。術後1週間くらいはバストが張ったような感じがありますが、ひどい痛みがあるわけでなく、成長期や生理時の胸の感覚と似たものです。
これまで痛みやダウンタイムを危惧して、豊胸術に踏みきれなかった人は、成長再生豊胸が夢を叶える唯一の方法となるでしょう。
南クリニック院長:南晴洋
京都第二赤十字病院形成外科勤務、大手美容外科院長を経て1997年 南クリニック開業。創業以来、豊胸に力を入れている。注射で豊胸を行う「成長再生豊胸」を海外の学会でも発表。