IEEEメンバー 北沢 祥一教授が提言  「設立から40周年を迎えたIEEE802規格の未来」

2020-04-06 13:30

IEEE(アイ・トリプルイー)は、数多く定めてきた標準規格の中で、ローカルエリアネットワーク(LAN)メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)関連の規格であるIEEE802についてその規格などを議論する標準化部門が1980年2月に設立してから40年を迎えました。
IEEE802はインターネット通信に深く関わり、世界的な経済・社会の活動に不可欠な諸技術の標準規格を定めており、40年を過ぎても活発な標準化活動を進めています。
40周年という節目を迎えたIEEE802について、IEEEメンバーの北沢 祥一室蘭工業大学教授は、近年、ビッグデータを蓄積し利活用するケースや、クラウドコンピューティングの普及により大容量、高速通信の需要が以前より増していると説きます。また、今後も産業界などでIoT(モノのインターネット)の導入が進めば、IEEE802規格利用する機器が爆発的に増加するため、IEEE802の役割は一層重要になると訴えています。

IEEE802の概要

IEEE802は有線、無線でのLAN/MANに関する技術規格をテーマごとにワーキンググループ(WG)に別れ、企業、研究機関、大学などからの参加者が議論を進めています。現在活動しているWGはネットワークセグメントの接続やシステムの構造を担当する802.1や、イーサネットを担当する802.3のほか10のWGです。
北沢教授によると、WGには栄枯盛衰があります。形が定まった規格、世の中に合わなくなったWGは休止します。例えば、「ライセンスバンドを使ったブロードバンドワイヤレスアクセス」の標準化を担当する802.16は一時300人以上が参加する大きなWGでしたが、2018年頃には参加者が数人に減り、休止しました。

ワーキンググループの現状

いま活発なWGは802.3や802.11である。802.3はイーサネットを担当しており、自動運転や車載器の進化に不可欠な通信技術である。早い時期に動きだしたWGながらいまも活発な議論が続いています。内容は、通信データの大容量化のほか、センサーとの接続についてなどです。
無線LANを担当する802.11は1997年に始動した。無線通信については、ワイヤレス・スペシャリティー・ネットワーク(WSN)を担当する802.15も重要だ。特に誰でも手軽に利用できるセンサー用無線ネットワークやIoTの進展には必須の分野である。IEEE802の中でもひときわ重要性が増しています。

IEEE802 ワーキンググループ一覧

IEEE802の今後と日本

通常、IEEE802は、奇数月ごとに会議を開催しており、3月、7月、11月にプレナリー(全体会議)が開かれ、通常は700から800人が参加します。1月、5月、9月には有線と無線のWGに分かれてインターリムと呼ぶ会議があります。会場は米国が主で、その他アジアやヨーロッパで開催されます。日本では10年ぶりに2021年札幌での開催を予定しています。
IEEE802の中での日本については、北沢教授は「かつては、無線のチップセットを開発している企業もありコアな技術に関してさまざまな提案をしていた。だが、近年は提案を継続して行う企業もあれば、動向把握が中心になっている企業もある」としています。日本はIoTやロボット技術を活用した製造業の高度化を狙うなど、IEEE802とは切っても切れない関係です。このような中で、今後、日本は存在感の維持・向上の為にも、技術提案だけでなく市場をドライブする場として、積極的な参加が必要になります。
今後も大容量、高速、通信機器の増加というテーマに対応し続けるIEEE802は、引き続き、世界的規模で社会に影響し続けます。

北沢 祥一(きたざわ しょういち)
室蘭工業大学大学院工学研究科 航空宇宙システム工学コース所属。専門分野はマイクロ波工学、無線通信。無人航空機用の無線通信システムやセンサネットワーク用無線の研究を進めている。

IEEEについて

IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。
IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2,000以上の現行標準を策定し、年間1,800を超える国際会議を開催しています。

詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。

室蘭工業大学大学院 北沢 祥一
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