”介護難民””介護離職”を防ぐ「介護コメンテーター」
介護に関する全ての人に、必要な情報を届ける。
介護は誰にとっても深刻な問題として訪れる。だが多くの人が、介護の問題にぶち当たる前に「介護と向き合うための知識」をつけることはほとんどない。そしてそれらの情報を、どう手に入れていくのか?も介護のスタートラインに立った者にとっては高いハードルとなり得てしまう。
そんな中、必要な人に必要な情報を届けるために一般社団法人 日本顧問介護士協会の代表としてだけでなく、”介護コメンテーター”としてもメディアなどで活躍しているのが石間洋美さんだ。
「高校生の時、参加したボランティア活動で初めて”介護”という仕事に出会いました。元々、人の役に立つ仕事がしたいという気持ちはあったのですが、介護施設などに行くだけで自分が行っただけで笑顔になってもらえたり、来てくれてありがとうと言われる現場は他にはなかなかないと思ったんです。
実はいじめを経験したこともあり、人も信用できなかったり、自分が生きている価値ってなんだろう?と思い悩むこともあり、だからこそ「自分が存在している意味」「自分が人の役に立てること」って何なのか?と長い間向き合ってきました。
そんな中で出会った”介護”の仕事で「若い子と話すだけで元気が出るよ〜」や「あなたが来てくれて嬉しい」という言葉をたくさんいただき、私が笑顔になると向こうも笑顔で応えていただき、実習が終わる時に私と離れるのが寂しいと泣いてくださった方もいました。
介護を通して、自分が与えることで逆に与えられるものがあるということを知り、”視点”を変えていただいたのです。
介護させていただく方は、人生の先輩でもありますが良い意味で”対等”であり、だからこそ相互的に”存在に対する肯定”が生まれ、それが私にとっては自分自身を肯定する”糧”でもあります。」
介護の様々な現場を経験してきたからこそ発信できること
介護というと、”辛い””苦しい”などのネガティヴなイメージが先行するかもしれないが、石間さんは介護によって”喜び”や””自己肯定感”というポジティブな感情を得られることが出来たという。
そんな石間さんが取り組む”介護コメンテーター”という役割は一体、どんなものだろうか?
「私は福祉の分野で介護の専門的な学校を出て、現場の経験だけでなく、介護の事務職、介護相談を受ける相談員、施設運営のマネージャーなど様々な介護福祉に関する経験をしてきました。
だからこそ色々な立場の方々の気持ちを理解し、寄り添うこともできると考えています。
何よりも、それぞれの立ち位置から介護の現場の環境を変えていくことも重要で、それぞれの立場と役割で、介護に対する見方も違います。
過去にも介護に関する著書や講演会をしていらっしゃる方はいましたが、介護に悩む方達はもちろんですが、介護従事者やその周りの家族にとっても必要な情報や視点を発信することに特化し、メディアを通じて活動しているのが”介護コメンテータ”という役割です。」
介護は実は、される側だけの問題ではなく、する側にとっての問題も日々生まれており、人が人を介護するという難しさは両者に存在しているのだ。
そんな石間さんは”医療福祉接遇インストラクター”という資格を持ち、だからこそサービス業としての介護の難しさにも手を差し伸べるような研修などが行えるという。
「介護といってもその実は”サービス業”です。皆さんがイメージされるのは介護サービスを利用する側とされる側の人間関係の難しさかもしれませんが、サービス業であるということに対する自覚はその人の価値観によって左右されてしまうという現実があります。
例えば、体臭に関しても意識の高い人もいれば、低い人もいます。
クレームが入って上司が注意しても直らなかったり、傷ついて辞めてしまうケースもあります。そうなってくると介護の現場はただでなくても人手不足なので、注意する側も”注意しにくい”となってしまうのです。
それだけでなく、ベテランになればなるほど自分の技術力に自信を持っているからこそ、一人一人にあった介護を提供することが逆に難しくなることもあり、これもまた注意し、改善させることが難しいケースです。
そういった場合に”医療福祉接遇インストラクター”として、堂々と研修として介護利用者への接し方やマナーなどをお教えすることができるので、そういった研修を定期的に行うことは長期的にみて介護の人手不足や、利用者の不満が減るという利点に繋がるでしょう。」
介護難民と介護離職を減らすために
様々な視点から”介護”の現場を良くするための活動をしている石間さんだが、これからどんな活動につなげ、理想の介護社会を作り上げていきたいのか?最後にその展望について伺ってみた。
「まずは介護の情報を得るためのハードルを社会全体で下げていくことが最も重要だと感じています。私どもで開発し、運営している「AWANAIケアマネ」はLINEを活用した介護相談ツールで、いわば365日対応の”無料のオンライン介護相談所”です。相談者数の累計1000人を超えました。介護を利用するために必要な書類を揃えるなどの煩雑な過程を少しでも「AWANAIケアマネ」で負担することにより、役所の窓口の負担と介護難民を減らすことに繋がります。
また、介護はどれだけ長くかかるかは未知数です。そんな中で収入は必須となりますし、介護を原因に離職されるのは会社にとっても大きな損失となります。
だからこそこれからの時代の福利厚生として顧問介護士を導入していただき、介護離職を防ぐことに貢献したいと考えています。
しっかりと働きながら(収入を確保しながら)介護サービスを上手に利用することのサポートをしていくことも、これから介護のニーズが増える中で必要な取り組みです。まずは、今介護の現状がどのようになっており、何がそれぞれの立ち位置で必要になっていくのか?必要な情報を発信する場をどんどん作っていきたいです。」
(取材・文=ライター SALLiA)
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