展示作品のテーマは“2030年のコミュニケーション” 常設展示「ビジョナリーキャンプ」を10/4より1年間オープン
一般の10代・20代×研究者・クリエイターが共に議論し作品を制作
日本科学未来館(にっぽんかがくみらいかん)(略称:未来館、館長:毛利 衛)は、2019年10月4日(金)より新規展示「ビジョナリーキャンプ」を公開します。本展示は、今年3月に開催したアイデアワークショップ「未来館ビジョナリーキャンプ」で優秀賞に選ばれた15~25歳の3チームが制作した作品を紹介します。「2030年のコミュニケーション」をテーマに、理想の未来像を思い描き、それを実現するための考え方やツールをプロトタイプとして展示作品に仕上げました。一般の10代・20代と研究者、クリエイターが共に議論し、展示物を制作するのは未来館初の試みです。
▽子どものころ家族になでられて元気が出たといった記憶をヒントに、身近な人との身体的なふれあいの感触をデータ化し、支えが必要なときにいつでもそのデータが再現される装置のアイデア。
▽育児にロボットや人工知能のようなテクノロジーを導入することで生じるであろう、親の果たしてきた役割が奪われることへの不安や葛藤から、テクノロジーとの付き合い方を考えさせる展示作品。
▽離れた場所にいる2人が互いの状況が見えない中、あるミッションに協力してチャレンジすることで、コミュニケーションを成立させることの難しさを体験するゲーム。
各作品ともにオリジナリティあふれる視点をかたちにしました。10代・20代の若者たちが人生で経験したり、悩んだりしてきた等身大の問題意識から制作をスタートさせています。未来を変える大きな一歩になるかもしれない彼らの「ビジョン」をご覧ください。
また本展示では、これらの作品だけでなく、「未来館ビジョナリーキャンプ」で提案された多様なビジョンを通して、理想の未来を思い描き、その実現に向けて取り組んでいくことの大切さを映像やパネルで伝えます。科学技術が急速に発展する社会において、私たちがよりよく生きていくためには、科学技術をより賢く使っていくことが必要です。そのためには自ら考え抜いた理想の未来像を描くことができ、それを相手に的確に伝え、人を巻き込みながら目標の達成のために行動できる人材「ビジョナリー」が不可欠です。未来館では、ブルームバーグ L.P.の協賛を受け、未来を担う人材を発掘し、展示作品の制作を通して、ビジョナリーとしてのスタートラインに立てるよう支援する活動を行っています。
開催概要
名称 : 「ビジョナリーキャンプ」
公開日 : 2019年10月4日(金) ※約1年間展示します
時間 : 午前10時~午後5時(入館券の購入は閉館時間の30分前まで)
場所 : 日本科学未来館 3階 常設展「ビジョナリーラボ」内
入館料 : 大人630円、18歳以下210円 ※2019年10月1日以降
休館日 : 毎週火曜日
主催 : 日本科学未来館
協賛 : ブルームバーグ・エル・ピー(Bloomberg L.P.)
WEBサイト: https://www.miraikan.jst.go.jp/sp/miraikanvisionaries/
展示制作過程のダイジェスト映像: https://youtu.be/uaYgaDnggGc
展示構成
「2030年のコミュニケーション」を切り口としつつ、理想の未来像を描き、その実現に向けて取り組んでいくことの大切さを4つのエリアで伝えます。まずは現在の社会課題をデータから分析して未来の姿を思い浮かべ、過去から現在のコミュニケーションの変遷をたどります。その上で、10代・20代のビジョナリーが制作したビジョンの展示作品を見て、最後に来館者がどのようにビジョンを描くことに関わっていきたいかを宣言します。
Step 1 2030年をさぐる
2030年、社会はどうなっているでしょう? ビジョンを描くためにはデータから現在を知ることが必要です。ここでは、SNS依存、女性の労働、LGBT、少子高齢化など、現在身の回りで起きている出来事をパネルで紹介します。データをもとに理解し、2030年の未来を想像します。
Step 2 コミュニケーションをさぐる
「人と人との間で起こるコミュニケーション」を振り返ります。まずはそもそもコミュニケーションとは何なのかを理解するため、とある男性と女性の何気ない会話の様子をモニターで見ます。その上で、科学技術の発達により生まれたさまざまなコミュニケーションツール、手紙、電話、メール、テレビ電話、SNS、YouTubeまでを振り返ります。新たなコミュニケーションメディアは、私たちに何をもたらしたのでしょうか。 各ツールの実物とパネルで紹介します。
Step2監修者:渡邊 淳司氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部 上席特別研究員)
Step 3 ビジョンをさぐる
2019年3月に開催された「未来館ビジョナリーキャンプ」で優秀賞に選ばれた3チームが、「2030年のコミュニケーション」をテーマに制作したビジョンを展示します。展示は、ビジョナリーのビジョンに科学の知見を提供する研究者、具体化のサポートをするクリエイターと議論を重ねながら制作しました。ビジョナリーは、アイデアの提案だけでなく、イラストや写真など、各自が得意とする部分の制作も担当しています。
エピローグ ビジョナリーキャンプをあとにする前に・・・
「未来館ビジョナリーキャンプ」には37名のビジョナリーが参加し、ユニークで野心的なビジョンが提案されました。その多種多様なビジョンを紹介するとともに、展示を見た来館者自身がさまざまなビジョンにどんな風に関わりたいかを意思表明する「宣言テープ」を身につけてもらいます。
「Step 3 ビジョンをさぐる」 各チームのビジョナリーと展示内容について
チーム家族
メンバー
柏木 梨佐さん(大学1年)、北村 尚さん(大学2年)、中林 彩乃さん(高校3年)
ビジョン
物理的距離を越えて家族のきずなを保つ
2030年、「家族」はますます多様化し離れて暮らす家族が増えていく一方で、個人が直面する孤独や辛さを乗り越えるために必要なのは、今と変わらず家族のあたたかなつながりだと考えました。
アイデア
家族が自分に触れたときの感触をデジタル化し、身近なものにインストール、元気がほしいときに再現したり、相手を元気づけたいときに感触を送ったりする「パーソナルメディア」を提案します。個人の記憶や希望に合わせてカスタマイズできるようになることを想定して、ここでは3人のビジョナリーそれぞれのプロトタイプを紹介します。親に背中をさすられて元気が出たときの感触を再現できる毛布と、大好きな妹の触り心地を再現できる人形、指を握る感触をリアルタイムに送ることができる指輪の3種類の装置です。展示では未来のクリニックの雰囲気をしつらえて、来館者には問診票のようなアンケートに回答してもらい、家族とは何かを改めて考えてもらいます。
メンター
南澤 孝太氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)
齋藤 達也氏(インタラクティブアートディレクター/作家)
チーム葛藤
メンバー
千代田 彩華さん(会社員)、高橋 はるかさん(大学4年)、永末 茉莉絵さん(大学2年)
ビジョン
テクノロジーを使うときに生まれる葛藤を大事にする
2030年に30歳前後になるこのチームは、仕事と子育てを両立したいという願いを持っています。ロボットや人工知能といったテクノロジーがその両立を支えるが、一方でこうしたテクノロジーに頼った育児は、親の存在意義を否定するとも考えました。そこから、テクノロジーの利用は、個人のアイデンティティや価値観に影響を及ぼす可能性があること、利用者はそれを認識し、葛藤の気持ちを否定せずむしろ大切にして、利用の可否を決める必要があると考えました。
アイデア
悩みや愚痴をすべて肯定してくれるアンドロイドや、子どもに感情的に接するのを抑えてくれる薬。人生のライフイベントでの困難を乗り込えるための架空の商品が並ぶ近未来のショップで、葛藤を体験します。未来の技術が搭載された、行き過ぎた商品を使うメリット、デメリットを理解し、心のモヤモヤを感じながら、テクノロジーを利用するかどうかを考えます。
メンター
山口 真美氏(中央大学 文学部 心理学研究室 教授)
松山 真也氏(エンジニア、デザイナー、テクニカルディレクター)
協力
都地 裕樹氏(中央大学 研究開発機構 機構助教)
楊 嘉楽氏(中央大学 研究開発機構 機構助教)
金沢 創氏(日本女子大学 人間社会学部 心理学科 教授)
チームパー
メンバー
池本 次朗さん(高校2年)、滝口 小日葵さん(高校2年)、杉山 萌音さん(高校2年)
ビジョン
コミュニケーションの「不完全さ」を受け入れる
世の中には多様なコミュニケーションツールがあるけれど、未来でも、言いたいことすべてが正しく伝わるツールをつくるのは難しく、コミュニケーションの完成形は存在しない。そのことを理解し、受け容れることが必要だと考えました。
アイデア
「伝える側」と「受け取る側」の理解のずれを可視化する体験ブースです。2人一組でそれぞれ異なるブースに入ります。離れた場所の2人が相手の置かれた状況が分からない中で、制限時間内に通話による協力のみで、あるミッションを達成します。この体験を通じて、思っていることを伝えることの難しさを体感します。
メンター
渡邊 克巳氏(早稲田大学理工学術院 教授)
パーフェクトロン(クワクボリョウタ氏と山口 レイコ氏によるアートユニット)
未来館ビジョナリーキャンプとは
2019年3月23、24、30日に開催したアイデアワークショップ。動画制作による選考を通過した15歳~26歳の37名が「2030年のコミュニケーション」をテーマに、理想の未来像を描き、その実現に向けて何が必要かを同世代の仲間、研究者・クリエイターと熱い議論を交わしました。全12チーム中から優秀賞に選ばれた3チームは4月から9月にメンターの研究者・クリエイターとともに作品を制作し、10月より1年間未来館で展示します。未来館ビジョナリーキャンプのワークショップの設計にあたっては、京都大学総合博物館准教授の塩瀬 隆之先生にアドバイスを受け、開発を行いました。
ワークショップの様子はこちら: https://www.youtube.com/watch?v=KbmAAYWcGck&t=3s
ビジョナリーラボ
本展示は、3階常設展「未来をつくる」内に新設される「ビジョナリーラボ」の第1回作品です。このラボでは、理想の未来を志向する多様な分野の研究者を「ビジョナリー」として紹介します。第1回は記念展示として、一般の10代・20代のアイデアを紹介しましたが、今後は新しい未来を来館者とともに創っていく研究者を紹介する予定です。
Supported by Bloomberg
本プログラムは、ブルームバーグ L.P.の協賛により、STEAM教育、発展、ビジョナリー育成のために提供されています。グローバルビジネス、金融情報、ニュースにおけるリーダーであるブルームバーグは、情報、人、アイデアのダイナミックなネットワークを通じて、影響力のある意思決定者の皆様に決定的な優位性を提供します。ブルームバーグの根幹ビジネスであるブルームバーグターミナルは、革新的テクノロジーを基盤に、データ、ニュース、分析機能を迅速かつ正確に配信します。ブルームバーグのエンタープライズソリューションズは、テクノロジーを活用し、お客さまが効率的、効果的に、データ、情報にアクセスし取り入れ、配信、管理するというブルームバーグの強みに基づいています。
詳細に関しては次のリンク先 http://about.bloomberg.co.jp/ をご覧ください。
一般からのお問い合わせ先
日本科学未来館
〒135-0064 東京都江東区青海2-3-6
TEL: 03-3570-9151
FAX: 03-3570-9150
URL: https://www.miraikan.jst.go.jp/