貴重な個人コレクションから百~数十年前の遊牧民染織品約90点を 初公開!「丸山コレクション 西アジア遊牧民の染織 塩袋と伝統の ギャッベ展」をたばこと塩の博物館で2月26日~5月15日に開催!
たばこと塩の博物館では、2022年2月26日(土)から5月15日(日)まで、「丸山コレクション 西アジア遊牧民の染織 塩袋と伝統のギャッベ展」を開催します。
イランを中心とした西アジア地域に展開するカシュガイ族やクルド族、バルーチ族といった遊牧民たちは、伝統的に、各部族を象徴する紋様を羊毛で織り込んだ塩袋を制作・伝承してきました。塩袋は、遊牧生活に不可欠な“塩の役割”を物語る好資料でもあり、当館でも過去2回の特別展で紹介してきました。
3回目となる今回も、「丸山コレクション」から塩袋をはじめいくつかの用途の作品を選び展示します。丸山コレクションは、現地でも入手不可能な百~数十年前の絨毯を中心とした遊牧民染織品の一大コレクションです(個人の資料であり通常は非公開)。
今回の展覧会で重点を置いた「ギャッベ」は、太い糸で粗く織られ、素朴で大ぶりな意匠を描き出した“絨毯の原型”ともいえる染織品です。かつての遊牧生活の中で織られた古いギャッベは、自分たちが使うために、織り手が自由な発想で作った生活用具としての味わいがあります。
本展では、塩袋やギャッベに加え、精緻な織りや深い色合いが魅力的な絨毯、草木染めが美しいキリムなど、すべて初公開の約90点を通して、西アジア遊牧民の文化を紹介します。
展示作品については 別紙参照
開催概要
名称 : 「丸山コレクション 西アジア遊牧民の染織
塩袋と伝統のギャッベ展」
ヨミ : マルヤマコレクション
ニシアジアユウボクミンノセンショク
シオブクロトデントウノギャッベテン
会期 : 2022年2月26日(土)~5月15日(日)
会場 : たばこと塩の博物館 2階特別展示室
主催 : たばこと塩の博物館
所在地 : 東京都墨田区横川1-16-3
(とうきょうスカイツリー駅から徒歩8分)
電話 : 03-3622-8801/FAX:03-3622-8807/
URL : https://www.tabashio.jp
入館料 : 大人・大学生:100円/満65歳以上の方(要証明書):50円/
小・中・高校生:50円
開館時間 : 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 : 月曜日(但し3/21は開館)、3/22(火)
※新型コロナウイルス感染症対応により、開館時間や休館日を変更する場合があります。最新の開館情報は、公式ツイッター(@tabashio_museum)かお電話でご確認ください。
展示作品の紹介
塩袋(ナマクダン)
塩を入れるための専用の袋で、イランでは「ナマクダン」と呼ばれます。家畜の頭が入らないように開口部を狭くした凸型をしているのが特徴です。塩を欲しがる家畜の習性を利用して群れをコントロールするなど、遊牧生活に不可欠な“塩の役割”を物語る好資料でもあることから、当館でも注目しています。持ち主がすぐわかるよう、部族を象徴する柄など、特徴的な文様が織り込まれ、房飾りがついたものもあり、染織品として見ても楽しめます。
Photo.01 塩袋(ナマクダン) 南イラン カシュガイ・ルリ族 1930年頃 羊毛 60×50cm
並列した緻密な連続文で構成されている。
Photo.02 塩袋(ナマクダン) 南イラン カシュガイ族アラブ 1930年頃 羊毛 65×58cm
中央に樹を立て枝葉の先に花が描かれた意匠。
Photo.03 塩袋(ナマクダン) 東イラン バルーチ族 1960年頃 羊毛 110×70cm
中央にバルーチ族の伝承紋(S字変形連結文)が織り込まれている。
Photo.04 塩袋(ナマクダン) 北東イラン(ホラサン) バルーチ族 1970年頃 羊毛 55×44cm
バルーチ族の塩袋は房付きのものが多いが、この作品は房なしである。
ギャッベ
遊牧民の日常生活の中で最も身近にある染織品で、敷いたり、掛けたり、多目的に使われてきました。絨毯より織りが粗いため、柔らかく、優しい触りごこちのものが多いです。 他人にあげたり、販売するのではなく、自分や家族だけが使用する前提で作られたため、工芸品というよりは愛玩品のような存在ともいえます。簡明で可愛らしいモチーフが織られることも多く、織り手が自由な発想で作った生活用具としての味わいがあります。
Photo.05 ギャッベ 南イラン カシュガイ族クヒ 1950年頃 羊毛 168×113cm
「男の力」「富」「守り」を表す意匠が織り込まれている。
Photo.06 ギャッベ 南イラン カシュガイ族クヒ 1970年頃 羊毛 193×131cm
手に花束や植物(果物)を持って踊る17人の遊牧民女性が描かれている。
Photo.07 ギャッベ 南イラン カシュガイ族シェシボリューキ 1960年頃 羊毛 156×109cm
外周には「お守り」モチーフと「男と女」「愛」モチーフが描かれ、中央の紅色のフィールドには「水に恵まれる」「幸せを運んでくる」という意味を持つ孔雀や鳥がたくさん描かれている。
Photo.08 ギャッベ 南イラン カシュガイ族カシュクリ 1960年頃 羊毛 195×105cm
四つのメダリオンの中に、「水の神」という意味をもつ孔雀が描かれている。
Photo.09 ギャッベ 西イラン ルリ・バクティアリ族 1950年頃 羊毛・木綿 157×92cm
織りがずれてしまっているが、中央には生命の樹を立て、その周辺に人物、動物、花をたくさん描いている。
Photo.10 ギャッベ 南イラン カシュガイ族ダレシュリ 1970年頃 羊毛 228×138cm
フィールド部分のメダリオンの連続文の中に樹と花が描かれている。その隙間に描かれた細かい菱形を組んだ文様は、乾燥に耐えて根を張る植物のゴボウで、「豊かさ」「富」を意味している。
遊牧民絨毯
遊牧民の絨毯には、織り手の部族を示す文様や動物、心象モチーフなどが織り込まれています。移動する生活の中で女性が長い時間をかけて織った絨毯は生活用具の一つですが、月日に耐えて長く使用できるため、財産として扱われる一面もあります。強靱な羊毛に天然の素材で染色された深い色合いが相まって独特の存在感があります。
Photo.11 絨毯 南イラン カシュガイ族 1920年頃 羊毛・黒山羊毛 210×148cm
カシュガイ族を象徴する三つのメダリオンが核となった古い絨毯。縦糸には黒山羊の毛が使われ、長い年月の使用に耐えられる強靭さを備えている。
Photo.12 絨毯 西イラン バクティアリ族 1880年頃 羊毛 214×165cm
制作年代が古く、使い分けている色の数も少ないが、簡明で豪放な意匠になっている。
キリム
絨毯と比べて薄く、軽量で扱いも容易なことから、敷く、掛ける、覆うなど、多用途に使われる遊牧生活に必須の日用品。伝承紋のほか、シンプルな幾何学柄のものもあります。
Photo.13 キリム 南イラン カシュガイ族 1980年頃 羊毛 198×152cm
本来はギャッベに使われる手紡ぎの太めの糸に強い撚りをかけ、現代ギャッベ風の意匠で仕上げられており、“ギャッベキリム”とも呼ばれる。
食卓布(ソフレ)
遊牧民が飲食する際に敷いてテーブルがわりに使用する染織品です。キリムに似た織物で、正方形か縦長、大きさは畳半畳ほどのサイズ。羊毛のほかに木綿製のものもあり、パン生地をこねて寝かすのにも使います。
Photo.14 食卓布(ソフレ) 西イラン バクティアリ族 1930年頃 木綿 120×118cm
イラン産の太く強い綿糸で作られている。この作品に限らず、ソフレの意匠はシンプルなものが多い。
鞍袋(ホリジン)
20世紀前半より前、遊牧が盛んだった頃、ロバや馬、ラクダなどの背に左右に振り分け、それぞれに物を入れて移動に使いました。部族を象徴する伝承紋が緻密に織り込まれています。
Photo.15 鞍袋(ホリジン) 西イラン ルリ・バクティアリ族 1950年頃 羊毛 100×53cm
四角い囲みの内側・上下に白いラインで描かれているモチーフは動物の頭とされている。高度で緻密な織り技法で仕上げられている。
テント袋(トルバ)
日用品を収納して、テント内に吊り下げておく袋。
Photo.16 テント袋(トルバ) 南イラン カシュガイ族クヒ 1950年頃 羊毛 32×32cm
袋の表面に人物が織り込まれている。