地方自治体SNS情報分析に関する技術研究・検証を開始しました。
国立大学法人北海道国立大学機構 北見工業大学(学長:榮坂 俊雄、所在地:北海道北見市、以下:北見工大)、株式会社日立ソリューションズ東日本(取締役社長:石井 武夫、本社:宮城県仙台市、以下:日立ソリューションズ東日本)は、地域住民の意見の把握による行政サービス向上を目的とし、SNSにて蓄積されている情報に対する新しい分析技術の研究・検証を開始しました。
研究の背景とねらい
地方自治体等の行政機関では、施策や行政サービスをよりよくするために座談会やアンケートなどで地域住民の声を集めていますが、この方法では、特に若年層の意見を集めにくいという課題がありました。
そのため、若年層を中心として幅広い世代に利用されているSNSの情報を組み合わせることで、上記の方法では収集しづらかった意見の活用が期待できます。
SNSは、不特定多数のユーザから投稿された様々な情報や意見が蓄積されているため、行政サービスに関しても有効な投稿が存在している可能性があります。
しかし、SNSの情報は、地方自治体等の行政機関で活用するためにはノイズとなるものも多く、ノイズの分類方法と、ノイズ除去後のデータ分析方法の確立が必要です。
そのため、SNSの情報抽出・分析に関して、テキスト情報処理に関する研究を行っている北見工大・情報通信系の桝井 文人教授のグループと、共同研究を開始しました。
研究の概要
SNSは多数のユーザから投稿された様々な情報や意見が蓄積された大規模情報源で、幅広い年代からの情報収集に適しております。しかし、SNS上に投稿される地域サービス関連の意見は非常に疎であることから、機械学習や統計処理といった量的分析法をこれに直接適用しても効果が得にくいことが推測されます。
そのため、少量のデータでも高い分析精度が得られる質的分析法を用いることが有効と考えました。
しかし、質的分析法は人間の判断による部分が多いため、人的コスト、時間的コスト、及び経済的コストが非常に高いといった課題がありました。
そこで、本研究では、代表的な質的分析法の一つであるGTA(グラウンデッド・セオリー・アプローチ、Grounded Theory Approach)のオープン・コーディング部分を自動化することで、分析処理を効率化するデータ分析方法を研究しています。
現在、この方法について各自治体の実際のデータを用いて検証しております。
共同研究内容の検証
2023年度は、北見市、美幌町の2つの自治体にご協力をいただき、本研究の分析手法にてSNS情報を解析した住民の意見を各自治体職員へ提示し、以下のフィードバックをいただきました。
・トピック毎に投稿の要約が分類・集計されているため、大変見やすい
・地元に住んでいてもなかなか行かない場所の投稿が多いことに気づいた
・市内の企業に地場産品に関する投稿内容をフィードバックしたい
・同規模の自治体との比較が欲しい …等
SNSから特定の分野に関する情報を抽出、分類する作業の自動化により、今までの方法では収集しづらかった幅広い意見の把握ができるようになる見通しを得ました。
今後の展望
本研究を通じて、地方自治体向けSNS情報分析の自動化手法を確立し、その手法を搭載したシステムは2025年度のサービス開始を目指します。
これまでの手法では集めづらかった地域を特定した行政に関する意見や課題の効率的な収集、分析をし、最終的には実効的な施策の検討や行政サービスの向上に寄与します。
今後も、お客さまのニーズに合わせたソリューションを展開し、サステナブルな社会の実現に向けて、お客さまの課題解決、さらにその先の地域・社会、そして国際社会へ貢献してまいります。
参考文献
*1 戈木クレイグヒル滋子, グラウンデッド・セオリー・アプローチ概論, KEIO SFC JOURNAL Vol.14 No.1, pp.30-43 (2014)
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