テロメラーゼ活性によるテロメア伸長と 腫瘍増殖リスク低減の効果を併せもつ FPP(パパイヤ発酵食品)の国際特許が出願されました!
大里研究所(所在地:岐阜県揖斐郡、理事長:林 幸泰)は、同研究所が開発したFPP(パパイヤ発酵食品)の研究において、イタリア国立衛生研究所のファイス教授(Prof. Stefano Fais)らのグループにより、分子レベルでのアンチエイジング治療および腫瘍治療への将来的な導入の可能性を示唆するテロメラーゼ活性によるテロメア伸長と腫瘍増殖リスク低減の効果が発見され、2020年9月16日付けで、国際特許出願(出願番号:PCT/JP2020/035121)されたことを報告いたします。
FPPのテロメラーゼ活性によるテロメア伸長に関する研究結果
http://www.ori-japan.com/research/bodyregion/body/fpp-7.html
FPPの腫瘍増殖リスク低減に関する研究結果
http://www.ori-japan.com/research/bodyregion/body/fppin-vivo-1.html
はじめに
FPPは、遺伝子組み換えでないカリカパパイヤを原料に日本の伝統的な発酵技術を用いて作られた顆粒状の発酵食品(ブランド名:Immun'Age)です。免疫機能に必要な良い活性酸素種(Good Ros)の産生を促進する作用を持つ一方で、悪い活性酸素種(Bad Ros)を消去する優れた抗酸化作用を持ち、多くの研究によるエビデンスから、糖尿病やがんなど様々な疾患に対する併用療法に期待が持たれています(1)。また、免疫が低下している2型糖尿病患者のエネルギー代謝および免疫機能を改善する機能性を示した研究(2)(3)(4)が認められ、2018年9月、FPPは、特許第6401792号『ATP産生促進剤及びミトコンドリア活性促進剤並びに免疫賦活剤』として日本国特許庁により特許登録され、感染症から身を守るための免疫機能を高める食品としても注目を集めています。
本出願に係るFPPを用いたテロメア伸長効果は、論文「Beneficial Effects of Fermented Papaya Preparation (FPP(R)) Supplementation on Redox Balance and Aging in a Mouse Model」(5)としてファイス教授らによってAntioxidants誌で発表されており、同教授によるメラノーマの増殖抑制効果を検証した研究(6)の結果を踏まえ、2020年4月1日、論文「Anti-aging and anti-tumor effect of FPP Supplementation(FPP摂取の抗老化および抗腫瘍効果)」(7)としてまとめられています。
FPPによるテロメア伸長効果
わたしたちの身体は数十兆個の細胞で出来ており、絶えず古い細胞が死に、新しい細胞が生まれています。若いうちは細胞の入れ替わりが活発ですが、加齢とともに代謝が低下し、新しい細胞が作られなくなります。老化には様々な原因がありますが、細胞レベルでは身体が持つ抗酸化作用と過剰に発生した活性酸素種とのバランスが崩れることによる酸化ストレスの蓄積があります。また、分子レベルでは、「テロメア」という細胞内の染色体の末端部分が、細胞分裂を繰り返すたびに短くなり、ある一定の短さに達すると細胞分裂が不可能になり新たな細胞が作れない「細胞老化」という状態になってしまうからだと考えられています。テロメアは「命の回数券」とも呼ばれています。
ファイス教授らは、2020年2月にAntioxidants誌に発表した研究(5)において、FPPのレドックスバランス調整効果とアンチエイジング効果を検証する目的で、加齢研究に適したマウスモデル(C57BL/6J)を用い、毎日飲み水にFPPを混ぜて与えるグループと水道水を与えるグループ(コントロール)に分け、10ヶ月後に、両方のグループにおいて、テロメアの伸長を担う酵素であるテロメラーゼの活性、血漿中の抗酸化物質(グルタチオン、SOD-1)と活性酸素種(ROS)のレベル、骨髄および卵巣から採取したテロメアの長さを測定し、比較・検討を行いました。
その結果、生後6週齢から毎日飲み水にFPPを混ぜて与えたマウスの骨髄と卵巣におけるテロメアの長さは、水道水を与えたマウスのテロメアに比べ、骨髄では+300% (図3-A)、卵巣では+174% (図3-B)でした。
また、FPPを摂取することで、抗酸化物質であるグルタチオンおよびSOD-1がそれぞれ増加(+640%、+30%)、活性酸素種(総ROS)が減少(-30%)し、それとともにテロメラーゼ活性(+58%)が増加、骨髄および卵巣のテロメアも伸びました。これらの結果により、FPPの明確なアンチエイジング効果が示されました。
また、本研究では、生後6週齢から51週齢までFPP摂取(早期:ヒト年齢換算13才~41才)のマウスと生後51週齢から96週齢(後期:ヒト年齢41才~63才)のマウスの比較も行なっています。その結果、後期にFPPを摂取しても効果はあるが、早期のほうがより高い効果が認められました。老化のプロセスを制御するためには、FPPなどの優れた抗酸化作用を持つ食品を人生の早いうちから日常的に摂取することの重要性が示唆されました。
アンチエイジング研究において注目されるテロメラーゼですが、この酵素を活性化することでアンチエイジング効果が期待される一方、がん細胞でもこの酵素が働いていることが知られ、テロメラーゼによるアンチエイジングは腫瘍の増殖に繋がる可能性があるのではないかと安全性を懸念する科学者もいますが、本論文では、FPPの腫瘍抑制効果についても言及しています。
FPPのメラノーマ増殖抑制効果
ファイス教授らは、2019年1月にCancers誌で発表した研究(6)において、FPPを経口摂取したC57BLマウスにメラノーマ細胞(B16F10細胞)を皮下接種し、FPPのメラノーマ(悪性黒色腫)の増殖抑制効果を確かめました。
上記のグラフは、メラノーマ細胞を接種したのち水のみを与えたコントロールマウス群と接種3日前から1日に200mg/KgのFPPを飲み水に混ぜて与えたFPP摂取マウスとを接種から23日後に比較しており、図4-(A)は腫瘍サイズを、図4-(B)は 総ROS(活性酸素種)を、図4-(C)と(D)は抗酸化物質であるグルタチオンとSOD-1の活性を表しています。結果は、FPPの顕著に有意な腫瘍増殖の抑制と抗酸化物質に対する活性効果によるROS抑制効果を示しました。
FPPを用いたファイス教授の2つの最新研究は、FPPがテロメアの伸長を担うテロメラーゼの活性作用と腫瘍増殖抑制効果を併せ持つことを示唆しています。テロメアが伸長することで細胞の寿命が伸び、より長生きできるようになり、また長生きすることで高くなるがんなどの疾病リスクが低減されれば、より健やかでよりアクティブなHealthy Agingが可能になります。大里研究所では、これまでにも、脳の酸化ストレスの制御とエネルギー代謝の改善などのアプローチからアルツハイマー病をはじめとする認知症予防へ向けたFPPの研究(8)にも力を注いできました。
今後も、テロメア伸長・腫瘍増殖抑制・認知症予防という3つの研究テーマを柱とし、副作用のない安全な発酵食品であるFPPをツールとして超高齢社会における医療費削減の実現を目指してまいります。
引用文献
(1) Diabetes as a risk factor to cancer: functional role of fermented papaya preparation as phytonutraceutical adjunct in the treatment of diabetes and cancer: Mutat Res. 2014 Oct;768: 60-8)
(2) Is there a potential application of a fermented nutraceutical in acute respiratory illnesses? An in-vivo placebo-controlled, cross-over clinical study in different age groups of healthy subjects: J Biol Regul Homeost Agents. 2012 Apr-Jun;26(2):285-946)
(3) Does oral supplementation of a fermented papaya preparation correct respiratory burst function of innate immune cells in Type 2 diabetes mellitus patients?: Antioxid Redox Signal. 2015; 22: 339-345.
(4) May Dietary Supplementation Augment Respiratory Burst in Wound-Site Inflammatory Cells?: Antioxid Redox Signal. 2018 Feb 10;28(5):401-405
(5) Beneficial Effects of Fermented Papaya Preparation (FPP(R)) Supplementation on Redox Balance and Aging in a Mouse Model:Antioxidants 2020, 9(2), 144
(6) Oral Administration of Fermented Papaya (FPP(R)) Controls the Growth of a Murine Melanoma through the In Vivo Induction of a Natural Antioxidant Response.: Cancers (Basel). 2019 Jan 20;11(1).
(7) Anti-aging and anti-tumor effect of FPP(R) supplementation: European journal of translational myology, 30(1), 8905.
(8) Oxidative Stress in Patients with Alzheimer’s Disease: Effect of Extracts of Fermented Papaya Powder: Mediators of Inflammation Volume 2015; 07 Apr 2015