人的資本への積極投資を。テレワークは一定程度定着の兆し 新型コロナウイルス感染症が働く人の意識に及ぼす影響を継続調査 ~第3回「働く人の意識調査」
調査研究や提言、実践活動により生産性向上をめざす公益財団法人 日本生産性本部(東京都千代田区、会長:茂木 友三郎)は10月16日、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査(第3回「働く人の意識調査」)結果を取りまとめ、公表しました。
コロナ禍の長期化を視野に、日々の暮らしや働き方、組織の業務内容や運営形態などが見直され、その影響は社会・経済の仕組みや人々の意識・価値観の変遷にまで及ぼうとしています。このような状況の下、経営者・労働者・学識経験者の三者構成による日本生産性本部は、組織で働く雇用者を対象に、所属組織に対する信頼度や雇用・働き方に対する考え方などについて、継続的にアンケートによる意識調査を実施しています。
今回の調査は、5月22日公表の第1回(調査期間:5月11日~13日)、7月21日公表の第2回(同:7月6日~7日)に続く3回目で、「Go To トラベル」事業の実施など積極的な経済活動再開と新型コロナウイルス感染再拡大防止の両立を模索する約3カ月を経た10月5日(月)~7日(水)、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている人(雇用者=就業者から自営業者、家族従業者等を除いたもの)1,100名を対象にインターネットを通じて行ったものです。
今回は、コロナ禍以降のOff-JT/OJTの状況と人材育成におけるオンラインツールの有効性、雇用者の人事評価への意識、SDGs(持続可能な開発目標)の認知度と関心の様相に関する設問を新たに追加しました。主な特徴は以下の通りです。
第3回「働く人の意識調査」主な特徴
(詳細や図表は別添「調査結果レポート」参照)
- 勤め先への信頼感:業績・雇用・収入への不安感を覚える雇用者の割合は増加(図5~図10)
・業績・雇用・収入への不安感について、いずれも「不安を感じる」(「かなり不安を感じる」「どちらかというと不安を感じる」の合計)が7月調査に比べて増加(図6~8)
・今後の自身の雇用に「全く不安は感じない」雇用者は勤め先を「信頼している」の割合が最も多く、「かなり不安を感じる」雇用者は「信頼していない」の割合が最も多い(図10)
- 人事評価の比重:「成果や業績」「仕事遂行能力」「仕事振りや態度」バランスを望む(図13~15)
・人事評価の要素を(1)成果や業績、(2)仕事を行う能力、(3)仕事振りや態度、の3つに集約し、評価される上で望ましい比重を聞いたところ、いずれかの要素が突出することはなく、バランスの取れた評価が望まれている(図13)
・性別(図14)、職種別(図15)で若干比重は異なるが、特定の要素が過半を超えることはない
・テレワーカーは「成果や業績」の比重が高いものの、他の2要素についてもある程度の評価が望まれている(図34)
・近年、「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ移行すべきとの議論があるが、ジョブ型への転換には雇用者の相当な意識改革が必要とみられる
- Off-JT、OJTの実施状況:コロナ前後でも機会の増減はあまり見られず(図16~21)
・Off-JTについて、ほとんどの雇用者(「案内はあったが受講しなかった」6.1%「勤め先から特に案内が無かった」88.8%)が受けていない(図16)
・OJTについて、行う機会は「ほぼ変わらない」が41.5%、「以前から行っていない」が42.5%と、OJT中心と言われてきた日本企業のイメージとは異なる(図18、19)
・職種別の「OJTを行っている/受けている」割合は、「輸送・機械運転の仕事」「建設・採掘の仕事」「運搬・清掃・包装等の仕事」など、総じてブルーカラー系の職種で低い(図20)
・年代別には、若い年代ほど「受けている」割合が低く(図21)、OJTを通じた技能・ノウハウの世代間移転が必ずしも機能していないことが懸念される
- 自己啓発:20代・30代が積極姿勢、オンラインツールに一定の効果(図22~26)
・4割強(「行っている」15.6%「始めたいと思っている」28.9%)の雇用者が自己啓発に前向きだが、実際に行っている者はあまり多くない(図22)
・年代別で自己啓発を「行っている」割合が高いのは、20代・30代・70代だが、70代は「特に取り組む意向は無い」も73.6%で最も多い。20代・30代は「行っていないが、始めたいと思う」が他の年代より多く、自己啓発に積極的な姿勢を示している(図23)
・Off-JTや自己啓発におけるオンラインツールの効果については、6割以上(「効果は高い」16.8%「どちらかと言えば効果は高い」46.3%)が評価(図26)
- 働き方の変化:テレワークは一定程度定着の兆し。課題は一部解決の方向(図27~36)
・5月調査から7月調査の間で見られたオフィス回帰は一段落し、テレワーカーの割合は2割前後で変化していない(図28)
・在宅勤務の効率・満足度についても、7月調査と変わらず安定している(図30、31)
・5月調査で48.8%と最多のテレワーカーが指摘した「職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化」との課題は30.8%へと減少(図32)
・労務管理上の課題は、7月調査と同様、仕事への評価に関する項目が上位に挙がっている(図33)
- その他(SDGsの認知度と関心の様相):「知らない」が過半。大企業が先行(図37~41)
・SDGsの認知度は「知らない」が55.7%、過半数がSDGsを認知していない(図37)
・性・年代別にみると、30代・男性の認知が最多、「知っているし、内容も理解している」(25.2%)「知っているが内容はよくわからない」(35.3%)を合わせると6割を超える(図38)
・従業員規模が大きい勤め先の雇用者は概ね認知度が高く、大企業での取り組みが先行している現状を示している(図40)
【別添資料】(資料1)調査結果レポート、(資料2)調査票、(資料3)単純集計表
*調査結果レポート本文は、日本生産性本部の調査研究・提言活動サイト
< https://www.jpc-net.jp/research/detail/004695.html >をご参照ください。